昨秋の事件の幕開けはこんな感じだった。
普段全く思わないくせして、この時ばかりは、正直、普通の人間でよかったと思った。
そのぐらい周りの派手な連中は悲劇的な事件を起こし、
そして巻き込まれたからだ。
それでも、私も皆も、Life goes on.
背を向けて過ごした。
恋愛も失恋もし、恥をかいたり、悲しくて思いっきり泣いた時もあった。
力を誇示して殴りつけた教室にある木製の掃除用具入れには穴があき、
沢山の進路資料の入ったカラーボックスにも幾つものヒビが入り出した。
全細胞が入れ替わったかのように水泳に没頭し、
全ての大会を終えた。
季節は今、一回りしようとしている。
昨夜、閉店間際のカフェで軽くご飯を食べた後、2人で花火しながらずっと喋っていた。
テラスがとっても気持ちよく、そしてちょっぴし主役気分だった。
少し下品かもしれないが、足を投げ出したり、ふんぞり返ってみたり。
セレブって一体なんなのだろう。
実際のところ、育ちの悪さを露呈してきました。
でも、ずっとしっかりしてるより、たまにはバカがしたい。
私はパスタとジンジャエールを頂き、彼には、ずっと私の進路の話を聞いてもらっていた。
彼がポイントを使って機種変した新しいマスタード色の携帯を少しイジりながら、
頭の片隅で彼に関する人間相関図を少し描いていた。
『お前も、もっとテキトウにさ・・・、つーかもっとハデにやれよ。お前らしく。』
基本、聞き役の同い年の彼からのアドバイスはこれだった。
とてもシンプルなものだった。
お前らしくって言われても、それが一番分からないってのに。
彼は少し飽きてきているようで、
財布をテーブルの上に出してみたりしてみた。
彼の顔をチラリと見ると、落ち着かない様子である。
一気に席を立つと、すぐさまチェックを済ませ、単車に乗り込んだ。
どうやら私へのアドバイスは、
まるで彼自身に言い聞かせていた言葉のようでもあるように感じた。
髪伸びたねと人に言いながら、翌日自分が切ってくるようなものに近い。
TMCの代表と噂される彼の高そうなバイクは意外と静かだ。
彼にはいつも、お前は値段ばっか気にするな言われるが、
素人の私が見てもすぐに分かるほど、手入れがされており、
旧車と新車が融合してできている。
アホみたいに信号もなにもかも無視して、海へと向かった。
着くとすぐに、今度原宿とか、あの辺行きたいね、と急な要望を私に言った。
読めない人だ。
花火をしている内に序々に夜が明けてきた。
星にさよならとアリガトウを告げたい気分で一杯だ。
彼を想う気持ちは、未だ、もう少し自分の胸にしまっておくことにする。
浜辺を全力で走り回ったり、波に飲まれたりで、汚れた洋服を身にまとい、
今、私は再び後部座席で涼しい風に揺られている。
ガラガラな道路を踊るように滅茶苦茶に走り、物凄いスピードでコーナーを曲がった。
『ここが名物のコンビニ。』
停車すると彼はそう言った。
こんなへき地にあるコンビニに超ド級の美女がバイトしているらしい。
というか、こんなところにコンビニつくっても誰も来ないだろうに。
お構いなしに彼は足早に店内に入ろうとする。
私はその美女が何系かを想像しながら、歩き、自動ドアを通る前で
土地柄、ベタかも知れないが、サーファー系のキレイ目系か軽そうなギャル系だろう
という結論に達していた。
頭はこのように働いてはいたが、汚い格好をしているが上、
店内に入るのに腰が引けていた。
汚れているお気に入りの水玉のホットパンツが悲しかった。
負けるのは嫌なのでシレっと店内に入ると、予想通りの日焼けしたすらっとした子が
私に挨拶した。笑顔付きである。
よっぽど歓迎してくれているのでしょう。
ヒマなのか。
年齢不詳の彼女は年上なのは間違いないが、おそらく未だ十代だ。
容姿的には私と五分か、私の勝ち。
彼はというと、早くもレジでお金を払っている。
『行くよ。』
まだ雑誌コーナーにも差し掛かっていない私に、カレは小さな声で言った。
『何買ったの?』
『え?アレだよ、アレ。』
淳は少しニヤけた。
私は何のことかはすぐ分かったが、一応
『は?』
と答えておいた。
妙な沈黙があった。もちろん淳のせいである。
第13話に続く