監督:マリア・シュラーダー

出演:キャリー・マリガン ゾーイ・カザン

 

 大物映画プロデューサー、ワインスタインによる性的暴行を告発した2人の女性記者による回顧録を映画化。ニューヨーク・タイムズ紙の記者ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターは、ワインスタインの性的暴行について取材を始めるが、彼が何度も記事をもみ消してきたことを知る。被害女性の多くは示談に応じており、証言すれば訴えられるという恐怖や当時のトラウマによって声を上げられずにいた。取材対象から拒否され、ワインスタイン側からの妨害を受けながらも、真実を追い求めて奔走する。

 

 「スポットライト 世紀のスクープ」を思い出した。悪事を公表する、明るみに出すーー。ただ一つの目標に向かって、取材チームの誰一人として妥協したり、「やめよう」「無理だ」と言ったりしなかったことに感動した。強い信念を持って報道に携わっているのがカッコいい。このスクープから#Me too運動が大きなうねりとなって、セクハラや女性差別の問題が大きく議論された。調査報道という新聞の持ち味が生かされ、まだまだ新聞も捨てたもんじゃないと思わせてくれた報道だった。

 ワインスタインの場合、セクハラの域を超えてレイプ、強制わいせつという犯罪行為だった訳だけど、断り切れなかったり、周囲に話しても誰も何もしてくれなかったりした背景には、彼の映画業界での影響力が大きくものを言っている。映画業界は女性に限らず、ハラスメントの多い現場だと言われている。長時間労働やパワハラが当たり前、みたいな。業界全体として問題意識を持たないと人材がいなくなってしまう。こういった危機感から是枝裕和監督らが改革制度を訴えているけど、どこまで改善されるか。私たちが楽しく見ている映画が製作過程において、誰かの犠牲や涙のうえに出来上がっているとしたら寂しいもんね。
☆☆☆☆(T)