監督:ガリー・キーン アンドリュー・マコーネル
パレスチナ・ガザ地区の日常を捉えたドキュメンタリー。戦争のイメージが強いガザ地区だが、地中海に面する同地区は温暖で、美しいビーチには老若男女が訪れ、若者たちはサーフィンに興じる。一方、東京23区の6割ほどの広さに約200万人が暮らしており、多くが貧困にあえいでいる。イスラエルは2007年以降は物資や人の移動も制限し、同地区は「天井のない監獄」とも呼ばれる。現実逃避するためにチェロを演奏する19歳のカルマは、国際法や政治学を学ぶため海外留学を考えている。14歳のアフマドの夢は、大きな漁船の船長になって兄弟たちと一緒に漁をすることだ。平和と普通の生活を夢見ながら、日常を強く生きようとする人々の姿を映し出す。
「未来がない」と嘆く若者がたくさん登場し、切なくなった。平和な国の同世代の若者はやりたいことを見つけ、それに向かって一生懸命頑張ることができる。でも彼らは限られた中で生きるしかない。イスラエルが建国されてから状況はどんどん悪化し、この先明るい未来が見通せず、絶望的になってしまう時もあるだろう。そんななか、毎日を一生懸命生きてへこたれない人々を見ていると勇気をもらえる。漁師になりたいと話す少年、チェロを弾いて心を落ち着かせる少女…。ごくごく普通の中東の国の風景にも見える。
でも、穏やかな日常は、イスラエルの攻撃で一瞬にして消えてしまうこともある。40人の子供がいるお父さんは爆撃で子供を3人を失った。こんな状況が続いていたら、パレスチナの人々はイスラエルを憎む以外の手立てがなくなってしまう。そうなったら、平和は絶対に訪れない。ガザを実行支配するハマスを憎んでいるパレスチナの人々もいる。逆にイスラエルの攻撃をおかしいと訴えるイスラエル人もいる。だけど、大多数の声にかき消されてしまうんだろうな。ハマスによる攻撃・誘拐事件で、ガザは今大変なことになっている。この映画に登場した人々は無事でいるのか。それが気になった。
☆☆☆(T)