くノ一その一今のうち 閑話休題編
126『三河路を進む』 そのいち
豊橋市を北に進んで豊川という川を渡る。その名も豊川市に入った三河路。
豊川の向こうは岡崎を挟んで豊田市。豊の字が付いた市が三つも続く。
『昔から、尾張・三河は豊かな土地だったからね』
鞄の中で気配だけさせて義経くんが語る。
「そうなんや……」
相づちをうちながら、百花の意識は彼女らしくもなく大人しい。
「ちょっと、疲れた?」
朝に静岡との県境を超えて、ほぼ旧東海道を歩いている。二川宿(ふたがわじゅく)では旧本陣の前を通り、そこで見かけた小学生のあとを付けて、多米小学校(豊橋市民俗資料収蔵室)。時間も迫っていたので、ほんの10分ほど見学して先を急いでいる。
「なんか古道具みたいなもんばっかりやったけど……」
急いでいたこともあるんだけど、印象が薄かったのは、その展示内容もあったのかもしれない。
「しみじみ思うとさぁ、あの校舎できたのって、昭和19年の10月やねんよね」
「あ、そうだね……」
わたしも思い出した。
昭和19年といえば、終戦の前の年。それもおしつまった10月、負けが込んできて空襲が日常的になってきたころだ。忍者は、同年配の子たちに比べると歴史に詳しい。
「お寺の鐘なんて金属回収にまわされて、バスとかも木炭で走ってたころやろ」
「うん、女子挺身隊とかも始まったころだよね」
小さいころ、まだ生きていたひい祖母ちゃんが、そんなことを話していた。忍者も徴用されて大変だった時代だ。
「あれだけの建物やのに、古材は一つも無かったて書いたった。あのころは建物疎開とかやってて、古材があたりまえやったやろのになあ」
「うん、地元の人たちの心意気だろうね」
『ガラスに「タメ」って彫ってあっただろ』
「え?」「あ?」
『なんだ、憶えてないのかぁ?』
「「アハハハハ……」」
どの町にもある資料館だと、ニ三の解説を読んで、ほとんど素通りだった。
「忍者っちゅうのは、ガラスがあったら、その先のもんに注意するさかいなあ(^^;)」
「うんうん(^^;)」
下手な言い訳に下手な相づちを打つ。
「子どものいたずら……」「だったのかなあ……」
『あれはね、ガラスを盗まれないために、わざとやったんだよ。説明に書いてあった。終戦後は学校のガラスまで狙われたんだね』
「そうなんや」
「でもでも……」
『なんだい?』「なに?」
「廃止になって資料室になったのはいつだっけ?」
『昭和51年と書いてあったぞ』
「……じゃあ、30年以上も、ガラス割れなくて、窓枠とかの建具もそのままだったんだ」
「二川宿本陣もまるまる残ってたし、ものを大事にする土地やねんねえ……」
「だねえ……」
ちょっとシミジミ。
『フフフ……』
「なんやのん、こそこそ笑ぅてからにぃ」
「背中で笑われるとくすぐったいし」
『いや、21世紀で忍者やってるのもすごいと思うけど』
「え、アハハ……」
「源義経が、うちらと旅してるのはもっとスゴイと思うけど」
アハハハハハハ(((゚^▢^゚)))!
三人で笑って、そろそろお昼ご飯。
忍者スマホを出して探してみたら、ちょうど辿りつたところは、幸いな田と書いて幸田町。
豊橋・豊川・豊田・幸田、縁起のいい街が続いていた。
☆彡 主な登場人物
風間 その(そのっち) 世襲名・そのいち ノッチと約めて呼ばれることが多い
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
中村 百花 薩摩の山潜衆の忍者
義経 藤沢の首洗い井戸で出くわした。
小泉八雲 116回から登場
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長 豊国神社に祀られている秀吉の弟
神さまたち 猿田毘古神 ヤマトタケル
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まりあ戦記・089
『対セオドア・ルーズベルト戦・2』
ちょっと厄介かもしれない……
早期警戒管制機のテレジアが呟く。
ウズメ02はインテグレーションモードで、まりあたち搭乗者の意識は眠っているから、ひとり言に違い無い。違いは無いが声には不穏な響きがある。
子供のころに見た宇宙戦艦のアニメで、大破した宇宙戦艦の艦長が「もはや、これしかない……」と呟き、総員退艦を命じた時だ。光子エンジンをフルパワーにし、全速で突っ込んで敵艦隊を背後の惑星ごと全滅させた。むろん、宇宙戦艦も爆発、自らのエネルギーで蒸発してしまった。
カチャカチャカチャ、三秒でコマンドを打ち込みエンターキーを打ち込んだ!
あまりに早くて、ホトケさんの俺でも、最後の『実施』というコマンドしか読み取れなかった。
ギュィーーン
旋回しながら増速するウズメ02は、セオドア・ルーズベルトの鼻先めがけて直進!
ドドドドドド!
レールガンを対空モードで連射、結界のように取り巻いていたテディーベアの層に穴が開く。
ピピピピピピピ! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!
