訳日本の神話・28
『スセリヒメ』    

 

 

 オホヤビコが示した根の国堅州国(ねのくにかたすくに)というのがよく分かりません。

 黄泉の国のまだ向こうという設定なっているので出雲のどこかなのでしょうが、取りあえずはスサノオがクシナダヒメと所帯を持ったところなのでしょう。

 オオナムチがたどり着いたところは、スサノオの宮殿です。

「すみませ~ん、木の国のオホヤビコの紹介でやってきましたオオナムチと言います、だれか居ませんかあ?」

 門の外から声をかけますと、なんとも可愛くて魅力的な女の子が出てきます。

 スセリヒメであります。

 スセリビメと書くことが多いのですが、ヒメを濁って発音するのは趣味に合いませんのでヒメとします。

 

 脱線しますが、古代において『女』には二通りの発音がありました。

 オミナとオウナであります。

 オミナは若い女性を指します。オウナは年配の女性を指します。

 オミナとは、なんとも優しい発音ですね。花の名前に『女郎花』がありますが読み方は『おみなえし』であります。ちかごろ自生のものは減ってきたようですが、昔はスミレのように日本の山谷にはふつうに繁茂していた可憐な草花だそうです。仲間に『男郎花(おとこえし)』というのがあることを発見して一人で喜んでいました(*^▽^*)。下の歌詞をご覧ください。

 

 ましろき富士の けだかさを こころのつよい盾として 

 御国に尽くす女等は 輝く御代の山桜

 地に咲き 匂う 山桜

 

 昭和11年に作られた『愛国の花』の一番の歌詞です。

 二行目の『女等』はオミナラと読みます。

 意味的には女達と、女を複数形で言っただけなのですが、オンナラと発音したらぶち壊しですね。

 オミナラと発音すると、なにか憧れとか尊敬、親しみを感じてしまうのですが、変でしょうか?

 ちなみに『愛国の花』は戦後七十五年を超える今日でも東南アジア各国で愛唱されていると言います。インドネシアの建国50周年記念の国民行事で、現地の方々が合唱されているのをYouTubeの動画で観た時には、ちょっと恥ずかしいほど感動しました。

 つまり、そういう趣味というか感覚で『姫』はヒメと発音しておきます。

 

 スセリヒメはスサノオとクシナダヒメの娘です……オオナムチはスサノオから数えること五代目あるいは六代目と言われる子孫です。

 人間的な常識で判断すると、令和の若者が明治時代のご先祖に連なる女性と恋仲になったということで、ちょっとSFで、初めて読んだ時には混乱したものです。

 好きになったのはスセリヒメの方からです。

「ぜったい、あんたと結婚する(#゚Д゚#)!」

 スセリヒメは父のスサノオに懇願します。

 娘に『好きな人が出来たの(^#▽#^)』と言われて素直に喜ぶ父親はいないと思います。

「な、なんだと!? す、好きな男ができただとおおおおおおおおおヽ(#`Д´#)ノ」

 スサノオは、オズオズ現れたオオナムチに、こう言います。

「てめえみたいな奴は、名前を変えてやる! たった今から『アシハラノシコオ』と呼んでやる!」

 つまり、日本一の醜男(ぶおとこ)という意味ですね。

 オオナムチは、記紀神話では何度も名前が変わって、大国主に定まるまでは時間がかかります。

『ノラガミ アラゴト』に大国主が出てきますが、この何度も名前が変わることが大国主のキャラ設定に大きく影響しています。『ノラガミ』の夜ト(やと)とヒロインのひよりは沢山観たアニメの中でも好きなキャラです。

 次回はスサノオとオオナムチのそれからを見ていきたいと思います。