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ことのは

本を読んで感じたことを、素直に書いていきたいと思っています。

※多くの場合、ネタバレを含むことになるだろうと思います。
悪しからずご了承くださいますよう、よろしくお願いいたします。

赦しと癒しに満ちている作品です。

モーニングで不定期連載中の本編は今がクライマックスで
毎回、感動で涙が溢れます。



事故の後遺症で再起不能となってしまった天才ピアニスト阿字野は
音楽教師となって赴任した先で、問題児のカイと出逢います。

このカイも、神様から音楽の才能を与えられた少年でした。

紆余曲折を経て、カイは阿字野の弟子となり
ピアニストとして大きく成長する事で自分の境遇を変えようと決意します。


というところから始まるこの物語。
二人は支え合い与え合いながら、様々な困難を共に乗り越え
ついに今、ショパンコンクールのファイナルまでやってきました。



第211話のカイのモノローグで
“皆 何かを 抱えている”
という言葉が出てくるんですが

私の中では、この言葉が主題です。



皆、何かを抱えながら
なんとか前に進もうともがいて努力して、時には諦めてしまったりして

それでも
自分を理解されたい、自らを表現したい、何かを摑み取りたいと願って
ピアノを弾き続けるんです。

その結果
お互いに理解し合い、受け止めあい、与え合える存在に気付いて
自分の中にある“何か”を乗り越える力を得る。



ショパンコンクールに出場しているコンテスタントは
ピアノの才能を持っている事はもちろんですが、
抱えている “何か” も、とても大きくて重くて苦しい。


最大のライバルとして描かれているパン・ウェイなんて
ほんと、惨いほど。

世を憎み、生みの母を否定し、育ての父を恐れ呪って生きてきて、
その憎しみや怒り、哀しみを卓越した技術で表現して
彼はコンクールを勝ち上がってきました。

ところが
心の支えであった阿字野と会場で出逢えた事がきっかけとなり
彼の世界は活き活きと祝福に溢れた世界へと変わります。


その後の彼の音楽に溢れ出てくる想いは

感謝

感謝

感謝

そして、愛



きっとパン・ウェイは
そもそも変わりたかったんだと思います。

苦しくて、辛くて、しんどくて、もうこんな世界は嫌で
抜け出したくて、変わりたくて
そのきっかけをずっと求めていたんだと思う。

阿字野という存在が
パン・ウェイを認め、未来を祝福した事で
彼はそのきっかけを掴みます。


パンパンに膨らんだ風船が
小さな衝撃で割れてしまうように


自分を堅く堅く守る為に、哀しみや憎しみや怒りで心を覆っていた間に
見ないふりをして心の奥にしまい込んでいた感謝の気持ちや愛情が
それを機に溢れたように思えました。


苦しみもがいて、赦して認めて与えた先には、
やはり
感謝や愛があるのだと思いました。



これから
いよいよカイの演奏が始まります。

カイと阿字野の未来にどんな音が溢れているのか

愉しみで、待ち遠しくてたまりません。




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