◇ 質問

大学に通っている20歳の女性です。私は、半年前から自律神経失調症および不安神経症の治療を、地元の心療内科で行っています。

現在は薬も処方してもらっており、症状も半年前に比べると、軽減されてきたのですが、やはり完治とまではいきません。ストレスや疲労がこの症状には関係していると伺ったのですが、自分としては、特にこれといって強いストレスを感じた覚えもなく、自分ではどうしたらよいのか、正直よく分からなくて困っております。
ただ、この症状が出る前後を比較して何が変わったか考えてみると、“体重の増加”でした。もともとぽっちゃり体型だったのですが、ここ1年でさらに体重が増え、身長156cmで54kgだった体重が63kgまで増えました。自律神経の乱れと肥満は関係があるのでしょうか?

また、肥満を解消することで快方に向かうというケースもあり得るのでしょうか?

 

◇ 回答

自律神経失調症不安神経症の治療を半年間行い、症状が軽減してきているとのことで、治療は順調なようです。まだ完治には至っていないとのことですが、精神症状を含む疾患の治療は1年以上かかることも少なくありません。

もし症状の改善がゆっくりだとしても、あせらず根気よく治療を続けることが必要です。そして治療で分からないことが出てきたら、主治医に質問をして、疑問点を残したまま治療を続けないことが大事です。自律神経失調症や不安神経症は、質問者の方が記述していますとおり、ストレスや疲労が多かれ少なかれ関係していることがほとんどです。

自律神経の機能は多岐に渡りますが、生命を維持するために重要な役割を担っています。もし身体がストレスや疲労に直面した時には、自律神経が働いて、身体を正常に保つようにしています。

ところが、ストレスや疲労が大きすぎると、自律神経の調節だけでは身体を正常に保つことができず、自律神経失調症や不安神経症といった状態に陥ってしまいます。

質問者の方は、強いストレスを感じた覚えがないと書かれていますが、ストレスが身体にかかっていても、その自覚症状が少ない場合もあります。特に、努力家の人によく見られるのですが、ストレスや疲労があっても、頑張ってその場を乗り切ってしまう場合があります。

そこで十分な休息をとることができれば身体も回復するのですが、さらに頑張りすぎて限度を超えてしまうと、自律神経失調症のように身体のバランスを崩してしまうことになります。

ぜひ頑張りすぎに注意してみてください。また、自律神経の乱れと肥満についてですが、ストレスがたまって自律神経の乱れをきたすと、それを調節するように身体が働いて、過食につながることはあります。

その結果、体重の増加につながり、それがさらに身体への負担を増加させ、またストレスが増えていくという悪循環に陥ってしまうことがあります。

このような場合の対処としては、適切なストレスの除去が必要ですが、肥満の解消のために適度な運動をするなど、体重をコントロールすること自体がストレスを軽減させることもありますので、そういう意味では肥満の解消が自律神経の乱れを治すことにつながる場合もあるでしょう。

しかし、過度なダイエットなどで逆にストレスを増大させてしまっては、さらに状態は悪化しますので注意が必要です。

 

回答者:井上幹紀親(日本大学医学部附属板橋病院 心療内科)

 

『毎日新聞』 2009年2月23日付