4/6 ダイヤモンドグローブSP観戦記① | すぱんち~Sのボクシング徒然

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ボクシング観戦歴二十数年、今まで見たボクサー、試合等について適当に書き込んで行きます。

〈2014.4.6 大田区総合体育館 生観戦〉

行って来ました、大田区総合体育館。
イヤァ…ボクシングサイコー!
「前座」と呼べる試合のない豪華興行、片っ端から観戦記行きます。

・井上拓真vsファーラン

実は僕…この試合、拓真が負けると思っていました。
宮崎戦で見せたファーランのパフォーマンスと、前回の拓真のデビュー戦。
この試合だけで比べる限り、実力はファーランが上だという印象だったので。
しかし蓋を開けてみると、拓真は前戦以上のパフォーマンスを見せて、
ファーランの方はパフォーマンスを落とすという、ありがちな結果に。

拓真は随分進歩していました。
まあ単純な進歩なのか、本来の実力を発揮しただけかは分かりませんが、
力づくの前戦とは違い、今回はスピードを活かし、パンチの出もスムーズ。
一方のファーランは、完全な待ちのボクシング。
おそらくスピードで分が悪いことを認識しての戦法でしょうが、
あれだけ待ち一辺倒では…拓真をラクにしただけでした。
拓真がカウンターに注意しながら着実にポイントをピックアップし、
平坦な8Rが終了しました。

拓真は2戦目としては言うことなしのボクシング。
ただ世界を狙うボクサーとしては課題の残る内容でした。
プレッシャーをかけてロープに詰めてから、必ずジャブから入って様子を見てしまう。
ロープに詰めた相手を崩すバリエーションに乏しいですね。
そして、正直あの内容なら倒して欲しかった。
2勝とも判定…パワーもウワサほどではなさそうです。

拓真自信の評価は上がったものの、兄と比べるのは可哀想ですね。
前戦の時も書きましたが、じっくりキャリアを積んで欲しいところです。


・松本亮vs久高寛之

世界戦を除く前座では、一番楽しみにしていたカードでした。
松本はどうしても井上兄弟の影に隠れるものの、アマで高校4冠。
ここまで9戦全勝8KOの、れっきとしたスーパールーキー。
一方の久高は負け数こそ多いものの、4度の世界挑戦経験を誇るベテラン。
カウンターを得意として、ソリッドなパンチが持ち味のボクサーファイター。
松本にとってはプロキャリア初のビッグネームが相手で、
久高を踏み台にジャンプアップを狙っているのは明らか。
一方、久高にとっても売り出し中の松本相手に健在ぶりを見せたいところ。
この試合をきっかけに、世界戦線再浮上を目論む。

立場が違う両者による、典型的な新旧対決。
元々このテの試合は面白くなるものですが、特にこの試合を楽しみにしていた理由は、
僕が久高の実力を買っていることにありました。

久高は少し淡白な面があることは否めないものの、
センスで戦うタイプのうえに、衰えは感じられない。
さらに過去に何度も番狂わせを演出する、芯の強さもある。
僕の見立てでは並のルーキーなど蹴散らす実力を持っているだけに、
そういう選手を相手に、松本がどんなボクシングを展開するか?
松本の実力を計る相手として、久高はまさにうってつけでした。しかし…

結論から言うと、この日最も期待はずれの試合でした。

松本は破格の身長によるやりづらさを加味した総合力で対抗していましたが、
単純なボクシング勝負では久高よりも劣っていました。
そしてスタミナがない。終盤はフラフラで、相当危ない場面もありました。
パンチの出し方やフットワークなど、基礎的なことでも改善の余地があるだけに、
正直上を目指すなんてまだまだ…という印象です。

久高の方は…相変わらず淡白(笑)。
3R終盤の連続カウンターなど、随所にセンスは見せつけましたが、
7・8Rの攻勢をもっと早く仕掛けていたら、倒した可能性もあっただけに、
勝ちへの執念に乏しい点が惜しまれます。

そしてこの試合がつまらなくなった最大の理由…
それは、距離的にちっとも噛み合わなかったこと。
松本は遠距離で戦えば完封できたかもしれませんが、
ボクシング技術が稚拙で簡単に接近を許してしまう。
久高は潜り込んで…というタイプではなく、
上体を立てたまま半端な距離で打ち合ってしまう。
最終的には松本の手が上がった訳ですが、
多くの課題が浮き彫りになる、ほろ苦い勝利となりました。


・ロマゴン前哨戦

この試合は振り返るような内容にはなりませんでしたね。
いずれ八重樫vsロマゴンの展望を書きたいと思っていますので、
その時にまとめて触れる…つもりです。
とりあえず無事に勝ってよかったですね。


・細野悟vs緒方勇希

天笠が返上した日本王座の決定戦として行われたこの試合。
細野にとっては図らずも日本からの出直しという位置づけになりましたが、
細野は元々天笠と戦いたい意向であったため、
緒方には悪いですが、細野のモチベーションは決して高くなかったと思われます。
僕はここ最近の細野の試合を見ていませんが、
記事を読む限りでは課題の残る内容だった様子。
もう一度世界に辿り着くまで負けは論外、内容も問われる試合が続きます。
しかし…この試合も先手を取ったのは緒方の方でした。

緒方の戦法は、細野が近づく前に手数で突き放し、
接近されたら細野に寄りかかってパンチを打てる距離を潰す…というもの。
序盤はこれがものの見事に機能しました。
細野は攻撃を寸断されて、全くリズムに乗れない状態。
このまま番狂わせまであり得るのか?不穏な空気が流れていました。

流れが変わったのは3R。この試合初めての細野のクリーンヒットで、
緒方の顔色が変わります。
ここからパンチのある者とパンチのない者の、
残酷なコントラストが描かれることになりました。

クリーンヒットの数では一方的に緒方。無数の細かいパンチが細野を捕らえる。
パンチのインパクトでは圧倒的に細野。一発で確実に緒方にダメージを与える。
序盤に緒方が積み上げてきたものが、細野のパンチで崩されていく。
5R終了時の採点ではまだ緒方がリード。
しかし、細野のパンチ力の前に追いつかれ、追い越され、追い詰められ…
ついに緒方が力尽きたのが、最終10Rでした。

ハッキリ言って、細野はパンチ力に救われましたね。
戦術的には緒方の方が勝っていました。
しかし、勝つためにどんなに戦略を練り上げても、
それが一発で崩される理不尽さもボクシング。
今回は細野が生き残った。さあ、次は…?
世界に辿り着くまで、細野の負けられない戦いが続きます。

世界戦については次で書きます。