まりあ・101

『総攻撃・1・ファーーー(>д<)!!』




「どうやら、総攻撃が始まったようだ」


 ブリーフィングルームに集められたクルーたちに緊張が走る。

 ポンジーを取り巻いたTB(決戦に向けテディーベアの呼称はTBに決められた)は黒雲の塊のようになってポンジーのバリアに波状攻撃をかけている。

「バリアはヘンリー准将の努力で12層の厚みになったが、夕べの攻撃で3層削られてしまった。このぶんでは、長く持って三日。早ければ明後日の未明には破られてしまう。ここへは避難のために移動してきたが、健康な戦力はここにしか残っていない。まだ十分な整備もできてないが、これから出撃してもらう」

「ウズメ02とドロシーだけでですか?」

 静かに聞く中原中尉だけど、声の響きにいつもの余裕がない。

「ブリキマンも出す」

「「「「ええ!?」」」」

「ブリキマンは、まだエンゲージできないんじゃないの?」

 どろしーが悲鳴のような声をあげる。

「テレジアに乗ってもらう。エンゲージドライブはできないが、乗り込んでアナログドライブなら可能だ」

「「「ええ!?」」」

 アナログドライブは、操縦者が自分の手足を使って操作するもので、エンゲージドライブほどには俊敏性がなく、ヨミの攻撃や回避の動きについていけない。言ってみれば昔のレシプロの重戦闘機で現代のジェット戦闘機の大編隊に挑むようなもので、勝ち目はゼロだ。

「……主力はドロシーとウズメ02だ。ブリキマンは、機を見て効果的に使う」

 大佐の悲壮さに日本チームは口を閉じてしまうが、どろしーは食い下がる。

「効果的にって、どんな風に?」

「みんなもコースを周って分かっただろう、200ヤードそこそこのショートホールでもイーグルはおろかパーでも難しい。ボギーでカップインするつもりでいけ」

 大佐の言うボギーは——ひと手間かけろ、目的はカップインすることだ!——ということなんだ。けれど、対ヨミ戦、それもほとんど決勝戦、それも、これからゆっくりの一番ホールじゃない。やられっぱなしで迎えた最終ホール。そこで勝ちを取れということだ。まるで戦艦大和の沖縄特攻だ!

「負けが込んだゲームに見えているかもしれないが、作戦指揮の立場から見ればフルコースを同点で周ったようなもんだ。今度はサドンデスだと思え、早く一点リードした方の勝ちだ!」

 強引なたとえに、どろしーさえ言葉が無かった。

 
 ドロシー、ウズメ02、ブリキマン、三体のウズメは三機編隊でオーガスタのベースを飛び立った。

 コクピットのモニターには過行くオーガスタのゴルフコース、かなたには本土から切り離されたフロリダ島が無茶なプレーヤーに打たれてロストボール寸前の暴走球に見えた。

 ファーーー(>д<)!!

 口には出さず叫んでみるまりあだった。



 ☆彡 主な登場人物

・舵 晋三      永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ     晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎     特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ     特務旅団少佐
・中原光子中尉    みなみ大尉の副官
・金剛武特務中佐   ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ       ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長      みなみの世話係
・まりあの友達    釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生     瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子     舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵     時子の祖父(080で死亡)
・ケティちゃん    晋三といっしょにしまい込まれているマスコット
・メグリ先生(?)  晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団    どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐
 
 

くノ一その一今のうち 閑話休題編

138『墨俣一夜城・2』 そのいち




 安い!

 一般入場料200円!

 感動して財布を出そうとしたら「大垣高校の生徒さんでしょ、18歳未満は無料よ(^^)」と受付のおばちゃん。

「そうなんだ!」「ラッキー!」「ありがとう、おばさん!」

 と、いかにも本物っぽく喜んで天守閣(大垣市歴史資料館)に入る。まあ、ウメは400歳超えてるけど元々は梅の精。義経くんもいるけど、通学鞄の中だし。わたしと百花はまだまだ現役で通用するし。

