「発達障害」について、日本児童青年精神医学会理事長の

市川宏伸さん(東京都立梅ヶ丘病院院長)とのQ&Aです。

 

――発達障がいとは、どのようなものですか。

対人関係が築きにくい広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群)や、

落ち着きがない注意欠陥・多動性障害(ADHD)、

読み書きなど特定の事が困難な学習障害など、

脳機能の障害が原因で低年齢から出るものを言います。

言葉の遅れがない場合も多く、単に「わがまま」と誤解されることもあります。

 

――病気か、性格か、境界はあるのでしょうか。

単純な線引きはできません。

対人関係や学校生活に支障が出る場合に、対応を考えます。

障害かどうかの診断は、子供の特徴を理解しやすく整理するためのものと考えてください。

 

――どこに相談したら良いですか。

医療機関は、児童精神科か小児神経科などが専門です。

子供が病院に行くのを嫌がる場合は、まず親だけで相談してみて下さい。

2005年に「発達障害者支援法」が施行され、

情報提供や就労支援などをする発達障害者支援センターの整備が、

都道府県などに実質的に義務づけられました。

また、近くに児童相談所や教育相談所があれば、

そこでも医療や療育(治療教育)機関を紹介してくれると思います。

学校の養護教諭に相談するのもよいでしょう。

当事者団体の集まり、日本発達障害ネットワークでも情報交換できます。

 

――どんな対処法、治療法があるのでしょうか。

障害の種類や程度に応じた療育を受けることで、生活上の能力や学力を伸ばせます。

発達障害児の教育に詳しい教師のいる特別支援学校(学級)のほか、

専門的な心理士のいる民間の療育機関もあります。

ADHDやチックなどの症状緩和には、飲み薬を用いることもあります。

 

――病院に通わなくてはいけませんか。

だれもが通院が必要なわけではありません。

生活環境の工夫で問題が解決できる場合もあります。

口だけではなく、カードなどを使って目で見てわかるように教えると、理解しやすくなる子もいます。

チックでは、気にしすぎないのが最良の策という面もあります。

 

――親や周囲は、どうしたらよいでしょうか。

周囲に迷惑がかかるような行動が改善しなくても、

子供に対し、感情的にくどくど怒るのは避けたいものです。

「自分はできない子」と劣等感を抱き、不登校やひきこもりになる可能性もあります。

注意する時には「~してはダメ」と禁止する言い方よりも、

「~すると良いね」と言った方が前向きになれます。

注意は簡潔にし、少しでも良くなったら、ほめてほしいと思います。

 

『読売新聞』2009127日付

 

毎日の生活の中で、感情的に怒らないでいるのは難しい気がします。

ですが、私が読んだ本に、

「一般の教育現場では不適切な行動は、まずやめさせることから始めるが、

療育では、まずその行動を受け入れ、そこから行動の原因・背景(こころの動き)を考えていく。」

とありました。

「こっちの方がいいよ~。」って、適切な行動をうながすのがいいと思います。

実際、日々の生活でイライラもするでしょうし、言うほど簡単ではないと思いますが…。