医療観察法は、社会福祉士国家試験の19科目のひとつ、「更生保護制度」の出題範囲に含まれる比較的、新しい法律です。
2001年の大阪池田小学校事件を契機に小泉内閣の下、2003年に野党­と多くの市民の反対の中、強行採決で成立し、2005年7月に施行されました。
(ちなみに、池田小学校事件の犯人は犯行前に抗うつ薬・パキシルを服用していた)

医療観察法の対象となるのは、次の6種類の重大な他害行為、「殺人」「放火」「強盗」「強姦」「強制わいせつ」「傷害」のいずれかを行った者で、心神喪失、心身耗弱により不起訴処分になった者や無罪になった者、いわゆる「触法精神障害者」と呼ばれる人です。

その対象者を国が指定した医療機関に入院または通院させ、円滑な社会復帰の促進を目的とした法律です。
法成立時に条文から外されましたが、事実上、「再犯防止」も目的のひとつです。

精神保健福祉法とは違う、医療観察法の大きな特徴は、対象者の入退院、入院期間延長に関して、司法が介入するところです。
(1人の裁判官と1人の精神保健審判員(精神科医)の合議制で決定)

裁判官が、刑罰ではなく、「治療」を目的とした入退院について決める立場にあることを問題視する声が少なくありません。
「治療という名の懲役」とも取られかねない問題です。
さらに、「治療」で再犯のおそれがなくなったかどうか、どういう根拠をもって判断できるのかといった問題もあります。
再犯するかどうかを科学的に判定することは、精神科医にも裁判官にもできません。

個人的には、心神喪失状態だったことを理由に無罪となることは理不尽で、本当の意味でのノーマライゼーションではないと考えます。
障害者を差別しない世の中にするというのなら、心神喪失を理由に無罪にして、刑罰を与えないことは、障害者を特別扱いしていると考えるからです。

ただし、それとは別の議論で、不起訴や無罪になった者を強制的に入院させ、精神医療を受けさせることは、「危険人物の隔離収容政策」だと社会的に認識され、それが精神障害者への偏見、差別を助長するのではないかと考えます。
重大な犯罪を行った障害者を心神喪失という理由で、専門医療施設に送り込むことは、精神医学界と製薬会社が潤うことにもつながります。
それより、心神喪失を理由に無罪とする刑法39条を廃止して、精神障害のある重大犯罪者は、医療刑務所に収監すればいいという考えです。
心神喪失を理由に重大な犯罪行為でも無罪にする刑法39条のような法律は、世界的になくなってきています。
共産主義国ではそういう概念自体ありません。

刑法39条がある日本において、医療観察法は、あくまでも「治療」が目的ですが、2~3年の短期間の懲役ともとれ、医療観察法や刑法39条の賛成派と反対派の双方にとって、どっちつかずの処遇で、不満しかない法律ではないかと考えます。
精神医学界と製薬会社を除いては・・・。


【医療観察法強行採決前 法の問題点 1/3】
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【医療観察法強行採決前 法の問題点 2/3】
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【医療観察法強行採決前 法の問題点 3/3】

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