 4層6階建て、外からは4階にしか見えなかったから、2階分得した気分。

 一階々々は狭いんだけど、上まで上がると、けっこうな床面積でよその歴史資料館と比べても遜色がない。

 ガラスケースの中に、リアル墨俣城のジオラマ模型が入っている。

「ああ、やっぱ全然違うねえ……」

 秀吉の一夜城は、なんだかサファリパークの柵みたい。いや、サファリパークのは鉄製だろうけど、墨俣のは全部木製。丸太を打ち付けて縄で縛ったもの。ただ下半分が背丈ほどの土手になっていて、それ込みで見ると、城はともかく前線基地というか砦という感じだ。

「この木の柵に取り掛かったあたりで斎藤の軍勢が攻めてきよったんやろなあ……」

「そこで、秀吉はパーツに組んだ柵を筏で運んで一気に組み立てたんだぎゃあ」

「うん、工事現場の柵なんて、ほんと半日で作っちゃうもんね」

 等々力渓谷の工事を思い出す。倒木が危険だと言われたら、あっという間に通行止めの柵がつくられたからね。

「やっぱり、秀吉の一代記みたいなもんが多いねえ……」

 大阪出身の百花は、資料を熱心に見ている。文献史料が多いんだけど、意外なハイペースで読んでる。

「ほんとに読んどりゃーす?」

「読んでるしぃ……」

 そうだ、百花は薩摩の山潜衆だけど、代々大阪勤番。文書資料にあたることも多かっただろう。この熱心さと集中力が忍びとしての百花の本領なんだ。

「ううん……史実とちがうとこもチラホラ……どうやら、武功夜話とかの史料からそのままひいてきたみたいな。信長公記とも矛盾してるような……」

「それはなも、いわゆる太閤記を大事にしとるからなも。パンフにも書いたぁるだぎゃ」

「あ、いや、ごめん。ついクセで(^^;)」

 忍者と精霊の違いはおもしろい。

 あっという間に最上階。普通の復興天守と違って窓が大きくて景色がいい。

「高さでいうたら、校舎の屋上ぐらいやけど、なんか特別な景色に見えるねえ」

「ほんとだねえ」

「なんか、しみじみだぎゃあ」

「ねえ、あっちに見えてるのん岐阜城ちゃう?」

「うん、岐阜城だぎゃあ」

 岐阜城は10キロほども離れてるんだけど、それが素通しで見えるというのはすごい。

 日本中のお城を知ってるわけじゃないけど、隣のお城が見えるというのはそんなにはないと思う。

「これが濃尾平野だぎゃ……」

「そうだねえ……」

 関東平野も大きいんだけど、デススターみたいに街が広がって、隣の学校だって見えやしない。これも、日本の原風景の一つなんだろうとシミジミしてしまう。

 一時間ほど天守閣に居て、受付のおばさんにお礼を言って出る。

 すると、天守閣の裏の方に気配。ウメと百花も感じたようで裏に回ってみる。


 あ、神社!?


 石垣の角を曲がると唐突に立派な鳥居。

 お城の中に神社、それ自体は不思議じゃないというか一般的。たいていは昔の城主一族を祀っていたり、地元の神さまだったり。だけど、それは、二の丸とか三の丸とか、別の曲輪に設けられてることがほとんど。天守閣のすぐ横とか裏にあるのは初めて見た。

 白髭神社……あ、サルタヒコの神社だ!

「ピンポーーーン!」

 陽気な声がして、拝殿の前に陽気なマッチョが現れた!

 ズサ

 反射的に身構える百花とウメ!

「あ、大丈夫だよ、サルタヒコ、道の神さまのサルタヒコノミコトだよ!」

「え?」「ええ!?」

「いやあ、箱根以来だな」

「っていうか、ちょっと若くなってない?」

「せや、新任の変態教師みたいや!」

「ごあいさつだなあ、その三人目は?」

「あ、熱田神宮のならずの梅だよ。サルタヒコって、道路とか旅の安全のサルタヒコさん?」

「おうよ、いやあ、熱田神宮には引きこもりの梅の精が居るって聞いてたけど、そうか、おめえがそうなんだな。いや、なかなかの別嬪だ。よろしくな」

「ねえ、箱根超えると力がおよばへんとか言うてなかったぁ?」

 そうだ、それで手裏剣とかの忍者道具を祝福して消えてしまったんだ。

「いや、それがな、若いお前たちが頑張ってるんで、八幡ほどじゃないけど、少しは力になってやれそうでな」

「えと、いっしょに旅を……?」

「いや、そういうのは、そのウメと通学鞄の義経の役目だ。まだ、何をしてやれるか分からないけど、こうやって墨俣に寄ってくれたのも縁だ。で、とりあえずの挨拶ってことだ。稲杵姫(いなきひめ)を送り届けるのは大事な仕事だ、しっかりやってくれ」

