名城ハーリー2024 | 風のブログ

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東京都墨田区から沖縄県糸満市名城へ移住し、
イヌたちとバイク、ヨットを楽しんでいます。
沖縄田舎暮らしをお届けします。
というか、自分のための備忘録です。

勇壮な海人(ウミンチュ)のまつり「ハーリー、ハーレー」

旧暦5月4日の「ユッカヌヒー」に、大漁と航海の安全を神に祈り爬龍船(はりゅうせん)競漕をする「ハーリー、ハーレー」とよぶ行事は沖縄各地にみられ、糸満市内では字糸満、字名城、字喜屋武でおこなわれている。

海人とは元来、漁法技術が卓越した糸満の漁師のことを指すという。

糸満、喜屋武は漁港内で行われるため、潮の干満による制限が少ないのだが、わが町名城には漁港がないため、当日の満潮時刻に合わせ、ビーチで開催される。戦後の昭和23年に復活したそうだ。

会場のビーチに砂を盛り上げガジュマルの枝を取り付けた竹竿にシマー(島酒=泡盛)を吊るす。

地域を後(クシ)ンティー、中(ナカ)ンティー、前(メー)ンティーに分け、3艘の手漕ぎサバニが360m沖に設置されたソー(棹)を往復し、速さを競う。糸満や喜屋武はゴールラインを早く切った船が勝者となるが、名城は異なる。

前述のようにビーチスタートなので、ゴールもビーチだ。このゴールシーンが特徴的で、減速することなく砂浜に乗り上げたサバニの船首にいる若者が勢いよく飛び降り、竿先にぶら下がるシマーを獲得した組が勝者となる。これはメインイベントの「御願(うがん)ハーリー」と呼ばれ、海の恵みに感謝し、よりいっそうの大漁と航海安全を祈願する神事だ。

この御願バーリーのあとは、地域の人々も参加できる「招待ハーリー」「職域ハーリー」「青年ハーリー」「小学生ハーリー」「年齢別ハーリー」「婦人ハーリー」「門中ハーリー」と様々な年齢、仲間で参加ができる。ただし、安全性を考慮し、御願ハーリーの半分の距離に設置されたソー(棹)を往復する。

 

 

この村の最大の行事に、今年はヨット仲間のケンクルーズ安谷屋憲さんと救助艇として参加した。

救助艇なので、沖合で待機し並走もできるので、砂浜から見るのと一味違う観戦ができた。

ソー(棹)を回る時にバランスを崩して船がひっくり返るのに備え、有事の際、救助に向かうという役目だが、今年は誰も転覆せず、幸い救助艇に仕事は発生しなかった。

一連の行事の終わりに、御願ハーリーの勝者である前(メー)ンティーを先頭に、着順で中(ナカ)ンティー、後(クシ)ンティーがこれに続く「上がいハーリー」で勝者を称える。

 

 

 

乗り手が懸命にエーク(櫂)を漕ぎ競い合う姿も勇ましくて良いが、勝者を先頭に海上にゆっくりと円を描き凱旋する姿も美しいものだ。

一連のハーリーが終わった頃合いを見計らい、僕らも救助艇で凱旋してみた(笑)。

 

 

名城は「なしろ」と読むが、その昔は「なぁぐすく」だったそうだ。

現在は高齢化が進む人口300人程度の小さな村だが、村史によるとかつては千人祭りを開くくらい人口が1,000人近くになったことがあるそうだ。ここに住むおじぃ・おばぁの子供たちが部落を出ているのが人口減少の主な理由だが、県外ならともかく意外と糸満の中心部に住んでいたりする。彼らたちがこのような行事のたびに帰ってきて伝統を維持してくれている。言い換えれば、移住者は少し入りづらい感覚もあるので、今回のような救助艇でサポートするような参加の仕方がしっくりくるように感じている。

従来から住んでいる人々は、便利な施設やものがほしいのだが、移住者はこのままを維持してほしいと相反する希望を持っているのだが、時が進みなんとなく融合していくのがいいんだろうね。

 

 

 

翌朝、犬たちとビーチへ散歩に行くと潮が満ちていたので、SUPを用意し、ハーリーが行われた海面を散歩した。

行事の準備は手伝えなかったので、6本のソー(棹)がどう固定されているのか見て見たかったのだ。

近寄ると岩盤に16mmの鉄筋が打ち込まれ、それを軸に竹竿が針金で固定されていた。この鉄筋は毎年流用しているのか、都度外しているのかは定かではないが、付近には使われていない漁綱やブイもあり、環境面・安全面からこれらを撤去する提案をした方が良いかななどと考えながらハーリー海面をあとにした。

 

 

南へ数百メートル移動するとウミガメに出逢えるエリアがある。

波打ち際の海水の透明度は風向きや干満により、日々濁っていたり澄んでいたりと変化するが、500mほど沖合に出ると澄んで透明なキレイな水面に変化する。名城ビーチはリーフエッジまで約1kmあるので沖合で波が割れているエッジを目印に半分くらいまで来ると、本来の美しい水質になる。大潮の干潮時はビーチからエッジまで歩いていけるので、枝サンゴは人に踏まれ、その姿はないのだが、折れたサンゴが波で削られ砂となりビーチに供給される。

これも長い目で見れば循環と思いたいが、釣り人が切った糸や針、ビーチで遊ぶ人たちが飛ばしたビニール袋、割れたガラス瓶、ペットボトルなどを拾いながら人間の自然に対する所業を感じ入る。

伝統文化も環境も、未来に残すために今の行動を決めたいね。