+++ station story +++
今朝、ボクたちは些細な事でケンカをした・・・
天気予報を観る余裕もなく家を出た。
午後から降り出した雨。
ボクは会社の窓から
シトシト降る雨を不安そうに眺める。
キミはボクが傘を持って行かなかったこと
知ってたんだね。
傘を持って駅まで迎えに来てくれて。
ボクを驚かせたかったのか
連絡もせず、はっきりした時間もわからないまま
ボクが帰るのをじっと駅改札口の前で
時計と睨めっこしながら待ってたんだね。
実は、途中でビニール傘を買ってしまったボク
キミの姿を見つけたボクは
気づかれないように顔なじみの駅長さんに
ボクが持っていた傘をそっと手渡した。
『すいません。明日取りに来ますから
預かってていただけますか?』
すると、駅長さんもわかっていたのか
『預かっておくからね!彼女ずっと待ってたよ
早く行ってあげなさい』
笑顔で迎えてくれてるキミのもとへ
『ただいま!傘持ってきてくれたんだね。助かったよ』
駅長さんがホッとした様子で
見送ってくれてるのを背中で感じ
この頃には雨も小降りになり
少し照れながらも久しぶりのアイアイ傘の中
すっかり朝のケンカも忘れて
普段と変わらない会話が飛び交う。
『今夜は豚キムチ丼が食べたいな』
ひとつの赤い傘が
ボクとキミを
仲直りさせたんだね。
ボクは思った・・・
傘を忘れてよかった。
そんな駅物語。
この物語はフィクションであり、
実在の人物・団体とは一切関係ありませんw
+S