負けたら終わりじゃなくて

やめたら終わりなんだよね

どんな夢でも叶える魔法

それは続けること


このような歌詞があるSEAMOの「Continue」という名曲がある。

威風堂々から始まるこの曲は、私の背丈をいくらか大きくしてくれる。


12歳の冬。初めてこの曲と出会った。

私が所属していた少年野球では、卒業する時に今まで保護者が撮ってくれた写真を曲に合わせて流す。

1人1曲リクエストし、私の代は10人いて、10曲流れた。10曲目にこの曲が流れた。

少年野球は卒業するが、今後の野球人生を応援するメッセージを込めてこの曲を10曲目にしたのだろう。


難しい言葉は一切ない、濁りなき応援歌。

一瞬でこの曲の虜になり、歌詞もすぐに覚えた。

下手くそな歌を、やはり背丈を伸ばしてかっこつけて歌う。


中学野球最後の大会も、高校受験も、高校1年生の夏の大会も、高校2年の夏の大会も、高校3年生の最後の大会も、就活で向かう列車の中も、負けそうになる夜も。この曲は弱い私を励ましてくれた。


21歳の春、就活と戦っていた日々、

クッパのような面接官相手に、木の根棒で戦っていた。

ニコニコ笑う相手の喉の奥に、炎が見えた。

目線を外した瞬間に、焼かれると思って、

細い目から眼光を送った。

今まで愛され、肯定され生きてきた私には、

社会の残酷さと初対面で辛かった。

「私は普通に生きたいです」

心で何度も唱え、

「普通に生きるには努力してください」

何度もそう言われていた。

そんな帰り道も、私を励ましてくれた。



出来ないからやらないんじゃない

出来ないからこそやるんじゃないの?

格好悪くても やってみようよ 

君が思うより 君は強いんだよ


高校野球を始め、1ヶ月で11kg体重が落ちた。

痩けた頬は、心まで蝕んできた。

私の高校は、公立校では中堅校。

3回戦突破できるかが関の山のチームだった。

そんなチームで1年生ながら背番号3を貰った。

前日にスタメン発表をされ、1回戦はベンチスタートだった。しかし途中から出場する事を告げられていたため、緊張していた。

試合前のロッカーは、息を吸うのに必死だった。

3年生の先輩は険しい顔をしていた。

私がミスして負けたら、先輩に向ける顔はない。

高校を退学して逃げようかとも考えたが、

そんな勇気はなかった。

耳元で流れる声に励まされる。

弱虫な心に入り、何故か強気にさせてくれる。

自信が無い私に、戦う勇気をくれる。

勇気をくれたら、前に進める。

熱く燃える私の隣に同級生がいた。

プロスピをやっていた。能天気で羨ましかった。


1年生の冬にコロナが流行り、それ以降の夏の大会では、吹奏楽部の応援歌は流れなかった。

1年生から試合に出れた私は、幸せ者である。

あの夏の大歓声を浴び、打席に立てた。

選手交代で代打で出てきた私の耳元に、クラスの女子の声が届く。

口元ではこう呟いていた


勝つか負けるじゃなくて

やるかやないかなんだよね


結果は惜しくもセンターフライだったが今でも忘れられない思い出になっている。

Continueに背中を押されない強さを持っていたら、

センターの頭を越せたかもしれない。

2回戦でシード校に負けて、涙を流した。

先輩たちの借りは返すと心に誓い、

努力を続けることを誓った。