「発達障害者支援法」の施行(2005年4月)から、3年がたちました。

これまで障害者福祉のすきまにあった発達障害を支援の対象に位置づけ、幼少期から青・壮年期、老年期までの各年代を通して継続的な援助を行うのが法の目的です。

3年間の成果と課題を踏まえ、法の見直しが検討されています。

発達障害は、先天的な脳の機能障害であり、自閉症や学習障害などがあります。

この法律により、都道府県や政令指定都市に「発達障害者支援センター」設置が実質的に義務付けられました。

これまで福祉、医療、教育の各分野でばらばらに行われていた施策をつなぐ体制作りが進められています。一方、様々な課題も浮かび上がっています。

その一つが、各自治体の取り組みに格差が生じていることです。

例えば、「個別支援計画」の作成。各分野の専門家が連携して、一人ひとりの個性に応じて作成するもので、生涯にわたる重要な情報になります。

しかし、その実現に関しては、自治体間でばらつきが見られます。

相談を受けた件数が極端に少ない自治体や、職員の研修を実施していない自治体もあります。

格差の背景には、専門医の偏在などが指摘できます。

また、学齢期に比べ、成年期以降の支援の立ち遅れが目立ちます。

2007年度に全国のセンターに寄せられた相談の約3割は「19歳以上」で、この2年間で約7.4ポイント増えました。

当事者団体などで構成する「日本発達障害ネットワーク」の調査にも、就労や自立へのサポートを求める声が多数寄せられています。

就職後に障害に気づく人も多く、職場でトラブルを抱え、引きこもる例も目立ちます。

成年期の様々な困難に対応できる手法の開発が急がれます。

家族をどう支えるかも重要な課題です。

我が子の障害に直面した親たちは葛藤を抱え、現実を受け入れられないケースも少なくありません。

孤立を防ぎながら、早期の対応につなげる仕組みづくりが必要です。

具体的には、経験のある親が悩んでいる親の相談相手になる「ピア・カウンセリング」

などが考えられます。

我が国の発達障害者支援は始まったばかり。

各省庁や自治体、支援団体、それぞれの立場を超えた連携が求められます。

 

『読売新聞』 2009年1月8日付

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この記事を読んだ私の感想を述べます。

生涯を通じて、継続的で、一貫した支援を行うためにできた法律ですが、

あまりにも地域格差が大きいのが実情ですが、法律である以上、国家が地域格差を

生まないように、始めからもっと準備を整えてから施行すべきだったように思います。

いったん出来てしまった地域格差を是正するのは大変ではないでしょうか?

また、医療と福祉は厚生労働省の管轄で、教育は文部科学省の管轄です。

この2つの省庁の連携が、官僚どうしで、どれだけうまく連携できるかが

ポイントになってくると思います。

地域格差を小さくし、支援のあり方を全国的に標準化し、他の地域に引っ越しても、

これまでと同じ支援が受けられるようにしなければなりません。

記事にもあるように、大人になってから自分が発達障害だとわかるケースもあります。

そういう大人のための相談システムの確立も重要です。

とはいえ、発達障害は「早期発見・早期療育」が一番です。

乳幼児の時点で発見できるような健診の体制づくりも必要です。

発達障害に関する専門知識のある支援員の育成をさらに強化して、

医療・福祉・教育の各分野に配置してこそ、この法律が本物になると私は考えます。