私は立ち止まったまま聞いた。
『で、あの子なの?』
『あぁ、まぁ。』
『かわいいじゃん。密かに付き合ってたりするの?』
『そんな風に見えた?』
『いや・・・全然。』
『やっぱ一緒にサーフィンできる人が好きなの?』
淳が私の顔を見た。
不思議そうな目で私を見る。
(何言ってんだよ、実は好きなのはオマエのことなんだよ?)
この淳の眼差しを、そう受け取りたかった。
そのまま店を出てしまった。
『あぁ、あっちじゃねぇ。』
淳は少し間を置いて、ぶっきら棒にそう答えた。
目ぼしき乙女はレジの方の子だった。
単車のエンジンがかかり、私はいつものごとく後ろで淳に掴まる。
さっきまでのように体を密着させられなかった。
淳には伝わっているのか?
このコンビニに行って以降、単車の排気音が先ほどよりもウルサイものだなと、
認識が変わり始めていた。
私って単純。
髪の毛が滅茶苦茶になるのがいやだったので、スカーフを頭に巻いた。
レジの子は、コンビニには不釣合いな、サロンにいそうな子だった。
あんな僻地のコンビニにいるなんて反則だ。
原宿とかに行きたいと言出だしたのは、このこともあってなのか。
ヤカマシイ単車はトンネルを抜けると、朝日を浴びた。
朝日の中でも、本当に朝一番の薄っすらとした優しい朝日だ。
最高に気持ちが良い。
頼むから警察が現れないで欲しい。邪魔されたくない。
珍しく信号で止まった淳は、ビニール袋をまさぐった。
振り返り何だと思う?と問うような、意地悪な質問をぶつけられた。
アタフタするのも格好悪いと思い、平然を装った。
『あれでしょ、ドーム。』
『・・・・、正解!』
私の大好きなグミとチョコが同時に口の中に入れられた。
複雑な気分だが、嬉しさが少し勝った。
自然とオデコが淳の背中にくっついた。
私の家の前で単車は止まった。
私は聞いた。
『もう部活生活ともオサラバしたことだし、午後からでも、原宿行ってみる?』
『あー、とりあえず寝て、みて、からだな。』
とりあえず寝たいらしい。男って結構すぐ疲れる生き物みたい。
『お前の家デカイな。寝に行っていい?今から。』
『親いるし。アンタ誰って話になるよ。』
『うーん、Hしたいな、お前と。』
『最低~。』
『チェックチュしませんか。』
『かわいくないから、キモいし。淳だったら誰とでもできるでしょ?』
『だめかぁ、ホントお前つまらん。ノリ悪っ。それじゃ進路もおぼつかんね。』
淳が本気かどうか、私には分からない。
きっと杏とは何度も愛し合ったんだろうな。
『あの子とは?コンビにの。』
『だから何もないよ。付き合ってもいないし。』
『じゃあ、得意のナンパでもしてお願いすれば?』
『あー、あぁ、まださ、話したことないんだ。』
私よりこの子への方が全然本気じゃないか。
心の中でバーカと言ってみた。
振り返れば淳はもう走り出していた。
こっちまでジンジン響いてくるようなエンジンの音だった。
正直、あっけなかった。
第14話に続く。