監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

出演:アデル・エネル ジェレミー・レニエ オリヴィエ・ボノー

 

 ある夜、診療受付時間を過ぎた診療所のドアベルが鳴るが、女医ジェニーはそのベルに応じなかった。しかし翌日、ドアベルを鳴らしたと思われる少女は遺体で見つかる。少女はなぜ診療所のドアホンを押し、助けを求めていたのか。少女の死は事故なのか、事件なのか。さまざまな疑問が渦巻く中、ジェニーは少女の身元を調べ始める。

 

 ジェニーは映画中、ほとんど笑わない。話の内容が殺人事件でサスペンス要素があるからだけど、きっと事件の前から患者に対してもそんなに愛想笑いを振りまくタイプじゃなかったんじゃないかな。冒頭、ドアベルを無視したあたりでは、患者本位の医者ではないのかと思った。でも、お話が進むにつれて、彼女は患者のことをよく考えているし、患者からの信頼も厚いことがわかってくる。自分がペラペラしゃべるよりは患者の話を聞くことに徹して、そして診断を下す感じ。だから、研修医の手前、強いところを見せたくて、無視するように言ってしまったのかな。

 
 結果、そのドアベルを押した少女は亡くなってしまい、ジェニーは自責の念にかられる。「もし、あの時ドアを開けていれば」ってね。開けなかった代償が命だなんて、命を救う医師としてはつらいところだよね。犯人は最後まで分からなかった。ジェニーも犯人探しというよりは、被害者の身元を明らかにして、身内の元に返したいと思っているからね。でも、これまで築いてきた患者との信頼関係がヒントになり、意外な形で(私にとってはね)犯人が判明し、ジェニーも危うくなる。ここらあたりはサスペンスモード全開ね。だけど、最後はやっぱり、ジェニーがこんこんと諭すことで犯人は出頭することにする。
 
 ジェニーは大病院からの誘いを断り、田舎町の小さな診療所で診察を続けていくことを決める。事件を通してジェニーは自分が目指すべき医師の姿というものが分かったんだよね、きっと。サスペンスとしては静かだったけど、いい映画だったわー。さすが、ダルデンヌ兄弟。
☆☆☆☆(T)