「聴導犬」をご存じですか?

 

聴覚障害者の「耳」代わりとなって、日常生活をサポートする犬です。

盲導犬や介助犬と同様、公共施設にも同伴できますが、日本国内にわずか19頭。盲導犬が1000頭いることに比べて、圧倒的に少ないのが現状です。

障害者にとって、まさに「支え」になってくれる盲導犬・介助犬・聴導犬は、「身体障害者補助犬法」で規定されていますが、まだまだ認知度、犬の数ともに足りません。

 

聴導犬は、使用者が必要とする音には、「24時間」いつでも反応しなければならない。無限に存在する音の中から、特定の音に反応したらご褒美を与え、必要のない音に反応してもご褒美をあげない、などを繰り返して、必要な音を自ら判断できるように訓練していきます。

 

こんなに役立つ聴導犬がなかなか増えないのには、理由があります。まず、聴導犬にするのに、時間も手間もかかることです。聴導犬は欧米と同じように、主に捨て犬から育てられています。盲導犬や介助犬とは違い、聴導犬は大型犬である必要はなく、血統も重視されません。「音を仲間に伝える」ことは、犬にとって自然に行う行動です。

 

現在活躍している聴導犬は、飼い主が見つからずに協会が引き取った犬です。

「私たちの活動は、『捨て犬や捨て猫を処分しているイメージを払拭したい』という、保健所の職員さんの熱意に押されて始まりました。動物福祉も、聴導犬育成の使命の一つです」と協会の会長は話しています。

 

日本では、殺処分される犬は年間で約11万頭に及びます。

同協会のメンバーで、動物愛護センターや一般の動物保護団体に足を運び、まず聴導犬の候補犬を選びます。その際、「抱かれることを嫌がらないか」「犬に対する攻撃性」など44項目にわたって、適性をチェックするそうです。

候補犬は生後10か月ぐらいまでは子犬育てのボランティアの家で、人間との生活になじむよう愛情たっぷりに育てられ、その後、聴導犬用訓練に入ります。4~6か月間にわたる訓練段階でも、聴導犬としての適性テストを十数回も繰り返します。

ですが、聴導犬としてデビューできる犬は、600頭に1頭ほどしかいません。

 

捨て犬は、「聴導犬」という新しい人生を得、聴覚障害者は社会参加のきっかけをつかむ。聴導犬と暮らすことは、双方が「希望の音」を聞くことになるのではないでしょうか?