帰宅している最中に、東京百景を読んでいた。

月夜の富岡八幡宮の景色は分からないが、

きっと美しかった事だろう。

私も綺麗な景色を見たいと、ふと思い

窓の外に広がる世界に目を通したら、遠くに立派に咲いている桜が目に入った。

この桜を植えた人に会いたくなった。

この桜を見ながらお茶する人、森山直太朗のさくらを口ずさんだ人、写真を撮った人。

きっと私と同じ気持ちでいてくれてると思った。


どんな桜も素晴らしい。

まるで人と同じじゃないかと、私の心の中は暖まり、思わずニヤついてしまった。

前を見ると、50代ぐらいのお母様がこちらを見ていた、恥ずかしかった。

目が会った瞬間視線を少し下に向けると、マスクに桜のプリントがされていた。

「あなたの桜も綺麗ですね。」

と言える勇気は無かった。