「う、うん」「まかしとき」「だぎゃ」

「そんじゃ、祝福し直してやる。神妙にしてろ」

「「「うん」」」

「オンアビラウンケンソワカ オンアビラウンケンソワカ オンアビラウンケンソワカ……」

 バサリバサリ

 人数分だけ幣を振りながら真言をとなえる。やっぱ、どこか胡散臭いんだけど、この人も神さま。大人しく頭を垂れておく。

「そっちに豊国神社もある、お参りしていけ」

「え?」「あ」「こっち」

 拝殿の横に小ぶりだけど立派な社というか祠というかがあるって、豊国神社の扁額がかかっている。

「大阪の豊国神社から分祀してきたんやねえ」

「そいじゃあ」

 チャリンチャリン……お賽銭を入れて二礼二拍手一礼。

 豊国神社というと、わたし的には弟の秀長さんなんだけど、まだ分祀して間がないのか、気配はサルタヒコさんの半分も無い。

 大阪に着いたら、きちんとお参りしておこう。

 神さまとのつきあいを思い直し、美濃路を垂井、そして中山道に沿って関ケ原を目ざした。


☆彡 主な登場人物

風間 その(そのっち)  世襲名・そのいち ノッチと約めて呼ばれることが多い
風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
中村 百花        薩摩の山潜衆の忍者
義経           藤沢の首洗い井戸で出くわした。
ウメ           熱田神宮のならずの梅(133回から)
小泉八雲         116回から登場
忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
神さまたち        猿田毘古神 ヤマトタケル
    

王立法学校の過年度生

020・『ミネルバのフクロウ』




「ハンゾウ、魔法の授業で火属性の魔法みたいなのやってただろ」

「ああ、火遁の術って云うんだそうです。あとで教えてくれました。フランツ先生に見破られて少し悔しそうでしたよ(^^;)」

「…………ハンゾウのやつ、自分から気を発したんだ。十秒ほどは全く分からなかった」

「え、そうなんですか?」

「うん、最初、まったくわからなくて——ちょっとヤバイ——と思った瞬間に気配を感じたから」

「ええぇ?」

「こっちの顔を立ててくれたって気がした。忍術というのはよく分からないけど、やつは、けっこうな使い手だと思う。クラスではどんな感じ?」

「ああ……うん、積極的に馴染もうという感じじゃないですけど、ほどよくというか、自然に溶け込み始めてるかな。親しいのは、すぐうしろのヤコブだけど、みんなとも、話す……って感じじゃないけど、輪の中……いちばん外側だけど、ニコニコ聞いていてる感じです。最初は過年度生っていうんで構えちゃいましたけどね。アルカードみたいなことは無いと思います」

「そうなんだ(^▽^)」

 いちおうの笑顔で返したフランツ先生だが、すこしひっかかっている——アルカードも最初のころは人あたりが良かった——と。

「じつは、出張のついでに文部省の交流事業課に行ってきたんだ」

「ああ、花の……」

「ああ、花の交流事業課」

「あ、ちょ……」

 目だけで周囲を窺ってしまうクリス先生。

 交流事業課というのは王国の第三王子カスパルの肝いりでつくられたセクションで、王子自身が課長を務めている。それまで、バラバラに行われていた外国との文化交流を一手に握るセクションで、近年、文部省の新たな出世コースとして文部省や教育界では注目されているという、いろんな意味で。

「最初は、あそこのごり押しかと思ったんだ。メイミズ(メイゼン・ミズホ)友好の立場から問題児を押し付けられたのかもってな。クリスもそうだろ?」

「あ、まあ……少しは(;'∀')」

 少しどころではない、クリス先生本人は口にすることは無かったが、あまりに動揺するのを見かねて、フランツ先生の要請で会議(003・先生たちの会議)が開かれていたのだ。しかし、なにも変わらないまま会議は終わって、校長がアリバイのように慰めていたのを会議の後片付けをしながら、この学年主任は見ていた。

