水頭症の二男(4)を手術で救った小児脳神経外科医を漫画で描こうと、札幌市でデザイン制作会社を営む田中宏明さん(34)が執筆に取り組んでいる。年内にも第1巻を発刊予定。田中さんは「子どもたちに読んでもらって、医師を目指してくれれば」と願っている。

 

 異変は二男が生後1カ月に起きた。頭部が急に膨らんで田中さんは慌てて病院に駆け込んだ。診断は、頭の中に髄液が過剰にたまる「水頭症」。エックス線写真を見て愕然とした。田中さんは専門医を探し、当時、北海道小樽市の病院に勤務していた高橋義男医師(58)を知った。

診察室の壁一面には笑顔を見せている子どもの患者の写真。「奇跡があるかもしれない」と高橋医師に二男の命を預けようと決めた。手術中に妻は心配のあまり倒れたが、手術は無事成功。二男は元気に幼稚園に通っている。

 

 田中さんは漫画の「ちばてつや賞」の準大賞を受けた経験があった。漫画家を目指したこともあったが、あきらめていた。そのことを知った高橋医師が患者の親たちの会報に「4こま漫画を描いてみないか」と勧めてくれた。

「医者っぽくない、人間味のあるお父さんのような高橋医師を描いて、恩返ししたい」

医学関係の資料を読み込み、高橋医師とは深夜まで打ち合わせをすることも。タイトルは高橋医師の名前から「義男の空」に決めた。子どもたちを治療する様子を盛り込みつつ、医師になるまでの生い立ちをたどる予定。

 

日本小児神経外科学会によると、国内の小児脳神経外科の常勤専門医は20~30人しかいないという。

現在、とまこまい脳神経外科の小児脳神経外科部長を務める高橋医師は「漫画を通して、子どもの患者の将来まで考えて治療する医師が出てきてほしい」と期待を寄せている。

 

『産経新聞』 2007年10月29日付

 

<引用は以上>

 

 素敵なエピソードですね。漫画でも、小説は奇なりで実話というところに説得力があると思います。

水頭症は脳の髄液を他に逃がすシャントという手術があることを講義で少し習いましたが、小さい子供への手術でかなり難しいのではないでしょうか。

北海道出身で、後に漫画家になったという共通点で、モンキーパンチさんを思い出しました。言わずと知れた「ルパン三世」の作者です。

田中さんの作品もヒットするといいな。

 

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