獄友 | 3代目大村屋

3代目大村屋

映画・ダンス・旅行を中心に、日々感じた事を…

監督:金聖雄
出演:石川一雄 袴田巌 桜井昌司 杉山卓男 菅家利和

 

 人生の多くの時間を刑務所の中で過ごし、互いを「獄友(ごくとも)」と呼び合う冤罪被害者たちにカメラを向けたドキュメンタリー。狭山事件の石川一雄さん、袴田事件の袴田巌さん、布川事件の桜井昌司さんと杉山卓男さん、足利事件の菅家利和さんの5人が、同じ痛みを抱える者として互いを支え合う様子や、獄中での出来事や出所後のそれぞれの人生を改めて語る姿を通し、奪われた時間の中で彼らが失ったもの、得たものは何か、そして司法の闇や人間の尊厳とは何かを描き出していく。

 

 金監督の作品は何本か見ている。やっぱり、同じつらい目に遭った者でしか分からない思いがあるのかもね。支援者や家族以外の人とはどんな風に接して、周囲からどんな風に接せられているのか分からないけど、ある意味、同志で、言葉に出さなくても互いの気持ちが分かるとか、気を遣わなくて済むとか、あるんだろうね。全員が「冤罪事件と闘う」元被告だけど、立場は少し違う。3人は再審で無罪になったけど、石川さんは再審開始もまだ。普段は明るく、優しい石川さんだけど、再審が始まるまで両親の墓参りには絶対に行かないと頑なに拒む場面や、桜井さんが「石川さんも再審無罪を勝ち取ってほしい」と話す場面を見ると、早く「全員」が汚名を晴らせるといいなと思った。それこそ、毒ぶどう酒事件の元被告は刑務所内で亡くなってしまったからね。袴田事件も、地裁が再審開始を決定したけど、検察が即時抗告しててどうなるか分からない。

 

 桜井さんは「逮捕されて刑務所に入って良かったと思っている」と話す。たくさんの人に支援されたことを例に挙げて、おかげで真人間になれたとも。でも、冤罪は絶対にあってはいけないと思う。たとえ、今が幸せでも失ったものは計り知れない。ただ、時間は戻せないからそうやって前向きに明るく生きていくって決めたんだろうなー。裁判員裁判や、取り調べの録画など、少しずつだけど、透明な司法制度に向けて進んでいると思いたい。
☆☆☆☆(T)