監督:オリヴィエ・ダアン

出演:エルザ・ジルベルスタイン レベッカ・マルデール

 

 女性初の欧州議会議長となったフランスの政治家シモーヌ・ヴェイユの人生を映画化。カトリックが多数を占め、男性議員ばかりのフランス国会で1974年、ヴェイユは圧倒的な反対意見をはねのけて中絶法を可決させる。1979年には女性初の欧州議会議長となり、「女性の権利委員会」を設置。女性のみならず、移民やエイズ患者、囚人など、弱者のために闘い続けた。


 フランスの女性政治家シモーヌ・ヴェイユの人生を描いた。アウシュビッツ強制収容所から生還し、法律家を目指し、治安判事をへて大臣、欧州議会の議長にまでなった人。彼女の一番の功績は人工妊娠中絶を合法化したヴェイユ法の成立だろう。私は勉強不足で知らなかったけど、「あのこと」を見て、当時は本当に大変だったんだなと思ったし、先進的なイメージがあるフランスもかなり保守的で女性の活躍は遅れていたんだとびっくりした。だから、この法案の成立に取り組んだ女性と言うことで興味深く見た。

 彼女は中絶問題だけでなく、刑務所の環境改善、女性の社会進出を後押しした。とにかくバイタリティがあるし、強い信念を持っている。その源になっているのはアウシュビッツでの体験なんだろうか。人間として扱われず、最愛の母を看取り、死を意識したことが彼女を強くしたのか。それとも、働きたかったのに専業主婦になった母親の姿を見てきたから自立して働くことにこだわったのか。映画は自伝を書いている老年のシモーヌが回想する形で進む。時系列じゃないからちょっと分かりにくく、彼女の人生を細切れにしてばらばらに見せられたような感じだった。もっと何か一つの出来事に焦点を当てるとか、濃淡をつけたほうが良かったのではないかな。彼女自身はすごい人だった、というのは分かった。
☆☆☆(T)