厚生労働省は新年度から、抗不安薬や睡眠薬などの向精神薬を
数多く処方した場合、診療報酬を原則認めない仕組みを導入することを決めた。
薬物依存や重篤な副作用を防ぐ狙いがある。

新ルールでは、外来診療で服薬管理などをする際、
抗不安薬か睡眠薬を3種類以上、
または、統合失調症の治療に使われる抗精神病薬か、抗うつ薬を4種類以上、
1回で処方した場合、診療報酬を請求できなくし、処方箋料も減額する。


また、入院患者に、副作用が少ないとされるタイプの抗精神病薬を処方する場合も、
2種類までしか加算できないように改める。

抗不安薬や睡眠薬としてよく使われるベンゾジアゼピン系の薬剤は、
使用し続けると薬物依存になる危険性がある。

抗精神病薬は一定量を超えると治療効果は上がらず、
手の震えや体のこわばりといった副作用の危険が高まり、突然死することもある。
国内では、抗精神病薬を3剤以上処方している割合が海外に比べて多い。

『読売新聞』 2014年3月7日付
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2年ごとに行われる診療報酬改定で今回、向精神薬の処方に制限が設けられました。
しかし、内容をみると、多剤処方の対策になっているとはいえません。

新ルールでは抗不安薬と睡眠薬を区別していますが、
どちらもベンゾジアゼピン系の薬です。
4種類までベンゾジアゼピン系の薬を処方しても良いということになります。
抗精神病薬(メジャートランキライザー)と抗うつ薬は、
それぞれ3種類までなら処方しても良いことになり、
多剤処方の歯止めになっていません。

抗不安薬と睡眠薬を合わせて、ベンゾジアゼピン系の薬を4種類、
抗精神病薬、抗うつ薬を3種類出す科学的根拠はありません。
日本精神神経学会は、「多剤処方に適した患者がいる」などと、
多剤併用療法の必要性を書面にて強調しました。
https://www.jspn.or.jp/activity/opinion/2014/20140118_medical_fee_revision_statement.pdf 

抗精神病薬と抗うつ薬をそれぞれ4種類以上ではなく、
3種類以上処方した場合に規制をかけないと意味がありません。

精神科の薬の処方について、こんなに甘い国は日本だけです。
多剤大量処方は日本特有のもので、世界のスタンダードではありません。

それに、外国への持ち込みや外国での所持が禁じられている薬もあります。
例えば、ベンゾジアゼピン系睡眠薬のフルニトラゼパム
(商品名・ロヒプノール、サイレース)
は、
アメリカでは医療用に承認されていないので、持ち込みが原則禁止されており、
アメリカ以外の国でも所持が違法である国や、
合法であっても所持に制限がある国が多い薬ですが、
日本では、使用期間に制限がなく、何年も服用している人が多くいます。

日本の精神医療における薬物療法にもっと厳格な規制を設けないと、
多剤大量処方の問題は、永久に解決しません。


【精神科医の多剤処方の言い訳】