2023/03/28 伊達政宗〔3〕 夢は醍醐の巻 | 汚事記

汚事記

汚い事が記されます。

『伏見の対決』

文禄元(一五九二)年三月一日、秀吉の大明征服計画の出発から。

翌年の三月二十二日、政宗、名護屋出帆。

四月十三日、対馬を発し釜山に上陸。

十八日に金海城を攻め敵の首級を二百二十挙げる。

秀吉から武功の感状が届く。

浅野父子と共に蔚山に向かい、ここでも首級八十三を挙げる。

虎哉禅師に宛てた詩。

 

 何んぞ知らん今歳滄海に棹さす杜氏

 高麗、大明、掌中に属す

 剣を函にし、弓を嚢にし国を治るところ

 帰帆すべからく是れ秋風に待つべし

 

虎哉禅師の返詩。

 

 何んぞただ学兵孫武を諳んじ

 杜詩韓集は胸中に在り

 吾が公渡海帰る何ぞ晩き

 恨殺す禅窓日暮の風

 

母・保春院にも手紙を出しているらしい。

さらに晋州城の戦で敵数百人を生け捕り。

九月十二日、釜山を発ち帰国。

文禄三年、吉野の花見の歌会、「花の願い」、「花を散らさぬ風」、「滝の上の花」の三題で政宗が詠んだ歌。

 

    花の願い

 同じくはあかぬ心に任せつつ

   散らさで花を見るよしもがな

 

    花を散らさぬ風

 遠く見し花の梢に匂うなり

   枝に知られぬ風や吹くらん

 

     滝の上の花

 吉野山滝津流れに花散らば

    はや気にかかる波ぞ立ち添う

 

文禄四年四月二十三日に帰国を許されるまで京に滞在、二十九歳に。

岩出山城に着いて二ヵ月も経たないうちに、秀吉から上洛命令。

今度は関白秀次の謀反の扇動者、という嫌疑。

三成が政宗を陥れようとしているらしい?

この小説は章の中でも時系列が行ったり来たりするのでこうして整頓すると理解が深まる。

 

『蛟龍弄玉』

謀反の嫌疑をかけられている政宗、今回ばかりはいい手が浮かばない。

虎哉禅師に相談するも、とにかく急いで行け、ということらしいので七月末に京へ向かう。

八月二日、中山道で秀次の妻妾三十四人と子供四人が三条河原で斬られたのを知る。

八月十二日、京入り。施薬院全宗の邸へ。

三成の他に、淀君が関わっているらしい。釜茹でにされた石川五右衛門の後ろ盾も実は伊達だ、という噂もあるそうで、呆れる政宗。

家康に泣きついて、何とか助かった。

高札については、柳生宗矩の命で村田弥三が立てて歩いたらしい。

 

『天下風船』

三成の動きの真意がわかってきた政宗、淀君に会うことに。

文中の淀の評。

 

 淀の君は、なるほど豊艶な美人であった。

(――しかし、いささか油が乗りすぎている)

 と、政宗は思う。唇も厚ければ胸も厚く、膝も肩もみな少しずつ厚すぎて、しかもそれが美人の鋳型にはめたように整いすぎている。よほど女子に飢えている時はとにかく、さもないといささかならず色っぽ過ぎてうっとうしい。

(――わしならばやはり愛姫を取るの)

 

政宗、今井宗薫を使って娘の五郎八姫を家康の六男・辰千代の嫁にする算段。

私は淀君というと……「真田太平記」の岡田茉莉子がケバさ強烈で、真っ先にイメージするのはあの岡田茉莉子の顔。こないだ、大河の「徳川家康」を通して視た。夏目雅子はいい女だな。あ、大河といっても、いまやってる方の家康はぜんぜん興味がない。今のパッパラパーどもの作るのなんかどうせクソドラマだろうし見る時間がもったいない。だいたい、いまのNHKは日本犯罪者協会の略だから一瞬たりとも視たくない。

 

『慶長三国誌』

政宗と今井宗薫と家康の腹の探り合い、石田三成と直江兼続の話し合い、醍醐の花見から秀吉の死。

  露とおき露と消えぬるわが身かな

   浪花のことも夢の亦夢

 

『鯛の見る夢』

政宗、宗薫を通して家康に縁組の引出物として、五十万石と近畿に二十万石、息子も大名に取り立てろと要求。

家康、政宗の考えなど読めていてスゲー。

政宗、治部少を

「小さな犬の檻に鎖で繋がれたむさいムジナ」

と評する。これがおかしくて読んだ時に噴いてしまった。

前に『徳川家康』でも政宗は忠輝と長安の関係を「天馬に乗った狐」と例えていて、山岡荘八の伊達政宗は誰かを動物に例えるのが好きなのかな。

政宗、外国や船について語りだす。

忠輝も登場して、この辺りから『徳川家康』では詳しく語られなかった部分が描かれる、副読本・補足本みたいな一面が強くなってくる。これは『徳川家康』を読んだ直後に読み始めて正解だったというか、実に良いタイミングでうまいこと出会えた本だと思った。

 

『独眼関ケ原』

政宗に柳生宗矩が接近。行方不明だった伊達成実の居場所と交換に柳生の狭川新三郎を雇うことに。

家康の政宗評、

「政宗の思案は粗雑で困る。大切なところがポカリ、ポカリと抜けている。それゆえ怒らせて締めておかぬと、水を汲むおり、たがが外れるぞ」

これは、たしかに読んでいるとその通りだ。大事なところのツメが甘い。

 

続いて、上杉討伐。この小説は『伊達政宗』なので、『徳川家康』では詳しく書かれなかった箇所や、違った見方も描かれていておもしろい。

 

政宗の一揆の煽動と土民兵の使い方の巧妙さは群をぬいていた。

 

とある。なので家康、上杉の北を政宗におさえさせ、南の宇都宮は秀康でよいかと判断。百万石のお墨付きを与えられることになったが、実行はされなかった。