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ことのは

本を読んで感じたことを、素直に書いていきたいと思っています。

※多くの場合、ネタバレを含むことになるだろうと思います。
悪しからずご了承くださいますよう、よろしくお願いいたします。


久しぶりに「出逢えて良かった」と思った本。

超大型書店をふらふらと散策していた時にふっと眼に入り、
すぐにカゴに入れたんですけど
あのお互いのフィーリングが合うっていう感覚は
実際に書店で本と向き合わないと感じられないですよね。

佳き出逢いに気付けて満足。




臨床心理学者の河合隼雄さんと
記者からノンフィクション作家になられた柳田邦男さんとの対談集。


河合さんが心を専門とされているのはもちろんですが
柳田さんも心というものに対して、とても深く深く感じ、考えられている方でした。

奥様が事故をきっかけに心を病まれ
ご長男は病気の後遺症に悩まされていて
次男さんが深く自分について考え抜かれた結果自殺
しかも、
その際に脳死状態となり11日間を病院で過ごされたそうなんです。

ご家族との関係、その際に起きた出来事や感じられたことから逃げずに
とことん考え、感じ続けられていて
スゴい方だなと思いました。




そんなお二人の対談は
ともすれば、悪い意味での「スピリチュアル」な話として
異端視されたり、胡散臭いと思われる可能性を孕んだ
大変興味深いお話ばかりでした。



科学技術のように
「三人称」や「普遍的真実」だけでは説明できない事柄がある。
それらは
「二人称」「一人称」の関係性から生まれ
繰り返し生じるものではない「瞬間的真実」である。


死を意識して生きる
死後の世界を生きることを意識して生きる
人は学ぶべき事を学びきってから、やるべき事をやりきってから死を迎える



こういったテーマが何度も何度も語られていて
そのお二人の実感のこもった言葉に触れて
思ったこと、考えたこと、感じたことを書き出せばキリがないほどですが


特に、この本に出逢えて良かったと思えたのは
柳田さんが脳死状態の息子さんと過ごされた11日間のお話を読んで

赦された

と感じたからでした。




私は数年間の介護を経て、今年の春に祖母を亡くしました。


その介護していた期間と
最後の病院での5日間

祖母の命が終わりそうになった瞬間が何度もあったのですが
病院で治療を施してもらったり、
私たちの声かけに祖母が応えてくれた事で
何度も祖母はコチラ側に帰ってきてくれました。


介護が苦しくて
何度も祖母の居ない日々を想像していたのに
実際に祖母が命を終えそうな時に
そのような行動をとる自分を偽善者だと汚く思いましたし

介護が必要な祖母の生は
祖母にとっては苦痛でしか無いのではないか

治療を受けさせた事も、呼びかけた事も
私たち家族のエゴなのではないか

そんな風に思う事がよくありました。


祖母の死後に書いたブログは 
まるで自分自身がさも祖母のために頑張っていたかのような
美しいフレームに飾られた話ばかりで

当時の私はそれを書かずには居られなかったのだけど

今読み返せば
自分を正当化しようと必死な私が見えてきます。




でも、
この対談でのお二人の話によって

そんな自分を赦してもらえたような気持ちになりました。

あの日々も
祖母と私との大切なコミュニケーション、
学びの時間であったのだと思えました。

そして、
その後、祖母と私との物語を紡ごうとしたことにも
意味があったのだと思えました。






*****


これ以降は、
私の心に響いた、また、赦されたと感じたお二人の言葉です。
実際には、
もっともっと長い文脈の中で読んでこそ意味があるのだと思いますが
特に響いた部分を記しておきたいと思います。





人格が破壊されるほどの痛みに堪える必要は全然ないと思うけれど、
苦痛をやわらげるということは、絶対的にいいことかどうかわからない

キューブラー=ロスは安楽死について
「不快だからという理由で安易に患者を安楽死に導いている。
これは患者が卒業する前に、最後の教訓を学ぶ機会を、
患者から奪っている事に気づいていないからだ」と書いている。
これは鋭い指摘ですね。



本人のリビングウィルがあって、
それを看取ろうとする家族が、二人称の立場から
このへんが旅立ちと別れのいちばんいい時期じゃないかという、
熟柿が落ちるような、そういう瞬間というのがくるんだろうと思う



人間というのは物語らないとわからない

息子の個人史、私の個人史、そして家族の歴史の中で、
文脈を探して物語をつくっていかないかぎり、
何の答えも得られないし、私自身が次の日から生きていけない

無数の無秩序な星の中からいくつかの主な星座をつないで星座をつくっていくように、
自分で自分の人生と家族の生き方について星座をつくらなきゃいけない。
それを必死になって考えました。




*****


あ、そっか
死に向かう者が相手でなくても

人と人とが、本当にしっかりと向かい合おうとした時



苦痛の中にも学ぶべき事があって、それは決して不幸な事などではなく

二人称の関係から生じる、その瞬間だけの真実があって

それぞれが、それぞれの文脈で、無秩序な出来事から物語を紡ぎ、
価値や意味を見出だそうとするのかもしれない



今、この文章を書いていてそんな風にも感じました。



これから先
読み返す度に、新しい事に気づける私で在りたいと思います。

そう思える本です。





心の深みへ/河合 隼雄
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