レーザーを四方八方に撃ちながら、穴に突撃! レールガンよりも射撃密度の高いレーザーに小さな穴は綻びを広げていく。
穴を抜けたところで60度旋回してレールガン!
ドドドドドド!
開いた穴に突っ込みながらレーザー!
ピピピピピピピ! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!
穴を拡大して、同じ攻撃をもう一度。
セオドア・ルーズベルトを囲んで△が描かれる。描かれたところのテディベアの層は数秒間だけ薄くなる。薄くなったところは、すぐに新たなテディーベアに覆われて元に戻る。
しかし、ウズメ02は、ものともせずに△運動を繰り返す。
ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△! ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△! ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△! ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△! ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△!
テディーベアの回復は早く、何度△攻撃を加えても、その層は薄くならない。
『がんばってねぇ……』
テレジアは呟くけど、インテグレーションモード、三人の意識は眠っていて聞こえるはずもない。
なにが狙いだ、一種の飽和攻撃か?
ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△! ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△! ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△! ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△! ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△!
いつまでやらせるつもりだ!
意識は眠ってコアの中で保護されているとはいえ、このままじゃもたないぞ!
ハラハラしながら見ていると、セオドア・ルーズベルトの胸のあたりが弱く光り出した。
『もう一息よ!』
ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△! ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△! ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△! ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△! ドドドドドド! ピピピピピピピ! ピピピピピピピ!……△!
あ!?
胸の光はさらに強くなって、昔の赤信号のように……今のLEDのように……下敷きを挟んで見た太陽のようになってきた。
『そろそろかな……』
そうか、連続の攻撃にテディーベアが間に合わなくなって、いや、テディーベアの数は減ってないけど、大統領本体のジェネレーターがもたないんだ!
ピコン
アクティブソナーみたいなのを打つ音がしたら、大統領の周囲に張られたバリアーが可視化された!
『六割がた削ったわね……』
そうか、バリアーも削れていたんだ、えらいぞテレジア!
あ……でも、こっちも限界が近いぞ!
『いくわよぉ……』
テレジアは、ダッシュボードの左右にある非常ボタンみたいなのに手を掛けた。
そいつは、透明のカバーがかかっていて、それを開けるとクラシックな赤いボタンが現れた。
そうか、同時に左右のボタンを押さないとダメなんだ。
『3、2、1、GO!!』
ボタンが押されると、ウズメ02は90度姿勢を変え、両足を伸ばして大統領に向けた。
あ、ひょっとして足が秘密兵器になっていて、足が飛んで行って敵をぶちかますとか!?
ジョワ!
ウルトラなんとかみたいな声を上げると……え、ウズメ02はそのまま大統領にと突進していく!
え、あ、ちょ、体当たりってか(◎△◎)!!?
ドッゴーーーーーーーン!!!
閃光が走り轟音が轟いた!
ホトケさんの俺でも、ホワイトアウトして、すぐには視界が戻ってこなかった……。
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団少佐
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務中佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子 舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵 時子の祖父(080で死亡)
・メグリ先生(?) 晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団 どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐
☆彡 重要語句
・インテグレーション(integration) ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること
・セパレートアタック 複数パイロットが個別にコントロールして攻撃すること
・ケティちゃん ケティちゃんを依り代とする小思念体
・PONSY(ポンジー) ポーツマスネイバルシップヤード(アメリカの特務旅団)
・中華飯店 ポーツマスのレストラン、78回からは中華飯店9090
王立魔法学校の過年度生
008・入学式
入学式は一年前のハンゾウの忍者学校と趣きが違った。
