ドキュメンタリー映画『犬と猫と人間と』 (←リンクあり) 飯田基晴監督に聞く
【足長おばあちゃんに頼まれて】
「あなたに映画を撮ってほしいの。製作費はこちらで用意します」
デビュー作を見に来た観客から、突然こんな申し出を受けた。
初対面のおばあちゃん。
「捨て猫を長年世話してきたけれど、もう限界。動物愛護について、誰でもわかる映画を作ってほしい」と言う。
夢のような話だった。
デビュー作「あしがらさん」はホームレスのドキュメンタリーだし、自身も特に動物好きではない。
だがおばあちゃんは真剣だった。
愛護団体に寄付するより映画で広く伝えたい、家族も了解済みだという。
「でも、なぜ僕に?」。
戸惑う監督にぴしゃり、「私は人を見る目はある方なのよ」。
手探りの取材が始まった。関連書籍を読みあさり、施設や愛護団体に通った。
毎年30万頭以上の犬猫が殺処分される一方で、動物とのふれあいを売り物にするビジネスは急成長。
動物に癒やしを求め、いらなくなったら放棄する。動物の問題は人間社会の問題だと気がついた。
「保護施設の関係者が、すぐそばの老犬に目もくれず、若い犬の譲渡先を相談する光景に
『あしがらさん』のホームレスの姿が重なった。救いたくても救えない。だから目を合わせられない。前作と共通する命の問題がここにもあると気づいた」
130時間の記録を、悩みに悩んで削った118分の『犬と猫と人間と』を公開。
おばあちゃんとの出会いから5年半、約束を果たせる日がやっと来る。
『朝日新聞』 2009年9月14日付
ドキュメンタリー映画『犬と猫と人間と』のDVDをレンタルして観た。
犬と猫の殺処分や引き取って保護する団体などを取材している映画で、大の犬好きの自分にとって、その辛い現実に悲しみよりむしろ、怒りを感じた。
「なんで、こんなかわいい犬が殺されなければならないのか!?」という思いに、自分が昔、一緒に暮らしていた柴犬(迷い犬だった)との蜜月が重なった。
同じ迷い犬でも、真逆の展開にそれぞれ運命づけられてしまう。
そしてそれは、犬のせいではなく、人間の無責任さによるものにほかならない。
すべての飼い主が犬と猫の「命」に対して、責任をもって一緒に暮らしたら、殺処分という悲劇は起こらない。
でも、映画の中でボランティア団体の人は、「殺処分が減ることはあっても、ゼロになることはない」と言ってた。
確かに、「ゼロ」になるというのは幻想だろうとは自分も思う。
しかし、「ゼロ」を目指さないと、減ることはないだろう。
この映画をとおして、改めて人間の「エゴ」を強く感じた。
そして、人間はほかの動物を支配する存在だという傲慢さに憤りと怒りと哀しさを感じる。
人間は、他の動物や自然と共存するのが本来の姿。
自然や他の動物を支配していくと、やがて、強烈な「しっぺ返し」がくるだろう。
もう既に「しっぺ返し」がきたところもあるだろう。
動物を大切にする気持ちが、単なる「愛護ブーム」で終わってほしくない。
「因果応報」という言葉があるが、身勝手なエゴで動物をぞんざいに扱ったら、いつか必ず、その本人に報いが返ってくる。
良いことも、悪いことも、自分がしたことが返ってくるのは真理だ。
他の命や自然に敬意を払い、感謝の気持ちを忘れてはいけない。
敬意・尊重・感謝の気持ちをもたずにいると、自分も同じ扱いを受ける。
人生の憂き目に遭いたくなければ、他の命にも誠実でいないといけない。
『犬と猫と人間と』(2009年)予告編