監督:エレガンス・ブラットン

出演:ジェレミー・ポープ ラウル・カスティーヨ

 

 ゲイであることから母に捨てられた青年が、海兵隊に入隊し自らのアイデンティティを貫こうとする姿を描いた。本作が長編デビューとなるエレガンス・ブラットン監督自身の半生に基づいている。イラク戦争が長期化していた2005年のアメリカ。エリス・フレンチは母に見捨てられ、16歳から10年間、ホームレスとして生きてきた。自身の存在意義を求めて海兵隊に入隊するが、強烈なしごきを受け、さらにゲイであることが知られて激しい差別を受ける。孤立を恐れず、同時に決して他者を見限らない彼の姿勢は、周囲の人々の意識を徐々に変化させていく。

 ゲイであることを理由に母親から縁を切られてしまったエリス。居場所がない彼は海兵隊に志願する。一人で生きて行くためでもあり、自分の居場所を作りたかったんだろうし、海兵隊員になれればエリートとみなされ母親に振り向いてもらえると考えたのかも。訓練中、ゲイであることが発覚してしまい、あからさまに攻撃してきたり、距離を置いたりした仲間もいたが、変わらず励ましてくれた仲間や親身に相談にのってくれる教官もいた。入隊の時に全員に「お前はゲイか?」と聞く場面があった。全員「ノー」と答えるけど、アメリカの軍隊はゲイなしでは成り立たないということも上官は重々承知している。なんか矛盾を感じた。変化する社会に軍隊は追いついてないんじゃない?

 厳しい訓練を乗り越え、無事海兵隊員になったエリス。母親も当初は祝福していたけど、海兵隊員になればストレートになると信じていたみたい。こんな化石のような考え方の人、年配の人には多いんだろう。あと、経験なクリスチャンにも多そう。キリスト教だけじゃないけど、伝統的な宗教は王政などの圧政に苦しむ人々に受け入れられて広がったから、人間が生きるか死ぬかっていう時代には多くの人々に安寧をもたらしたとは思う。でも、時代の変化に対応できてないと思う。当たり前だよね、創始者が亡くなっているんだから。後世の人が想像で解釈するしかない。その想像力がないと、宗教はかえって人を苦しめることになるんじゃないか、と感じた。

 このお話は監督の実体験に基づいているらしい。居場所を見つけられた幸福と、最後まで理解してくれなかった母親への複雑な思いが込められていた。
☆☆☆(T)