式場の正面にメイゼンシュタットの国旗と魔法学校の校旗が光源の分からないライトに照らされている。ステージの左右には台の上に大きな花瓶が置かれ、色とりどりの花が生けられ門出の日を飾っている。よく見ると花瓶の上にはチラチラするものが飛んでいて、参列者が「あれ?」っと思うと、数十の蝶々になって、あたかも、花びらが舞い上がったように見えた。
その蝶々たちが、フワッとしたかと思うと『魔風堂々』という国民には馴染みのある行進曲が静かに流れ、数百に増殖した蝶々たちは、式場の入り口に飛んで外に控えていた新入生たちを、式場にいざなった。
新入生入場のあと、教頭の開式宣言があって、ハーゲンドルフ公国国歌が流れる。
蝶々たちは、新入生の席から演壇に移動し、クルクル舞ったかと思うと、一瞬で消えて、校長のグスタフが現れた。
「少々腰を痛めておりまして、魔法での登壇失礼いたしました。あ、では、オホン……グスタフ・フォン・エンゲルハルト以下201名の入学を許可します。メイゼン王国歴1081年9月1日。メイゼンシュタット王立魔法学校長ユルゲン・フォン・コンスタンティン」
と入学許可宣言。代表のグスタフ・フォン・エンゲルハルトが登壇して不動の姿勢で入学許可証を受け取って「グスタフ・フォン・エンゲルハルト以下201名の入学許可証を受領しました!」とキビキビと返事。なにか、挨拶するのかと思ったら、そのまま降壇。
「入学者代表『入学の辞』、マチルダ・フォン・ホーエンツォルレン」
「はい!」
きれいな返事がしたかと思うと、ハンゾウのクラスの並びから実直そうな眼鏡女子が起立。登壇すると「本日、9月1日、晴れて入学を許可された、我々201名の生徒は……」と入学の辞を述べる。よく通る声だが、本人の地声か、魔法に寄るものか、ハンゾウには判断できない。
ただ、プログラムや言葉の合間合間には、星屑や花びら、それとは分からないが、音響や照明には魔法のエフェクトがかかって、雰囲気は忍者学校の百倍はいいとハンゾウは思った。
それから、理事長、PTA会長のあいさつが続き、担任と教科担当の紹介。ローブを着ている以外は普通に見える先生たちだが、なにせ魔法学校。忍者学校もそうであったが、第一印象では測りがたい。担任のクリス先生は、先ほどよりもいっそうチグハグさが目立って——油断がならない——と思うハンゾウだ。
「それでは、これで王国歴1081年度の入学式を終わります。これからは、それぞれの教室で最初のホームルームになります」
教頭先生が杖を振ると、ステージの花がいっせいに飛んで、一本ずつ、新入生の胸ポケットに収まる。飛んできたのは赤で花の先には数字が浮かんでいる。ハンゾウの数字は3-21番だ。
「その花の色がクラスの色になります。花には番号が付いています。頭のがクラス、ダッシュを挟んで出席番号です。教室には同色の蝶々がエスコートします」
もう一度杖が振られると、残った花は全て蝶々に変わって、新入生たちをクラスごとに案内すべく、クラスごとに蟠る。入場してきた時と同様に『魔風堂々』が入場の時よりも少し大きく流される。
「担任の先生方は先に教室に移動してください。保護者の皆さんにはPTAからのお知らせがありますので、しばらくお残り願います。それでは……」
すると、講堂の天窓が開いて、先生たちはフワリと浮き上がったかと思うと次々に天窓から飛んで行った。ローブのヒラヒラを納めるために途中、傘をすぼめるように体を捻るのがカッコよく、参列者から軽いドヨメキが起こる。
ゴチン! アウッ(><)!
瞬間、バランスを崩して窓枠に頭をぶつけるクリス先生。
一瞬、式場の大方が噴き出して、教頭のアグネス・アイヒホルンの唇がひきつった。
※ 主な登場人物
・服部ハンゾウ 瑞穂の国から来た魔法学校の過年度生
・ミーム 白エルフの王女
・クリスティン・クライル(クリス) 1年5組担任
・フランツ・ミューラー 1年学年主任
・ユルゲン・フォン・コンスタンティン 校長
・アグネス・アイヒホルン 教頭
・他の教師・職員 ヨーゼフ・デューラー(教務部長) ワイコフ(主事)
※ 参考語句
メイゼン王国 メイゼンシュタット王立魔法学校 ハーゲンドルフ王国 瑞穂国 瑞穂忍者学校
くノ一その一今のうち 閑話休題編
125『小学生を追いかけて 多米小学校』 そのいち
小学生はそのまま北に歩いて山の方に進んで行く。
後をつけてしまったのは、お互いにレトロな成りだったからだろう。
その子は黒の小学生服でズボンはひざ丈、白カバーの学帽を被って、でも、現代(いま)の子どもらしく、スマホを触りながら。慣れた道なんだろう、俯き加減でズンズン歩いていく。わたしと百花は、これまたひざ丈のセーラー服に手提げの通学鞄。この三人をカメラで覗いたら『青い山脈』とか『二十四の瞳』の一場面に見えたかもしれない。
道は、いよいよ山が目前。
クニっと道が曲がって、一瞬その子の手元が見えた。
「スマホとちゃうでぇ……」「本読みながら歩いてるんだ……」
二人の会話は、その二言だけ。
スッ
微かに吸い込むような音……山に踏み込んで日陰になったせいで、そんな気がしたんだろう。その子もペースが変わらないし、そのまま付いていく。山道と言っても、標高は100も無くって、日本平の丘の道に似ている。そんなには長くないだろう。
思った通り、30分ほどで尾瀬を思わせる湿原に出て板敷の小道。
「へえ……」「水芭蕉とか咲いてそう……」「「遥かな尾瀬~~遠い空~~♬」」
思わずデュエットすると、スッとその子が消えた。
消えた方向に走ると、湿原の出口で、また姿が見える。
湿原を出ると、その子は山際の道を本を読みながら進んで行く……そして、橋を渡るとL字の石段、石の門柱に学校の看板。
追いかけて石段を上がると運動場の向こうに平屋の木造校舎。
「……廃校になった学校やなあ」
はんぱにしか見てなかった看板を見直す。
「多米小学校……」「ん、多米国民学校……」
看板の文字がチラチラ小学校と国民学校に入れ替わって——どっちなんだ!?——と思っていると『豊橋市民俗資料収蔵室』に落ち着いた。
