大学通信教育課程2年次(2007年)に書いたレポート
地域福祉の歴史的展開をふまえて、今日の理論的到達点を述べる。
戦後の日本の社会福祉は、欧米の理論が積極的に導入された事に加え、岡村重夫や三浦文夫の理論が大きな影響を与えた。三浦文夫の理論によると、戦後の第一段階では救貧制度から防貧制度としての社会福祉に転換し、第二段階では社会福祉ニードを貨幣的ニードから非貨幣的ニードへと変容した。一方、わが国特有の、社会福祉と対置した地域福祉という概念において、戦後の地域福祉は戦前に比べて縮小していた。しかし、1968年のシーボーム報告により地域福祉の実態化が進み、70年に地方自治体社会サービス法が成立し、地方自治体による制度的福祉サービスが拡充されたのである。
70年代に入り、地域福祉が本格的な研究対象となり、日本独自の様々な理論が展開され、代表的な4つの地域福祉論の志向軸がある。コミュニティ重視志向の岡村重夫は、最も直接的具体的援助活動としてのコミュニティケアとそれを可能にするための一般地域組織化活動、地域福祉活動、予防的社会福祉によって構成しうるとした。政策制度志向の右田紀久惠は、それまでの地域福祉理解を政策・制度的な対応のレベルに引き上げ、包括的・全体的に対応すべきものとした。在宅福祉志向の永田幹夫は、社会福祉サービスを必要とする個人・家族の自立を地域社会の場において図る事を目的とし、サービスの地域的展開を鮮明化した。住民の主体形成と参加志向の渡邉洋一は、住民の主体形成、地域の福祉力の強化・定着、社会的に不利で抑圧されている人々の主体形成力が重要であるとした。
在宅福祉の変遷をたどると、70年前後は家族の扶養・養育機能の低下が指摘され、在宅の寝たきり高齢者を取り巻く問題などが顕在化し、地域社会における伝統的な共同体システムが崩壊しつつあった一方、社会福祉施設緊急整備計画が実施され、施設ケアの整備が進められ、施設の拡充が進められていたという特徴も併せもっていた時期である。その後、78年の全国社会福祉協議会「在宅福祉サービスの戦略」において、コミュニティケアの考え方を在宅福祉サービスとして発展させたのである。以上の経過から今日の在宅福祉のサービスは飛躍的に拡大、多様化し、その概念も自立援助の考え方に基づくサービスとなっているのである。
次に、地域福祉計画の歴史的展開について。1950年代は社会福祉協議会主体のコミュニティ・オーガニゼーション論が、60年代は行政主体の、構造化されたコミュニティ・ディベロップメント論が柱となっていた。しかし、70年代以降はコミュニティケアが計画化する上で中心となった。さらに、2000年の社会福祉法成立により、2003年に市町村地域福祉計画が法定化し、措置制度から契約制度へと転換し、新たな段階を迎えたのである。
今や地域福祉に欠かせないコミュニティケア、ノーマライゼーション、ボランティア、NPOであるが、コミュニティケアとは、ニーズをもつ人々が地域社会の中で、他の市民と同じ自立生活を送るための支援であり、ノーマライゼーションとは、障害者が他の市民と対等、平等に存在する社会に変革しようとする思想である。加えて、市民の自由な社会貢献活動であるボランティアの延長線上に位置するNPO(民間非営利組織)が近年、福祉社会において活発となり、公的機関との福祉ミックスが広がっているのである。
つまり、今日の地域福祉推進で重要なのは、地域住民の参加と、地域住民を主体とした福祉文化の土壌の形成である。
地域福祉の歴史的展開をふまえて、今日の理論的到達点を述べる。
戦後の日本の社会福祉は、欧米の理論が積極的に導入された事に加え、岡村重夫や三浦文夫の理論が大きな影響を与えた。三浦文夫の理論によると、戦後の第一段階では救貧制度から防貧制度としての社会福祉に転換し、第二段階では社会福祉ニードを貨幣的ニードから非貨幣的ニードへと変容した。一方、わが国特有の、社会福祉と対置した地域福祉という概念において、戦後の地域福祉は戦前に比べて縮小していた。しかし、1968年のシーボーム報告により地域福祉の実態化が進み、70年に地方自治体社会サービス法が成立し、地方自治体による制度的福祉サービスが拡充されたのである。
70年代に入り、地域福祉が本格的な研究対象となり、日本独自の様々な理論が展開され、代表的な4つの地域福祉論の志向軸がある。コミュニティ重視志向の岡村重夫は、最も直接的具体的援助活動としてのコミュニティケアとそれを可能にするための一般地域組織化活動、地域福祉活動、予防的社会福祉によって構成しうるとした。政策制度志向の右田紀久惠は、それまでの地域福祉理解を政策・制度的な対応のレベルに引き上げ、包括的・全体的に対応すべきものとした。在宅福祉志向の永田幹夫は、社会福祉サービスを必要とする個人・家族の自立を地域社会の場において図る事を目的とし、サービスの地域的展開を鮮明化した。住民の主体形成と参加志向の渡邉洋一は、住民の主体形成、地域の福祉力の強化・定着、社会的に不利で抑圧されている人々の主体形成力が重要であるとした。
在宅福祉の変遷をたどると、70年前後は家族の扶養・養育機能の低下が指摘され、在宅の寝たきり高齢者を取り巻く問題などが顕在化し、地域社会における伝統的な共同体システムが崩壊しつつあった一方、社会福祉施設緊急整備計画が実施され、施設ケアの整備が進められ、施設の拡充が進められていたという特徴も併せもっていた時期である。その後、78年の全国社会福祉協議会「在宅福祉サービスの戦略」において、コミュニティケアの考え方を在宅福祉サービスとして発展させたのである。以上の経過から今日の在宅福祉のサービスは飛躍的に拡大、多様化し、その概念も自立援助の考え方に基づくサービスとなっているのである。
次に、地域福祉計画の歴史的展開について。1950年代は社会福祉協議会主体のコミュニティ・オーガニゼーション論が、60年代は行政主体の、構造化されたコミュニティ・ディベロップメント論が柱となっていた。しかし、70年代以降はコミュニティケアが計画化する上で中心となった。さらに、2000年の社会福祉法成立により、2003年に市町村地域福祉計画が法定化し、措置制度から契約制度へと転換し、新たな段階を迎えたのである。
今や地域福祉に欠かせないコミュニティケア、ノーマライゼーション、ボランティア、NPOであるが、コミュニティケアとは、ニーズをもつ人々が地域社会の中で、他の市民と同じ自立生活を送るための支援であり、ノーマライゼーションとは、障害者が他の市民と対等、平等に存在する社会に変革しようとする思想である。加えて、市民の自由な社会貢献活動であるボランティアの延長線上に位置するNPO(民間非営利組織)が近年、福祉社会において活発となり、公的機関との福祉ミックスが広がっているのである。
つまり、今日の地域福祉推進で重要なのは、地域住民の参加と、地域住民を主体とした福祉文化の土壌の形成である。
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