高機能自閉症のある千葉市中央区、大巌寺小4年長嶋柊(とう)君(10)の絵本が先月、出版された。パソコンを使って描いた作品は、千葉市内のモノレールや街並みをモチーフにし、仮想の街と住人たちを表現している。都内の画廊喫茶で展示したところ、ユニークな色彩や世界観が評判になり、出版社の目に留まった。

 

4月には千葉市中央区の「Qiball(きぼーる)」で展示会を開く。 柊君が描いた仮想都市『しんくやくしょのまち』には、宙返りもできる懸垂型モノレールの「しんくやくしょモノレール」、困った顔をした京葉線「ふにゃくん」などの電車やロボットが登場。ツアーとして街をまわる話だ。 

 

先月出版された絵本「しんくやくしょモノレール」の表紙

 

よしあきのブログ-しんくやくしょモノレール 

 

 柊君は3歳のころ、高機能自閉症と診断された。コミュニケーション能力が遅れるなどの症状がある自閉症のなかでも、知的に明らかな遅れがない場合を言う。
柊君は相手の反応を気に掛けずに話しつづけたり、学校の勉強が遅れがちになることもある。2,3年生の間は授業に母親のみちるさん(40)が付き添った。


一方で、興味を持ったことには熱中するという。 柊君は幼稚園のころから毎日絵日記を書いたり、パソコンで絵を描いたりしてきた。はじめは筆圧が弱くて、両親が下絵を書いても、色をうまくぬれなかったが、徐々に上達。小学2年のころ、「しんくやくしょ」の世界を描き始めた。お気に入りの中央区役所の建物やモノレールが出発点となり、次々とキャラクターが増えた。


みちるさんの知り合いのつてで、絵を都内の画廊喫茶に展示したところ、コピーライターの國分紘子さん(70)が「色彩がおもしろくて、見たことがない世界。多くの人に見てもらいたい」と出版社に紹介。その後、08年夏には千代田区役所で展示会も開いた。

みちるさんは「個展などで絵を見ていただき、柊は自信がついた。この作品を通して、自閉症のことについても知って欲しい」と話す。


絵本は24ページ、945円(税込み)売り上げの一部は日本自閉症協会に寄付される。
問い合わせは「じゃこめてい出版」(03-3261-7668)
展示会は4月4日~10日、中央区の施設「きぼーる」で。

 

『朝日新聞』 2009年2月15日付