特別支援学校の寄宿舎を見直す動きは、全国で相次いでいる。
多くの自治体は利用者数の減少などを理由としているが、「支出削減のターゲットにされている」と指摘する専門家もいる。
長崎県は平成18年度に佐世保ろう学校の寄宿舎を廃止して分校化、規模を縮小した。
愛媛県も平成21年度に宇和ろう学校と宇和養護学校を組織統合。
これに伴い、宇和ろう学校の寄宿舎を廃止し、宇和養護学校に統合する予定だ。
訴訟に発展したケースもある。大阪市は昨年の9月議会で、在籍者の減少などを理由に貝塚養護学校の今年度末での廃校を決定。
寄宿舎も閉鎖するとしたが、生徒らが大阪市を相手取り、廃止取り消しを求める訴えを大阪地裁に起こした。
寄宿舎は昭和49年の学校教育法改正で、特別支援学校への併設が義務づけられた。
近年、統廃合が各地で議論に上がる背景について、福岡教育大学教育学部の猪狩恵美子教授は「各自治体の財政が厳しくなる中で、寄宿舎がターゲットになっているのでは」と推測する。
文科省によると、特別支援学校の児童・生徒のうち寄宿舎利用者は平成15年度が10.7%だったのに対し、19年度は9.5%と減少。
定員割れを起こしている寄宿舎も多いが、猪狩教授は「利用者が定員に満たない寄宿舎でも指導員の人手が足りず、入舎を制限しているところもある。開設時から一度も見直されていない定員を基準に議論をするのはおかしい」と、自治体が廃止理由に掲げる「利用者数減」に、疑問符をつける。
『産経新聞』 2009年1月7日付