いきなり中に入ることはせずに、運動場を東側から周る。東側はちょっとした林になっているんだけど、林の切れ目にもう一つの門が見える。門は閉じられているんだけど、何か見える。
「あ、あいつ!」
さっきの小学生に見えて近寄ってみると二宮金次郎。
担いでる薪をランドセルに替えたら、シルエットは、まさにさっきの小学生。
『あんまり関わってると先に進めないぞ……』
義経くんが呟いて、でも、せっかくだし、いまから名古屋は難しいので、ちょっとだけ見学。
とりあえず、今日は岡崎までは進もうと決心しなおした。
☆彡 主な登場人物
風間 その(そのっち) 世襲名・そのいち ノッチと約めて呼ばれることが多い
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
中村 百花 薩摩の山潜衆の忍者
義経 藤沢の首洗い井戸で出くわした。
小泉八雲 116回から登場
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長 豊国神社に祀られている秀吉の弟
神さまたち 猿田毘古神 ヤマトタケル
王立魔法学校の過年度生
007・クリス先生、ハンゾウと面談する
両方とも驚いた。
クリス先生は、予想したより過年度生が普通そうなことに。
ハンゾウは、先生が纏っているオーラに。
昨日は、クリス先生が過年度生を持つことで会議が開かれた。過年度生というのは、別の学校で一年以上在籍した上で別の学校に入学する生徒や学生のことで、年度途中の転校生とは区別されて、事情がある場合が多い。成績不振や出席日数不足で進級が困難な者、素行や人間関係に問題があって学校を出ざるを得なかった者。中には家庭事情や経済的な問題でやむを得ずという者も居てひとくくりにはできないのだが、メイゼンシュタット王立魔法学校は10年前に、アルカードという過年度生を引き受けて混乱したことがあるので、慎重な姿勢を見せたのだ。
ハンゾウはそういうことも分かっていたので、自分を受け持つのは、年配のベテラン教師だろうと思っていた。それが「こんにちは。ハンゾウ・ハットリ君ですね」とテーブルの前に座ったのは教師になりたてという若い女性。ローブの魔法章も下から二番目の四級。四級というのは、教師二年目で自動的に昇級するものと聞いている。魔法学校は新任二年目で担任になるので、ピカピカの新担任にちがいない。
「ハンゾウ君の担任をやるクリスティン・クラインです」
「ハンゾウ服部です。よろしくお願いしますクリスティン先生」
「人からはクリスって呼ばれてます。よろしく(;^▢^)」
「承知しました、クリス先生」
初めての担任なんだろう、笑顔ではあるが、表情筋が八割がた緊張している。しかし、ローブを通して感じる気配は老練な忍者と変わりがない。老練な忍者というのはそういう気配をさせないものなのだが、ここ一番相手に圧を掛けるときには、こういうチグハグなオーラを発することがある。
「ええと、単刀直入に聞きます。瑞穂忍者学校の書類によると、きみの魔力は8ですね。間違いありませんか?」
「はい、ここの入学規定では、魔力40が最低基準なので、少し緊張しています」
「まあ、交換留学生だから構わないんですけどね、忍術の成績……そっちの教科はよく分からないんだけど、資料で見る限り優秀ね。期待しているわ」
「はい、相互交流で、忍術・魔法、双方の技術が進み、理解が深まることを祈ります」
「ええと、他にもよそのクラスだけど留学生が居るわ、三人かな。講義や実習でいっしょになるかもしれないわ。他の学生も穏やかだし、まあ、切磋琢磨してがんばってください」
「はい、ありがとうございます」
「ええとぉ……あと一時間で入学式だけど、少し時間があるから、校内の案内するわ」
他にも聞くこと話すことがあった気がするクリス先生だが、ハンゾウの様子に安心して言葉が紡げず、ハンゾウを外に連れ出した。
——オリエンテーションのあとも校内案内するんだけど、ま、いいか(^^;)——
「ええと、校舎の配置からね……」
校舎から始まって、図書館、魔法資料館、昇降口、学食、中庭と、去年自分自身がしてもらった通りに案内する。ゴミ捨て場が入っていたのは、去年、担当の掃除監督で苦労したせいかもしれない。
「評判通り、モミやトウヒの戦ぎが心地いですね」
「そうでしょ、この魔法学校は木々の戦ぎや小川のせせらぎが売り物でね『ささやきの森の学園』とか『ささやきの学園』とか呼ばれるのよ。ほら、あそこを流れているのが、その小川。王都の北でデニ川とデト川に分かれメイゼンシュタットの街に入って、この小川が枝分かれして学園の緑を育んでいるのよ」
「ええ、とても雰囲気ですね」
小川のほとりには、入学式に参加する在校生たちが時間を待っている。新入生たちは、その向こうの本館前の広場に集まり始めている。
ハンゾウは小川がきれいなことに驚いた。
一昨日、デト川はあんなに氾濫していた。むろん、魔物のせいなのだが、その本流であるデ二川、さらにその支流である学園の小川はきれいで穏やかなままだ。
この魔法学校、いや、メイゼン王国を守護している魔法の力は並大抵ではない。
感心していると——新入生のみなさんは、本館前広場に集まってください——と校内放送が入った。
※ 主な登場人物
・服部ハンゾウ 瑞穂の国から来た魔法学校の過年度生
・ミーム 白エルフの王女
・クリスティン・クライル(クリス) 1年5組担任
・フランツ・ミューラー 1年学年主任
・ユルゲン・フォン・コンスタンティン 校長
・アグネス・アイヒホルン 教頭
・他の教師・職員 ヨーゼフ・デューラー(教務部長) ワイコフ(主事)
※ 参考語句
メイゼン王国 メイゼンシュタット王立魔法学校 ハーゲンドルフ王国 瑞穂国 瑞穂忍者学校
まりあ戦記・088
『対セオドア・ルーズベルト戦』
Even after winning, tighten the strap of your helmet!(勝って兜の緒を締めよ!)
