波紋 | 3代目大村屋

3代目大村屋

映画・ダンス・旅行を中心に、日々感じた事を…

監督・脚本:荻上直子

出演:筒井真理子 光石研

 

 震災、老々介護、新興宗教、障害者差別…、現代社会が抱える問題に翻弄される家族を描いた人間ドラマ。依子は新興宗教を信仰し、穏やかな日々を過ごしていた。ある日、十数年前に失踪した夫が突然、帰ってくる。がんになったので治療費を援助してほしいと言う。さらに息子は聴覚障害のある恋人を結婚相手として連れ帰り、パート先では理不尽な客に罵倒されるなど、うまくいかないことの連続。湧きあがってくる黒い感情を、宗教にすがることで必死に押さえつけようとする依子だったが…。

 

 ある日ふらっと出て行った夫が十数年後、突然戻ってくる。がんで余命わずかだからって、許されると思ったのかな。自分勝手だなー。しかも、亡くなった父親の遺産目当てって、最低~。夫が失踪してから始めたレジのバイト先でも嫌な年寄りの客がいる。息子は家を出てあまり寄りつかない。更年期障害も辛い。依子を取り巻く環境はかなりひどい。高額な水を売りつける変な宗教にすがってしまうのも分からなくもない。でも、依子は感情を押し殺して表面上は冷静を保っている。そうやって我慢することでさらに怒りが積もって、内側でふつふつと湧いているんじゃないかな。夫が死んだことで、その怒りがすーっと流れ出たような感じ。そしたら急にいろんなことがばからしくなったのかも。ここで初めて彼女は心身共に解放されたんじゃないだろうか。
☆☆☆(T)