前半は13年前のレポートで、後半は憲法改正の議論について今思うことです。

2つに分けられないこともないですが、憲法つながりで一緒にします。

 

37歳の時に初めてレポートなるものを書きました。

41歳まで高卒だったので、恩師に書き方を教えてもらったり、レポートの書き方の本を読んだりして、学のない自分は試行錯誤で書きました。

それが以下のレポートです。

 

憲法改正についての議論が激しい昨今、「憲法とは何か?」を知る上で参考になるんじゃないかと思います。

憲法とは、国家がおかしなことをしないため、国民の権利を守るため、国民が国家を監視するためのもので、法律の上に位置する、国の最高法規です。国際的にはその上に条約があります。

国家と国民との関係性における法ですが、そんな憲法を国民同士(私人間・しじんかん)の問題に適用できるのかについて書いたレポートです。

このレポートを書いた3年後、母校の高校で教育実習をした時に教えたのも日本国憲法でした。

 

 

【日本国憲法 第1回提出課題】

 憲法の基本的人権に関する規定は、私人間の法律関係に対して、どのように効力を及ぼすか述べる。

 

 伝統的な人権観について、18世紀の人権宣言が全法秩序の基本原則である事に端を発し、戦後の憲法は、実定法秩序の最高の価値であり、全法秩序の基本原則であって、全て法領域に妥当すべきものである。


 私人間効力が注目されるようになったのは、資本主義の高度化に伴い、社会の中に、企業・労働組合・経済団体等、巨大な力を持った国家類似の私的団体が多数出現した為に、一般国民の人権が脅かされたり、都市化・工業化の進展による公害問題が生じたり、マスメディアによるプライバシー侵害等の問題も生じる事から、私人間にも憲法の適用が求められるようになったからである。


 そこで、日本国憲法上の人権を私人間にどのように適用するのか、学説の対立があった。
 最初に出た学説は、非適用説である。この学説は、憲法は国家対国民の関係を規律する法であるから、私人間に適用されないと解する見解で、人権保障が高まった現在では支持されていない。

次に主張されたのは、直接適用説である。これは、私人間の人権問題にも憲法を直接適用して、解決しようとするものである。

しかし、この学説は、私人間の人権保障を重視する意味では評価されるべきものだが、他方で市民生活に国家の介入を求めないという、私的自治原則も尊重しなければならない事から、両者の調和を求める学説が出た。それが間接適用説である。

間接適用説は、憲法の趣旨を取り込んで解釈・適用する事によって、間接的に私人間の行為を規律しようとする見解で、通説・判例の立場である。


 間接適用説について、実際の裁判の判例を考察する。


 まず、三菱樹脂事件について、被告である三菱樹脂株式会社に採用された原告が、在学中の学生運動歴について、入社試験の際に虚偽の申告をしたという理由で、3ヶ月の試用期間終了時に本採用を拒否されたのである。

そして、最高裁は、これに対する立法措置によって、その是正を図ることが可能であるし、また、場合によっては、私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し、基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存するのである。


 次に、日産自動車事件について、定年年齢を男子60歳、女子55歳とした男女別定年制が法の下の平等に反しないかどうかが問題になり、最高裁は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして、民法90条の公序良俗に反するとして、無効であると解するのが相当であると判示したが、その際に、憲法14条を参照した。


 これら2件の判例を考察してみると、間接適用について、対照的であるといえる。

前者は、企業と個人とを同等視し、個人の人権に対して消極的である一方、後者は、人権の私人間効力を積極的に認めるものである。


 私見ではあるが、先述の通り、現代社会には、強大な力を持った国家類似の私的団体が存在しており、そのような社会的権力による人権侵害から、個人の権利・自由をいかに保護するかが問題であり、我々は自ら、自分の権利・自由を守らねばならない。

そして、裁判所は、社会的権力といえる私的団体を、国家類似権力として捉え、個人の権利を第一に考えるべきではなかろうか。また、個人の権利を尊重しないような国は、その行く末が暗いのではなかろうか。

 

<レポートは以上>

 

 

 私人間効力というのがあるって話で、「憲法は国家権力を規制するもの」という程度の理解で支障ないと思います。国民を裁くのは各種法律・条令の役目です。

 

 さて、日本は改正の手続きが難しい「硬性憲法」で、諸外国の硬性憲法の中でも特に手続き難しいです。世間で憲法改正の議論が激しいのは9条や96条についてですが、それ以外で改正(今の時代に合わせて項目を追加)した方がいいものもあると考えるので、のべつ幕無しに「憲法改正反対」と言うのは、子供の誤解を招きそうだと個人的に思います。

例えば、プライバシー権や肖像権、情報を知る権利等は、13条の幸福追求権から導き出されていますが、規定されていないので明文化されていません。憲法がつくられた時代にそういう概念がなかったためです。

13条から遠回しに導くより、項目を追加した方がいいと考えます。13条の精神を変えるものではないですし・・・。

 

右にも左にも加担する気はないという前提の話ですが、先述通り、国家権力から国民の権利を守るためにあるのが憲法です。それを考えると、権力側の人間が改正したがるというのは、自分を縛るものを緩めたいと言ってるのと同じじゃないかと思います。

だからといって、戦争反対だから自衛隊を無くせと言う一部の左派は脳内お花畑もいいとこですが・・・。

現実問題として他国に攻められらどうすんの?って話です。いくら日本国内で「戦争反対!防衛費削減!」と言ってても、他国が軍事攻撃をしてきたらやられっぱなしで犠牲者を増やす一方、という訳にはいきません。

抑止力も含めて自国を守るに十分な実力(軍事力)は必要です。社会保障費との兼ね合いで防衛費が問題視されますが、どちらも国民を守るという意味では共通しているし、どちらかを大幅に削減することはできません。

国民の負担が大きくなるのはどうしても避けられないということです。

 

日本は国民平均年齢(中央年齢)が世界一(2013年のデータ45.9歳で評価E)の「老人国」なので、それだけ社会保障費も膨大です。世界の平均年齢(中央年齢)は28.2歳です。

「長寿大国」というと聞こえはいいですが、国民平均年齢が世界一で、このままでは見通しが暗い。

この平均年齢世界一ということが、(若い)移民の受け入れと関係するし、EPA(経済連携協定)でフィリピン、インドネシア、ベトナムから看護師や介護士の見習いを受け入れていることと関係します。

ちなみに、そのデータによると、フィリピンの国民平均年齢は23.0歳で評価B、インドネシアは27.8歳で評価C、ベトナムは29.8歳で評価Cです。

 

つまり、右と左でいがみ合ったところで、安全保障も社会保障も、どちらも同じく重要なのです。

 

 

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第三版を使っていました