「まあ、分からないことだらけだけど、滑り出しはまずまずだ。俺も、授業以外でも注意して見てるから、気になることがあったら、なんでも言ってくれ」

「ええ、ありがとうございます……」

 学年主任というよりも、駆け出しの仲間に気を配ってくれることが嬉しいクリス先生。「ありがとうございます」と礼を言ったところで会話は終わったようなものなのだが、ここで沈黙になっては申し訳ないと、学校の話を一つする。

「生徒会室が移動するらしいですよ」

「生徒会室が?」

 生徒会室は、その建学初期から本館の校長室と並んで作られている。設備も代々の役員経験者などから寄付されたり援助されたりで優遇されている。その生徒会室が移動するのは、唐突で意外だ。

「なんでも、こんどはメイジ館に移るんだそうです」

「メイジカン……って、あのお化け屋敷のメイジ館?」

「はい、あのメイジ館」

「なんでまた……」

 言葉を継ごうと思うと店の北の壁の仕掛け時計が——ジジジジ——と唸り始めた。

「え?」

「ああ、あの仕掛け時計さ。時報の10秒前から音がする」

 数秒待っていると、時計の扉が開いて、フクロウが姿を現した。

「あ、仕掛け時計なんだ」

 ホウ ホウ ホウ ホウ ホウ ホウ

「ミネルバのフクロウ、ここのトレードマーク。長いこと動かなかったんだけど、直したんだね」

 客の中には承知している者もいるようで、そこここから、パチパチと拍手が起こった。

「さあ、ミネルバのフクロウが飛び立つ前に帰るとするか」

「え、飛ぶんですか?」

「アハハ、古いことわざ。いくよ」

 伝票を掴んでレジに向かうフランツ先生。

「はい、あ、ごちそうさまでした(^^;)」

「なんのなんの……」

 レジは、さきほどのエルフの女性だ——フランツ先生より少し若い?——と思ったら、ニッコリ笑顔を返されてあたふたするクリス先生だった。

 

※ 主な登場人物

・服部ハンゾウ             瑞穂の国から来た魔法学校の過年度生
・ミーム                白エルフの王女
・クリスティン・クライル(クリス)   1年5組担任
・フランツ・ミューラー         1年学年主任
・ユルゲン・フォン・コンスタンティン  校長
・アグネス・アイヒホルン        教頭
・他の教師・職員            ヨーゼフ(教務部長) ワイコフ(主事)
・同級生                マチルダ ヤコブ ステファン アリシア ブルーノ
・上級生                ベロニカ(生徒会長) 
・フエアトライト            ベロニカの使い魔
・エフタル               魔導士             

※ 参考語句

 ヴェルト世界 メイゼン王国 メイゼンシュタット王立魔法学校 ハーケンドルフ王国 瑞穂国 瑞穂忍者学校 ノルデン公国 エルフェン辺境伯領 ミッテル王国 ズューデン共和国 ホーランド国 カフェミネルバ
     

まりあ戦記・100

『総攻撃前・10・徳川曹長のシミレーション』




 ポーツマスの街は食べ散らかしたトウモロコシの芯みたいになっちまった。


 テディーベアたちが、食いつくして、建物はほとんど基礎部分しか残ってねえ。あいつらは、どんな仕掛けになってんのか、せいぜい子熊ほどの体の中に、食ったあれこれをため込んでやがる。徳川曹長が計算したら、テディーベアの数は兆の単位を超えてるらしい。で、その数は、まだ増えつつあるというから目まいがする。

 半日ほどはポンジー(ポーツマスネイバルヤード)にも攻撃を加えてきやがったけど、バリアに阻まれて手が出せねえ。ポンジーはまりあたち日本チームが来る前にも襲われていて、ほとんど壊滅しちまっていたんだけど、ヘンリー准将とボギー大佐の努力で基地の核心部だけはかろうじて保たれている。

