9月1日に改正動物愛護法が施行されました。

正式名:動物の愛護及び管理に関する法律

 

主な改正点は次の通り。

 

◆飼い主がペットを最期まで飼育する終生飼養)の責務が規定され、明記された

(法令において、明記されたことの意味は大きい)

◆行政機関に、責務に反したペットの引き取り

(ペットが老齢になった、大きくなった、しつけができない等の身勝手な理由)

に対して、拒否できる権利与えられた。

◆飼い主がペットを遺棄した(捨てた)場合の罰則が強化され、「50万円以下の罰金」から「100万円以下の罰金」に変更された。

◆ペット販売業者(動物取扱業者から第一種動物取扱業者に名称変更)に対して、犬猫等健康安全計画の策定、個体ごとの帳簿の作成・管理、毎年1回の所有状況報告が義務付けられた。

◆ペット販売業者は、販売に際、購入者に対して、現物確認と対面説明をすることが義務付けられた。

幼齢の犬猫の販売制限について、生後56日を経過しない場合の販売が禁止となった。

(経過措置として、平成28年8月31日までは生後45日、それ以降別に法律に定めるまでの間は生後49日の場合とされている)

◆捨てられたなど訳ありの動物を取り扱う非営利団体に対して、第二種動物取扱業としての届け出が義務付けられた。

 

動物愛護法が改正された背景には、人間の無責任さやモラルの欠如が社会問題になっているのはいうまでもない。

「愛玩動物」という言葉があるが、動物は「玩具」ではないことを私たちは決して忘れてはならない。

 

ところで、ペットに対するモラルは、昔より低下しているのだろうか。

それとも、昔も今も変わらないのだろうか。

 

「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(環境省調べ) ←リンクあり

 

「全国の犬・猫の殺処分数の推移」(旧総理府、環境省調べ) ←リンクあり

 

この環境省のデータを見ると、犬と猫の殺処分数は、右肩下がりで年々、減少している。

平成元年度の犬の殺処分数は68万7千頭、猫のそれは32万8千頭であるのに対して、平成23年度の殺処分数は、犬が4万4千頭、猫が13万1千頭となっている。

もちろん、殺処分数の増減は、飼い主のモラルを単純に表しているものではなく、殺処分数が減少傾向にあるからといって、販売業者も含めた飼い主のモラルが高くなった証明にはならない。

動物保護団体、NPO、ボランティアの活動、努力が、殺処分数の減少の要因のひとつといえるであろう。

 

犬・猫の殺処分や飼い主のモラルに地域性があるか調べてみたところ、平成23年度の都道府県別の殺処分数上位5県、下位5県のデータがあった。

 
よしあきのブログ-都道府県別犬猫殺処分数

 

これを見ると、人口の多さと殺処分数は関係あることが分かる。

犬・猫の殺処分数が最も多いのは広島県で、ワースト2位が大阪府、3位が福岡県、4位が兵庫県、5位が愛知県で、いずれも大都市のある人口が多い県である。

しかし、東京都を含めた関東首都圏はここには入っていない。

したがって、人口密度と犬・猫の殺処分数は、ある程度、比例しているが、各地方自治体の取り組みや動物保護団体やボランティアなどの活動に差があることが推測される

 

そこで、平成23年度の都道府県別の殺処分率をみていく。

 
よしあきのブログ-犬猫殺処分率

 

上位、下位にあがっている県が殺処分数の場合とは異なり、人口の多さ(人口密度)と殺処分率は関係ないことが分かる。

各地方自治体の取り組み、方針の違いがここからうかがえる。

最も殺処分率が高いのは青森県で、香川県、高知県と続き、ワースト5の中に四国の3県が入っている。

 

ここで忘れてはならないのは、殺処分されるということは、その前に収容されているということである。

殺処分に関するデータは、各地方自治体や動物保護団体、ボランティアの力量によって左右される側面がある。

殺処分の前の段階、つまり、捨て犬や野良猫がどれだけ収容されているかが、その地域の飼い主のモラルの高さ低さを表しているといえよう。

そこで、各都道府県の人口10万人あたりの犬・猫の収容数をみる。

 
よしあきのブログ-人口10万人当たりの犬猫収容数

 

最も犬・猫が人口の割合から収容されていないのは東京都であり、上位5県のうち、東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府の4県が大都市という結果である。

この表の数字が少ないほど、犬・猫を捨てたり、途中で飼育を放棄し、引き取りを要請したりする飼い主が少ないことになる。

これまでの調査結果を考察すると、都市部に住む飼い主ほど、ペットを飼うことに対する意識、モラルが高い傾向にあるといえる。

 

とはいえ、身勝手な理由で自治体に引き取りを要請する飼い主、途中で飼育を放棄して失踪するブリーダーの存在が社会問題だったことには違いない。

 

これまで散々、言われ続けてきたことだが、人間が生物の頂点だという思い上がりが自然を破壊し、動植物を身勝手に扱い、地球を「所有」している。

私はそういう人間の所業を「必要悪」という言葉で片づけたくはない。

 

 

【引用資料】

NPO法人 地球生物会議ALIVE ホームページ

http://www.alive-net.net/index.html  

全国動物行政アンケート調査報告(平成23年度) (←リンクあり)

 


よしあきのブログ-改正動物愛護法