やつら、勝ったつもりでいやがる!「勝って兜の緒を締めよ!」ってのは、日本海海戦でバルチック艦隊を全滅させた時の東郷元帥のことばなんだけどよ。これに感激したセオドア・ルーズベルトは、思いっきりリスペクトして、英語で印刷して自分の署名までして軍人や自分のスタッフに撒きやがった。ただのやせ我慢で「負けてねえ!」って言うよりも刺激的だ!
そのセオドア・ルーズベルトが、オグララ草原に現れやがった!
オグララ草原てのはラシュモア山の南でよ。その北の方が、こないだ戦ったサウスダコタの草原だ。
そのオグララ草原は名前を変えて、そのままネブラスカ、カンザス、テキサスまで続いていて、このまま蹂躙されるとアメリカの中西部を縦断……ボギー大佐が「想像したくないが、アメリカが東西に分断されてしまう(-_-;)」というぐらい深刻なんだそうだ。
「ごめん、今回は日本チームだけで行ってくれ(≧O≦)!」
悔しそうにドロシーは叫んだ。
ブリキマンが直っていないんだ。コアで二度出撃したんでコアの方も痛んじまって、コアがオシャカになると、二度とブリキマンは復活できないんだそうだ。
「日本チームの本領発揮よ!」
テレジアひとりマナジリを上げて、早期警戒機で飛び出しやがった。
『今回は、最初からインテグレーションモード、準備して!』
テレジアが言ったときには、すでにインテグレーションしていて『すでに完了』という合成音声で返事しやがった。
南に、ネブラスカ、カンザス、コロラド、三州の州軍が三重の抵抗線を張り、西にワイオミングの州軍が万一に備えて控えている。
前回で証明済みなんだけど州軍の装備ではゴーレムの大統領には太刀打ちできない。しかし、連邦軍がほぼ壊滅している現状では、一世代前の装備しか持たない州軍でも出さざるを得ない。
『西と南から州軍爆撃機接近、B1B、B2、それぞれ八機、滑空爆弾で攻撃の様子、結果が出るまで、現在地で待機』
テレジアは待機を指示した。
B1BもB2も旧式、搭載しているのも旧式の滑空爆弾。ゴーレムの大統領に効き目は無いんだろうけど——やれることはやった——という結果を出さなきゃならないんだろうな。滑空爆弾が投下されると、すぐに地上軍も榴弾や徹甲弾を一斉射撃!
なるほど、弾着のタイミングを揃えて、総合的な打撃力を計ろうという計算なんだ。下手に共闘しては巻き込まれてしまう。
ドドドドドドドドドドドドドーーーーーーーーン!!!
採石場かなんかで、一斉に発破を爆破するのに似ている。無数の爆弾や砲弾がゴーレム大統領を閃光と煙で包んだ!
停まった!
州軍も停まった。攻撃の効果を見ているんだ、うかつに突き進んでは前回の二の舞になる。
グギギギギィ…………
少しは堪えたんだろうか、歯ぎしりみたいな音をさせて立ち止まると、おもむろにコートのボタンを外すゴーレム大統領。
黄金バットなら空を飛ぶ! 変態のコート男なら伏字の○○○が出てくる!
インテグレーションモードでなければ、コクピットの三人は悲鳴を上げて目をつぶったかもしれない。
ポロ
ポロリと落ちたものは、テディーベアのぬいぐるみだ!?
ポロリ ポロリ ポロポロ ポロリ………
次々とテディーベア現れて、やつの胸のあたりで蟠って、やつの周囲を回り始めた。
シュボボボボボボボボボボボ!
やがて、四方に飛び散ったかと思うと、爆撃機と地上の州軍を襲い始める!
ズドドドドドドドドドドドドーーーン!
爆撃機の大半と、地上の自走砲が叩かれるが、それ以外の部隊は、すばやく後方に逃れた。
前回の戦訓が生きているんだ、一撃離脱!
戦訓は生かされ、大方の地上部隊は逃れられたが、地上で対峙してるのはウズメ02だけになってしまった。
それにしても、なんでテディーベアなんだ!?