「次はあぶないかもしれません……」

 自分のPCで試算し終えて、怖いことを言う曹長。

「この規模の攻撃なら、まだ50%の余裕はあるだろう」

 ボギー大佐はベースのPCを指さす。モニターには攻撃予想を二倍に引き上げたシミレーション結果が出ていたが、ポンジーは28%の余力を残している。

「それは、攻撃が同じパターンだということが前提ですね」

「連携攻撃も五割り増しで計算しているぞ」

 テディーベア一つ一つの能力は知れている。せいぜい一昔前のドローンの能力で、自動車なら吹き飛ばせるけど戦車は無理という感じだ。やつらも、それは分かっているから、数百数千のテディーベアが連携して、あるいは塊りになって食らいついて戦車でも撃破してしまう。

「いや、実は……」


 曹長は、ゆうべ、ウィッテと小林に感心したことを話した。


 ベースの調理室に案内してやると、二人は、直ぐに水回りやガスコンロの点検に入った。ミサイルの発射基地なので、定員はせいぜい30人ほどなので、厨房もそれに見合ったものでしかない。

ウィッテ:『火力が足りない、ちょっと触っていいかい?』

曹長:『ああ、でも安全には気を付けてくれよ』

小村:『心得てるよ』

 小村が笑顔で返すと、二人で一時間もかけずにコンロ周りを改造してしまった。

 持ってきた調理器具の中から、鉄製の花びらみたいなのを出してコンロ周りの下半分を囲ってしまったのだ。

ウィッテ:『こうしとくとね……』

 ボッ!

曹長:『おお!』

 コックを捻ると、炎の姿が五割ほどたくましくなった。

小村:『曹長、下の方に、手を寄せてみてよ』

 言われてやってみると、火の傍であるのにほとんど熱を感じなかった。

ウィッテ:『ほかの店でもやってるけどね、うちのは上のとこの捻り返しが独特でね……』

小村:『7%ほど性能がいい』

曹長:『なるほどぉ』


「それで、ピンときて、テディーベアの破壊力に方向性を持たせてシミレーションしてみたんですよ」

「テディーベアに花びらか?」

「もう少し高度なものですが、イメージは、こんな感じです」

 テディーベアの胸に花の形のバッジがついた。

「これで爆発すると……」

 ドン!

 爆発のエネルギーはバッジから直線的に発射され、その力は通常の8倍に達した。

「しかし、8倍程度じゃ、ポンジーの結界は破れんだろう。あれは、アメリカ最強の核ミサイルでも耐えるんだぞ」

「だといいんですが、あいつら、ポーツマス全域の瓦礫を吸収しています」

「それはそうだが、瓦礫なんか吸収しても、石礫ぐらいにしかならないだろう」

「それが……瓦礫と共に爆発のエネルギーを吸収しているのではないかと思われるんです。これを見てください」

 画面が切り替わると、ホトケさんの俺には理解不能の数式と図式が出てきて、二秒で大佐の頬が引き攣った。


 その日の晩飯、ポーツマスの時よりも料理が美味くなって喜ぶクルーたちだった。大佐と曹長は、悟られないように美味しがるのに苦労した。



 ☆彡 主な登場人物

・舵 晋三      永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ     晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎     特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ     特務旅団少佐
・中原光子中尉    みなみ大尉の副官
・金剛武特務中佐   ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ       ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長      みなみの世話係
・まりあの友達    釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生     瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子     舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵     時子の祖父(080で死亡)
・ケティちゃん    晋三といっしょにしまい込まれているマスコット
・メグリ先生(?)  晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団    どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐
 

くノ一その一今のうち 閑話休題編

137『墨俣一夜城・1』 そのいち




 実体化できない義経くんなので「いまさら休憩してもしゃあないねんけどなぁ……」と百花がこぼし、ウメも「……だぎゃあ」と曖昧に名古屋弁のため息。

 女というものは……なんて言ったら、お祖母ちゃんにおこられそうなんだけど、ピュアで弱っちいやつを守ってやりたくなる。まあ、源義経ってキャラにはそういう属性があるのかもしれない。

 長良川と犀川をいっぺんに渡ってしまい、このまま進めば大垣の中心に向かって東海道線に沿って関ケ原に突入してしまう。

 見ると、犀川からの下り坂、北に下りる小道がある。

「あ、ここ下りたら墨俣の一夜城だぎゃあ」

「「ああ!」」

 忍者の基礎知識……というわけじゃないけど、業界ではチョー有名な城だ!


