難病を抱えながら箱根駅伝を走った選手がいる。

「水頭症」を患う日体大の石谷慶一郎選手(2年)は3日、6区に出場し箱根の山下りで区間5位の快走を演じた。

「水頭症」は脳内に過度の髄液がたまる病気。

 

石谷選手は、生後2か月で体内に管を埋め込み、液を頭部から腹部へ流す手術を受けた。日常生活に支障はなく、サッカー以外は自由に運動に取り組んできた。

中学から陸上を始め、神奈川・藤沢翔陵高3年で全国高校駅伝に参加。しかし、レース当日の朝、頭痛を感じ始め、少しずつ意識が薄れていった。生後から使い続けた管に、不具合が生じたためだった。

 

1区に予定したエースの急変でチームは棄権。石谷選手は管を取り換える手術を受けた。意識を取り戻した病床で、悔し涙を流したが、陸上をやめようとは考えなかった。

「この悔しさを大学で晴らそう」。目標を箱根駅伝に切り替えた。

 

3日の復路。石谷選手は初めての箱根駅伝で、標高差800m余りを駆け下りる6区に出場、区間賞を取った日大の選手に抜かれたものの、前を行く順大、東海大との差は詰めた。

しかし、「目標の区間5位以内は達成できたが、抜かれたので、また挑戦できれば」と納得はしていない。

その走りには「同じ病気の人が『こんな選手もいるんだな』と思って、少しでも元気になってくれれば」との思いが込められている。

首の左側に皮膚の下を通る管が浮き上がって見える。だが、病気を感じさせない笑顔で、石谷選手は次回大会での活躍を誓った。

 

『読売新聞』 2007年1月3日付

 

<引用は以上>

 

水頭症で溜まった髄液を脳室内から出す手術のことをシャントといいます。石谷選手の場合は、脳室腹腔短絡術(VP shunt)という術式です。

水頭症は、難病指定されていることからもわかるように、薬で治る疾患ではありません。また、脳実質が髄液で圧迫されるため、脳が萎縮するケースが多いです。

そのため、身体・精神遅滞を伴います。

知的障害だけでなく、体(特に下半身)も障がいが出るケースもあります。同じ知的障がいでも、自閉症、ダウン症、水頭症は、全く特性が違います。当然、福祉的・教育的支援のアプローチも異なります。

「その人に合う適切な支援」というのは、一人ひとり必ずどこか違います。「性格が人それぞれ違う+疾患や障がいの特性が違う」からです。そこが支援の一番難しいところではないかと、私は考えます。