泊が野見山にミッションを告げる。
『野見山、お前のやることは、一つ。トオルを完璧に潰せ。警察はアイツを取り逃がす形となった。
まだ、間に合う。息の根を止めてこい。どうだ?お前もトオルを消したかったわけだろ?』
『なるほどな。』
野見山はそう答えた。
『もし失敗すれば、お前はトオルに対する殺人未遂あたりで逮捕されるだろう。』
『ほぉ。』
拳銃が野見山の手に渡された。
『警察に話しは通してある。』
『そうか。』
野見山は素直に受け取った。口数が少なくなっていた。
泊がその野見山に再度問いただす。
『よぉ、Candyって何で作ったんだよ?』
『さっきも言っただろ。悪いがSCREAMをぶっ潰すためだ。』
『本気でそう思う奴がこの世にいるとは思えんがな。そういやよ、野見山、淳はトオルの弟子のような奴だ。』
『そうだな。』
『俺が何を言いたいか分かるか?』
『分かるわけがない。』
『淳は幹部の中で、いち早くSCREAMを抜け出した。はっきり言ってキナ臭い脱退だった。』
『俺の知ったことじゃねぇ。』
『そう言っていられるのも今のうちだ。言っておくが、捕まってもお前の護送など誰も見送らんぞ。
それっきり、これっきりお前の存在など皆が忘れる。いいか、お前だけ止まった時間を過ごすことになる。』
『坊主頭の韓流スターじゃあるまいし、見送りなどこっちこそ願い下げだ。それに泊、俺はな、俺は今更
そんなことにビビらない。』
『はっきり言ってやろう、残念ながらお前は淳に良いように使われた。お前とトオルを衝突させたのはアイツだよ。
そして、決してSCREAMを潰す目的ではなく、トオルを警察の手に渡さない為にだ。淳とトオルはグルだと言っても過言ではないんだぜ。現にSCREAMを潰した後のビジョンなど、Candyのメンバーの誰も持っていないだろが。お前が捕まればチャラだと思ってるゲス野郎なんだぜ。』
『まぁいい。俺が自分で確かめればいいことだ。』
『好きにしろ。単なる忠告だ。トオルは病院に搬送中だ。息の根を止めて来い。
どうせ回復したアイツを取り調べたところで立件はできやしないんだ。一気に行けよ。』
『忘れるなよ、トオルの次はお前だぜ泊。』
野見山は拳銃をしまった。泊が数歩後退し、綺麗に体を反転させると、路地を曲がって姿を消して行った。
弾がぎっしりと詰まった拳銃を腹に抱えた野見山は、恐る恐るゆっくりと歩道へと戻ると、
警官は綺麗さっぱり消えて無くなっていた。
自分の足取りの重さが、泊の言葉の重みと重なるような感覚に襲われた。
『望むところだ。』
野見山は独り言を吐き捨て、ニヤリと笑みを浮かべた。
銃弾をぶち込む相手も、行き先のまだ定まってはいない。
煙を吐き出しながら歩くことからスタートした。
駅前の派出所では、いつもの警官佐々木が直立不動の姿勢で立っている。
野見山は駅の自動券売機の前で小銭を指で弾きながら、行き先を決めていた。
淳とは連絡がつかない以上、トオルの元へ向かうしかなかった。
コインを投入しながら目的の金額のランプが点灯するのを待った。
『おい、待てよっ。』
野見山は襟元を捕まれながら、肩をたたかれた。
言うまでも無く佐々木だった。
『なんだよ?佐々木か。キムタクみてぇな声出しやがって。』
いつも通りのふてぶてしい態度で佐々木に接した。
野見山は黙ったままの佐々木に目を覗き込まれている。
佐々木の真剣な顔つきと、半笑いの目が無気味だった。
『野見山、のん気に電車か?』
とっくに全てのコインは投入口を通過し、幾つもの金額がパネル上点灯いていた。
野見山のくわえタバコが微かに揺れていた。
『バックレ野郎・・・』
佐々木が野見山の耳元で呟いた。
野見山が佐々木を睨み付けると、佐々木は取り消しボタンを押した。
小銭がジャラジャラとステンレス製の受け皿に戻ってきた。
『よぉ犯罪者、お前が逃げる気なら容赦しないからな。』
佐々木は小銭を掴むと、地面にブチ撒けた。
『野見山、こんなに皆に裏切られてよく人間不信にならないな。』
散らばった小銭を見ながら佐々木がそう言った。