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団少佐
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務中佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子 舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵 時子の祖父(080で死亡)
・メグリ先生(?) 晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団 どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐
☆彡 重要語句
・インテグレーション(integration) ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること
・セパレートアタック 複数パイロットが個別にコントロールして攻撃すること
・ケティちゃん ケティちゃんを依り代とする小思念体
・PONSY(ポンジー) ポーツマスネイバルシップヤード(アメリカの特務旅団)
・中華飯店 ポーツマスのレストラン、78回からは中華飯店9090
くノ一その一今のうち 閑話休題編
124『今日から愛知、豊橋二川宿』 そのいち
浜名湖を超えて豊橋市に入る。ここからは愛知県だ。
夕べは新所原(しんじょはら)という静岡県最西端の町のお寺に泊った。
あくる日、お寺を後にして200メートル歩くと、もう愛知県。
いや、やっと愛知県。
箱根を超えてから130キロ、足かけ7日。忍者の旅にしては時間かかりすぎ。
気合を入れなおす。
「制服変えなきゃ!」「せやせや!」
昨日のままの浜松聖真理愛学院の制服なので、急いでチェンジ!
豊橋女学院の制服になる。
「あれ?」「おや?」
ちょっと戸惑う。
いつもは共学校の制服で、義経くんも横に並ぶんだけど、豊橋女学院は名前の通り女子高で義経くんは変えようがない。
『あ、いいよ。今日は寝てるから~~』
まあ、スタミナも切れてきてるし、いざという時に働いてくれればいい。
「よいしょ!」「うんしょ!」
通学鞄を揺すり上げた……とたんに手ごたえも重さも消えてしまう。
「あれ?」
「あ、そこ……」
百花が指さした足元には、珍しい手提げの通学鞄。制服もひざ丈のセーラー服で、ソックスもくるぶしの上で二つ折り。
「なんや、ちょっとレトロやなあ」
「まあ、こんなのもあるさ」
古い伝統校には制服も鞄も変えていないところがある。豊橋女学院もそうなんだろう。
「しゃあないなあ」
ということで、慣れない手提げの通学鞄を持って西に進む。
道は旧東海道の面影を残して道幅は五メートルあるかないか、令和なら一車線一方通行の裏通りって感じ。並んでる家々は雑多。先月できたばっかりという新築風もあれば、昭和の初めや江戸時代から建ってるようなのまでが混在している。
「え、旅籠(はたご)?」
百花が立ち止まる。
昭和の初め頃って感じの、昔はよろづ屋やってた感じの家の入口に『旅籠屋 菱屋』って木の看板が出てる。
「あ、こっちも」「そっちも」
十軒以上も同じ体裁の看板がかかっていて、ひょっとして民宿? でも、営業してますって感じが無い。それに、みんな同じ規格の看板。
「ああ……」
「なんか気ぃついたん?」
「昔は旅籠だったってシルシなんだよ!」
「ああ……」
「無理のない範囲で、昔の面影を大事にしてるんや」
「そうかぁ」
住居表示を見ると『二川』……ニカワって読むんだろうか。
「そういえば、この辺、三河とちゃうん? ミカワのニカワ、ややこしない?」
「……いや、フタガワって読むんだよ」
百花の先を越してスマホで調べる。正解を聞きもしないで先に行く百花。
「え、ちょ……これなに?」
「ええ?」
50メートルほど映画村みたいな日本家屋が行く棟も並んでいるんだけど、全部がその前に柵がしてあって、柵と言っても腰の高さで簡単に乗り越えられそうなんだけど、途切れることなく続いているし、柵全体が道路に一メートルほどはみ出している。まるで町ぐるみ立ち入り禁止みたいで、ちょっと不穏。
「なんか、忍び心をくすぐられるなあ……」
ちょっと先に立札……いや、案内板が見えた。
タタタタタ
百花が先を越して立札に突撃。
「あ、そうなんや!」
「なになに?」
立札、いや、案内板には『豊橋市二川宿本陣資料館』と書いてあり『本日休館』と但し書き。
説明を読むと、隣接する清明屋という旅籠屋、駐車場も昔風の門構えになって、全体では小学校の敷地ほどある。
「開いてたら見ていくのになあ……」
箱根の関所もすごかったけど、ここもいい線いってる。
「静岡じゃ時間とりすぎだったから、先行くよぉ」
「へいへい」
案内板から通りに目を移すと、我々の前をランドセル背負った男女の小学生が背中を見せて歩いている。
「「?」」
その小学生は、目に入るまで、まるで気配が無かった。
ヤバイ気がしないではなかったけど、あとをつけてしまうくノ一の二人だった……。
☆彡 主な登場人物
風間 その(そのっち) 世襲名・そのいち ノッチと約めて呼ばれることが多い
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
中村 百花 薩摩の山潜衆の忍者
義経 藤沢の首洗い井戸で出くわした。
小泉八雲 116回から登場
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長 豊国神社に祀られている秀吉の弟
神さまたち 猿田毘古神 ヤマトタケル
王立魔法学校の過年度生
006・クリス先生がお祖母ちゃんのローブを着ているわけ
式にはまだ三時間もあるというのに、クリス先生はもう儀式用のローブを着ている。
ローブは、特級魔法使いだった祖母のもので、むろん魔力章は自分の四級のに替えてあるが、特級魔法の残滓が残っている。早く着れば馴染むかと出勤してからずっと着ているのだ。でも、祖母の残滓は強くて、すれ違う先生や職員に廊下で出会ったりすると一瞬ドキッとされる。学園で特級はユルゲン校長一人だけなのだ。
——魔女特性強かったからなあ、お祖母ちゃん……(-_-;)——
魔女というものは、王国が国家的規模で魔法使いを管理育成する前から存在していて、畏怖と尊敬の目で見られる。祖母は、その系譜の最後の一人だったのだ。
わ!?
