何年ぶりかで映画を観たので、感想を残しておこうと思います。
完全にネタバレですので、ご注意ください。
*****
予告編の噂などを聞いて
めっちゃ泣ける映画なのかと思っていましたが、
そんな事も無く
私にとっては
観終わって、大きなカタルシスがあるわけでもなく
全体を通してテーマを与えられるようなストーリーだったわけでもなく
ただ、
自分の中にいくつもの場面がじんわりと残る映画でした。
(この感覚、何かに似てるなぁと思ったら
村上春樹の「多崎つくると…」を読み終わった後の感覚と同じでした。
まぁ、
多崎は過去と向き合って、次郎は今と向き合っている
っていう決定的に大きな違いはありますが…)
観終わった後に、自分の中でどう処理するか
とても自由度の高いお話だと思います。
基本的には、美しかったなぁっていう印象です。
まず、
登場人物が皆、美しかったなぁ…と。
きっと色んな葛藤を抱きつつ、自分の夢に向かって真っ直ぐ進み続けた次郎も
そんな次郎を一番近くで、たぶん愛憎相半ばしながらも見続けていた本庄も
祝言の場に、凛と顔を上げて登場した菜穂子も
次郎と菜穂子を見守り続けた黒川さんご夫婦も
皆さん、芯があって美しかった。
なんだろうなぁ
ナウシカとか、パズーもそうだけど
次郎は狂気と紙一重のような一途さを持ってる。
そんな主人公を見守り、支え、力を貸す周囲の人々には
なんとも言えない温かさと心の広さ、芯の強さがある。
あと、今回の登場人物は皆色気があって美しかった。
黒川さんの奥さんは、ほんといい女だったし
祝言の際の菜穂子の匂い立つような美しさは言うまでも無く、
その後の初夜の誘い方も、抗い難い魅力があった。
次郎と本庄がタバコを吸うシーンも魅力的でした。
今ではもう見かけることは少なくなったけど
私が大学生ぐらいのころは、皆タバコを吸っていて
そのタバコのふかし方に、
それぞれの個性が出ていたものでした。
次郎のように親指と人差し指でつまむ人、
細く長く吹き出す人、
味わうように吸い込む人、
くるくると回転させるように灰を落とす人
などなど
思い出してもきりが無いくらい。
喫煙を推奨するつもりは無いけれど
タバコをくゆらす姿になんとも言えない色気を感じるのは
私だけではないと思うなぁ。
二人のくゆらし方にも、それぞれの性格が表れていて、
それぞれ魅力的でした。
人と人との繋がりって美しいなぁ…とも思いました。
本庄と次郎の友情は
本庄がほんと健気でめっちゃキュンときたし、
次郎と菜穂子の場面は、
身体を近づけた時の
周りの圧力が変わる瞬間とか、温度とか、胸がぎゅっとなる雰囲気とか、匂いとか
そういった感覚を思い起こさせるような雰囲気があって
素敵だなぁって思いました。
あと、
会社で遅くまで残って次郎のチームメンバーが勉強会をしてるシーン。
次郎が持つ大きく美しい夢を皆で共有して、わくわくして
それを実現する為にそれぞれのアイディアを出し合って
あぁでもない、こぅでもないと言い合ってる時間も
実際にそれを行動に移している時間も
ほんと愉しんでやってるんだろうなぁって思いました。
理科の実験で
1人で仮説を立てて実証するのも愉しいだろうけど
何人かの意見を合わせる事で
1人では見つけられなかったかもしれないゴールや道が見えたら
きっと、もっと愉しい。
この感覚は、人それぞれだと思いますが
私は、皆で一つの物を創りあげるって作業がやっぱり好きだなぁと思いました。
そして、人が生み出すモノって美しいなぁ…と思いました。
次郎の図面を初めて見た上司が、「キレイな線を描く」と褒めるシーンがあります。
私はもの造りの世界に居るのですが、
文字にそれぞれのクセや性格が表れるように、設計図の書き方、線の引き方にもその人が表れます。
CADを使うようになった現在でも
知らない人や知らない会社がひいた図面は理解するのに時間がかかることもあります。
でも、次郎の図面は
ぱっと見ただけで理解させる図面で、かつ美しい線だった。
あの台詞だけでも次郎が真剣に丁寧に仕事をしていることが解る
いい場面だと思いました。
また
次郎は、鯖の骨や、本庄が作った機体を見て美しいという感想を述べます。
真に実用的で、正しい造形は、美しい
自然の造形美はもちろんですが、
もの造りに携わる中で
実用的であるように、とことんまで考えつくされて計算された図面を基に、職人さんが丹精込めて創りあげたモノを見て
美しいなぁと見惚れることが多々あります。
見ただけで、良いモノだって解る。
少しでも手を抜かれていたりすると途端に消えてしまう何かがあるんです。
次郎がほれぼれと見惚れる気持ち、わかるなぁと思いました。
ん~、
こうして改めて言葉にしてみれば
私が美しいと感じたものは
人そのものや、
その人と人との繋がり
真剣に仕事に向き合った結果生まれるもの
私たちが日々を生きる中にある美しさだという気がしてきました。
次郎が、自らの夢を追い続ける為に払った犠牲や背負った業を描き出せば
前が見えないほど
重く、黒く、深く、険しいものになるのだろうけど
でも敢えて、これらの
誰の日常にも存在し得るような美しいものだけを散りばめて
それでも生きなければならないのだ
と語るこの映画に何を想うのか
それは
観た人それぞれの人生の深さによって変わるのかなって思います。