監督:ジェイク・パルトロウ

出演:ノアム・オヴァディア ツァヒ・グラッド

 

 ナチス戦犯アドルフ・アイヒマンの処刑の舞台裏を描いたヒューマンドラマ。親衛隊中佐としてユダヤ人大量虐殺に関与したアイヒマンは終戦後、イスラエル諜報特務庁に捕らえられ、1961年12月に死刑判決を受ける。処刑は62年5月31日から6月1日の真夜中に執行されることになったが、イスラエルには火葬の風習がないため、秘密裏に遺体用の焼却炉が作られた。焼却炉を作る工場の人々や、そこで働く13歳の少年、アイヒマンを担当した刑務官、ホロコーストの生存者である警察官らの姿を通し、アイヒマン最期の舞台裏を描き出す。

 

 ナチスの高官だったアイヒマンの処刑に関わった人々の群像劇。アイヒマンはほとんど登場しない。彼の遺体を火葬するための焼却炉を作ることになった工場で働く少年、刑務官、アイヒマンを尋問した捜査官がどのように「その日」を迎えたのかを描く。これは実話を元にしているの?それとも完全なフィクションなの?パルトロウ監督は「焼却炉を作った工場で働いていた」と証言する男性に会った、と話しているからその部分は実話なのかもね。アイヒマンの存在は当時のイスラエルに大きな緊張感をもたらしていたことが分かる。そりゃ、そうだよね。自分たちの同胞を大量殺戮した張本人だもんね。自分たちの手でアイヒマンに裁きを与えるのは、高揚感もあったかもしれない。

 

 私たちには分かりにくいけど、当時のイスラエルでは、同じユダヤ人でも英委任統治領時代にパレスチナに入植した、民族意識が高いとされる人々、ホロコーストを生き延びた人々、中東系のユダヤ人と3種類のユダヤ人がいて、差別意識も強かったみたい。その辺を知っていたらもっと「なるほどー」って思えたかもしれない。

☆☆☆(T)