村田諒太 | すぱんち~Sのボクシング徒然

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ボクシング観戦歴二十数年、今まで見たボクサー、試合等について適当に書き込んで行きます。

地方に住む弟家族と実家で会ったりして、なかなか更新できず…。
そんな中、今回はこの人、村田です。
村田については折々に触れてきましたが、プロキャリアも3戦となったところで、
改めて書いてみようと思います。

ここまで3戦3勝3KO、プロとしてまずは順調な滑り出しを見せた村田。
ここまで明らかな噛ませ相手の試合はひとつもなく、
骨っぽい選手を選んで、与えられた課題をクリアしていく。
まさに「育成」というカンジ。

初戦は「プロボクサー村田」の顔見せ的な位置づけでした。
デビュー戦で東洋王者を撃破…というのは強烈なインパクトがありますが、
肩書があって、倒される危険は少ない柴田を相手に選んだマッチメイクはまさに絶妙。
村田本人には自信を、観客には強さを植え付けることに成功しました。

2戦目は課題を浮き彫りにするマッチメイク。
横に動き、手数も出してくる相手に対し、ガードが忙しくパンチが出ない。
ガードを固めて前に圧力をかける、従来のスタイルの限界と、
ジャブの必要性を痛感させられる内容でした。

それを受けての3戦目…前回の試合は良かったですね。
相手の力量には不満が残りますが、村田の出来は文句なし。
パンチもほとんどもらわずに一方的に攻め立て、
過去2戦とは段違いの内容でした。

リングに上がった時点で、まず身体のシャープさが違う。
開始数秒で香川も指摘していましたが、スタイルが変わっている。
上体が柔らかい。足の運びも柔らかい。頭の振りもスムーズ。
アップライトからガードを高く上げて前に出る従来のスタイルから、
ジャブを起点に相手を崩していく、本格的なボクサーファイターへ。
1試合でここまで洗練されるものなのか…。
この日の村田のボクシングには、少なからず驚かされました。
相手のナシメントが過去の試合を研究して試合に臨んでいたら、
この日の村田にはやはり面食らったでしょうね。
まるで別人といっても過言ではないほどでしたから。

…とまあ簡単にこれまでの3戦を振り返って思うのは、
村田というボクサーはまだ「素材」だな、と。
五輪を制したアマ王者というと、やはり技術に秀でたイメージがありますが、
村田に関してはそれは感じられません…金メダリストに対して失礼な話ですが。
(僕はアマ時代の村田の試合はロンドン五輪しか見ていませんが、
むしろアマにはいないスタイルだったことが大成した要因だと見ています)
その代わり、この素材が「いい素材」であることは疑いようがない。
そして、この素材には吸収力がある。
3戦でこれだけ進化してみせたように、
恵まれた環境での練習と、試合での経験を糧として、
今後どのように成長していくか、とても興味があります。

今までの試合を見る限りでは、オールマイティな
ボクサーファイターを目指していくのでしょうが、
僕個人としては、その方向性には基本的には賛成です。
しかしスタイルの変更ではなく、従来のスタイルとの両立が望ましいと思います。
ボクサーファイターを目指していくことは、
どんな相手にも対応できるスタイルになる反面、特徴がなくなる…。
ボクサーファイタースタイルを突き詰めても、
村田以上のボクサーファイターはいるでしょうし、
言葉は悪いですが、凡百のボクサーに成り下がる可能性もなくはない。
極論すれば、ゴロフキンやクイリンと対峙した時には、
従来のスタイルでの真っ向勝負の方が勝ち目があると思います。
…とはいえ、どんな相手にも対応するには、
ボクサーファイタースタイルの修得は必要不可欠。
…ですので、従来のスタイルは封印するのではなく、
引き出しの一つとして持っておくことが重要だと考えます。

世界的に見て、今強いのかは分からない。
しかし、これから確実に強くなる。
金メダリストの肩書を過去の栄光にするほどの活躍ができるのか?
「BIG DREAM」村田の掲げる壮大な夢を、僕も見て行きたいと思います。

最後にこの話題を。
一方…といいますか、もう1人のメダリスト、
清水聡のAIBAプロ入りが発表されましたね。
従来のプロ組織としては残念なニュースになるのでしょうが、
個人的にはこれはこれでアリだと思っています。

注目はAIBAプロの特徴でもある「給与制」…これが実現するのかどうか。
普通に実現するなら、ボクシングの底辺拡大の意味でも画期的なことです。
そこへメダリストの清水が行くことで、注目度が上がることに意味があります。
本当にそんなことが出来るのか?絵に描いた餅で終わるのか?
清水を介して見ることが出来る。文字通り広告塔の役割ですね。
村田や他のボクサーとは違う道を選んだ清水。
そのファイトをなかなか見られないのは残念ですが、頑張って欲しいものです。