職員室の居心地が悪いので、自分の教科である魔法社会の教官室に戻る途中、階段を昇ってくるワイコフに驚かれてしまった。
「ごめんなさいごめんなさい(;'∀')!」
「あ、いえ、こっちこそ(^^;)」
「あ、じゃあ!」
そそくさと、数段あがったところで、ワイコフの声が追いかけてきた。
「クリスティン先生、過年度生のハンゾウ・ハットリ君が受付に来てます!」
「え……ああ!」
「だいじょうぶ、折り目正しい生徒です。髪なんか、今どき珍しい七三分けで、足が長くって、目元涼やかで笑顔とかも爽やか日当たり良好! だいじょうぶ、優良物件ですよ!」
「あ、あ、どうもありがとうございます(^^;)」
「応接の方に案内しておきましたので。あ、教官室の方がよかったですか! だったら……」
「いえ、だいじょぶ! このままいきます!」
カッカッカッカッカッカカッカッカッカッカッカ…………!
パンプスの音を響かせて、応接室に突撃するクリス先生だった。
※ 主な登場人物
・服部ハンゾウ 瑞穂の国から来た魔法学校の過年度生
・ミーム 白エルフの王女
・クリスティン・クライル(クリス) 1年5組担任
・フランツ・ミューラー 1年学年主任
・ユルゲン・フォン・コンスタンティン 校長
・アグネス・アイヒホルン 教頭
・他の教師・職員 ヨーゼフ・デューラー(教務部長) ワイコフ(主事)
※ 参考語句
メイゼン王国 ハーゲンドルフ王国 瑞穂国 メイゼンシュタット王立魔法学校
まりあ戦記・087
『対ゴーレム大統領戦にかろうじて勝ってご飯会』 まりあ
I find that the harder I work, the more luck I seem to have(努力すればするほど、幸運は更に訪れる:トーマス・ジェファソン)
It is better to offer no excuse than a bad one!(下手な言い訳をするよりも言い訳しない方がましだ:ジョージワシントン)
Associate yourself with men of good quality! if you esteem your own reputation; for ‘tis better to be alone than in bad company!(自分の評判を重視するなら、良質の人と付き合いなさい。悪い仲間と付き合うよりは一人でいるほうがましだ!:これもジョージワシントン)
Where there's a will, there's a way!(意志あるところに道は開ける!:リンカーン)
Believe you can and you're halfway there!(自分ならできると信じれば、もう半分は成し遂げたようなものだ!=為せば成る!:セオドア・ルーズベルト)
Do what you can, with what you have, where you are!(自分が今いる場所で、持っているもので出来ることをせよ!:セオドア・ルーズベルト)
対ゴーレム大統領戦にかろうじて勝った。
そんで、PONZYのベースに帰ってからポーツマスの中華飯店。晩御飯食べながらゴーレム大統領どもが吐き出した言葉の武器を翻訳した。AIなら一発なんだけど、どろしいとおねえちゃん(中原少尉)が訳してくれる。
どれも、卒業式とかで校長先生が言いそうな格言。どれも押しつけがましくて「勝手に言ってろ!」なんだけど、魔法使いの詠唱みたいなものらしい。格言言ってるうちに力を貯めて、ドバーー!って吐き出すらしい。
「まあ、宇宙戦艦の波動砲みたいなもんね」
たこ焼きをほおばりながらどろしい。
「それなら『エネルギー充填100%……120%、波動砲発射!』とかの方がよくね!?」
「ああ、シナチク飛んでるしぃ!」
ナユタはかまわずに喋って、いろいろ飛ばしてくれる。
「そうだね、『対ショック対閃光防御!』って古代くんが言うのいいよねぇ(^▽^)」
「そーそー、なんでか森雪のアップと重なったりなあ(^〇^)」
「そんで、みんな一斉にゴーグルつけんの。あのアナログ感、たまら~~ん」
「こっちがたまらんわよ、喋るか食べるか、どっちかにしなヽ(`Д´)ノ!」
「「アハハハ(^▢^)」」
「しかし、ちゃんと撃退できたんだから『オーチンハラショー!』じゃないのか?」
カウンターの向こうからウィッテが仲裁してくれる。
「まあ、そうなんだけどね」
「まりあは、そうは思わないのかい? へい、ギョーザ8人前」
ギョーザを置きながら小村さん。
「うん、なんか半端な感じでぇ……ねえ、おねえちゃん」
「うん?」
妹たちをニコニコ見ていた中原少尉に振ってみる。
「最後にルーズベルトが言ってたの、どんな意味なの?」
Even after winning, tighten the strap of your helmet!
「あ」「ああ……」
どろしいとおねえちゃんの手が停まる。
「「…………」」
「ん?」
仕方がないので、AIに翻訳させる。
Even after winning, tighten the strap of your helmet!(勝って兜の緒を締めよ!)
な…………なんだってぇ!?
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団少佐
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務中佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子 舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵 時子の祖父(080で死亡)
・メグリ先生(?) 晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団 どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐
☆彡 重要語句
・インテグレーション(integration) ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること
・セパレートアタック 複数パイロットが個別にコントロールして攻撃すること
・ケティちゃん ケティちゃんを依り代とする小思念体
・PONSY(ポンジー) ポーツマスネイバルシップヤード(アメリカの特務旅団)
・中華飯店 ポーツマスのレストラン、78回からは中華飯店9090
王立魔法学校の過年度生
005・老エルフ夫妻の秘密
十分あまりで部屋を決めると、老エルフの夫妻は宿に戻った。
「いい部屋が見つかってよかったね」
「ええ、あなたのおかげよ、ありがとう」
「いやいや、不動産屋の女の子も親切だったしね……彼女、ホーランド人だね……客あしらいがうまい」
「そうね、お父さんのアシスタントだって言ってたけど、独立しても一人前にやっていけそうねぇ」
「ああ、若い者がキリキリ働いているのはいいものだねえ……」
「ええ、役所に提出する書類も用意してくれたし……お茶入れましょうか?」
「あ、僕がやるよ。一日歩いてくたびれただろう」
「ごめんなさい、実のところ、まだ腰が少しね……」
「なんなら……お風呂先に入るかい……僕は残り湯でいいから……」
「いえ、もうちょっと休んでからにするわ」
「そうか、まだ芯の疲れがとれてないんだな、マッサージしてあげよう……」
「枝は付いていませんか?」
「ああ、この部屋には何もない。昼に出た時のままだ……よいしょっと」
「あ、すみません(#^^#)」
シャーーーーーー
妻がベッドに横になるのを助けてやると、男は部屋のカーテンを閉めた。
えい!
「ムグ(>‐<)」
「ごめん、これはキツイか」
「はい、少しばかり……」
妻の口調が変わった。
声に張りは無いが、身に付いた品の良さと明るさがある。もし、このタイミングで彼女を見る者がいたら、四十を超えて何年にもならない女性だと思うかもしれない。
「うん、肩や背中のハリが戻り始めている。まだ、あれから二日なのに、メンタルも基礎体力も一級品のようだ」
「いいえ、あなたが救ってくださったからです。本当なら、もうデト川の川底で骨になって、地の果てに流されていたでしょう」
「あの魔導士も恐ろしい、魔物と企んで川をあれほどに氾濫させるんだからな。それも、本流には影響を与えずに、支流のデト川だけを」
「いいえ、ハンゾウさまこそ、あの川岸に居た誰にも悟られることなくわたしを救ってくださいました。まるで伝説の大魔法使いです」
一瞬、その時のことが蘇ったのかハンゾウの手が停まる。
「悪い、思い出させてしまったか?」
「いえ、あの瞬間は絶望と希望の裏表です。どちらかだけを思い出すことはできませんし、やがては希望が絶望を乗り越えていくでしょう。冬のページの裏は春。朝を隠しきれる夜もありません、生きてさえいれば夜の闇にも朝が訪れます。ハンゾウ様には光と力があります」
「ボクはただの忍びだ。魔力は入学資格の20%しかない」
「でもでも、あれから川をさかのぼって魔物も退治して……」
「いや、やつの角を折っただけ、魔法は解除できたが、ミームの老化はまだ半分も解除できていない」
「いえ、無為なまま奴隷であることからは救ってくださいました。そういえば、あの角はどうなさいまして?」
「え、あ、耳に変換したんだった……」
「フフフ、お似合いですよ」
「ちょっと外してくるよ……」
「もう外すんですか?」
「このままじゃ、髪も洗いにくいし寝返りもうてない」
「洗ってさしあげましょうか? 寝返りの時も介添えして差し上げますよぉ」
「いやいや、そういうのは忍びの秘密。エルフのお姫様とはいえ、ご遠慮願います」
「まあ」
「それでは」
ほんのニ三分でつけ耳を外したハンゾウだったが、戻ってきたときには、すっかり寝息を立てているエルフの姫であった。さっきよりも、さらに五歳は戻ったように思われた。
ベッドは譲って、カウチで横になるハンゾウであった。
※ 主な登場人物
・服部ハンゾウ 瑞穂の国から来た魔法学校の過年度生
・ミーム 白エルフの王女
・クリスティン・クライル(クリス) 1年5組担任
・フランツ・ミューラー 1年学年主任
・ユルゲン・フォン・コンスタンティン 校長
・アグネス・アイヒホルン 教頭
・他の教師・職員 ヨーゼフ・デューラー(教務部長) ワイコフ(主事)
※ 参考語句
メイゼン王国 ハーゲンドルフ王国 瑞穂国 メイゼンシュタット王立魔法学校