 秀吉が、まだ木下藤吉郎という名前で織田家の課長補佐ぐらいの時、信長が困っていた。

『だれか、墨俣に城を築けるやつはおらんか!?』

 墨俣は美濃(岐阜県)と尾張(愛知県)の境目で、美濃を攻める拠点になるんだ。何度も織田家の重臣が試みるんだけど、完成まであと一歩というところで斎藤側に攻め取られてしまう。で、誰も手を挙げない。

「せや、そこで手ぇ挙げたんが秀吉やったんや!」

「よし、見に行こうだぎゃあ!」

「うん、義経くんも元気出るかも!」

 あっという間に決まって、北への小道を駆け下りた。

 小道は旧集落の真ん中を北に抜けていて、集落の規模のわりにお寺が多い。忍者スマホでググってみると、東海道の宮宿と中山道の垂井宿までの十四里を結ぶ脇街道の美濃路が通る宿場町だった。川沿いの土手に出ると犀川を挟んで四層の天守閣が見えた。

「「「ああ…………」」」

 感心と当惑がいっぺんに来た。

 天然の濠である犀川と天王川に挟まれて、なんだか大海にせり出した岬の感じ。岬の上には四層の天守。天守の後ろは西にわずかに山並みが見えるだけで、一面の青空が広がって景色が大きい。天守は、その大きな景色の中、大海に帆を満杯に膨らませて旅立とうとする帆船のよう。「夜に見たら、頼もしく海を照らす灯台みたいに見えるかも」「孤高の白梅みたいだぎゃあ……」三者三様に感心。

「せやけど、墨俣城は砦みたいなもんで、天守閣無かっただぎゃあ」

 藤吉郎は、先輩たちの失敗から学び、あらかじめ川の上流で城のパーツを作っておき、それを一度に運んで、一夜はともかく、めちゃくちゃ短時日で城を完成させたと言われている。このやり方と精神は忍びの道に通じる。

「義経ぇ、見えてるかあ?」

「う~~~~ん……」

「よし、とにかく行ってみよう!」「おお!」「だぎゃあ!」

 なんだか高揚して、その名も『太閤出世橋』を洋々とした気分で渡って行った!


☆彡 主な登場人物

風間 その(そのっち)  世襲名・そのいち ノッチと約めて呼ばれることが多い
風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
中村 百花        薩摩の山潜衆の忍者
義経           藤沢の首洗い井戸で出くわした。
ウメ           熱田神宮のならずの梅(133回から)
小泉八雲         116回から登場
忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
神さまたち        猿田毘古神 ヤマトタケル
    

王立法学校の過年度生

019・『カフェ ミネルバ』




 王都ケーニヒスシュタットでの出張を終え、学校には戻らず自宅に直帰するフランツ。

 ダテ川の大通りをゆっくり車を走らせるのは、この三週間余り新学年の仕事に追われた頭を少しでもクールダウンしようと思ったからだ。
 四十歳を二か月過ぎたフランツ。若き日の思い出に浸るほどの歳ではないのだが、初めての学年主任。校長からも学力・魔法力の向上を言われている。担任団は平均以上の教師で構成されたが、優れている分、教師一人一人が個人商店。キャリアの上でも年齢的にも自分よりも上の者が半分、手綱は取りにくい。

 今日の出張も、教務部長のヨーゼフが一緒に行くはずだったが「すまない、今日は一人で行ってください」と教頭。ヨーゼフは密かに魔法大学への転職を考えているという噂だが、それは、すぐに頭にしまい込んで「分かりました」と学校を出た。
 出張の中身は文部官僚のアリバイに付き合わされただけ。まあ、出されたお茶が瑞穂産の緑茶だったのが発見。国王を含め王国に不満は無いが、お茶の質だけはいただけない。

 名残の流氷でも見つけられればと思ったが、微妙に時期は過ぎているし、車は流れと同じ南向きだから、通り過ぎなければ分からない。それでもチラ見してしまうのは四十一年間の人生にいくつかの後悔があるからかもしれない。

 あ

 川岸の遊歩道に見慣れた後ろ姿が見えた。

「クリっさん、お散歩かい?」

 窓を開けて声をかけると、驚いたように新米担任が振り返った。


 車を預けて、カフェ・ミネルバにクリスを誘った。


「慣れてる感じですけど、よく来られるんですか?」

 カフェの駐車場にスイスイ車を停めたことや、迷わず窓際のいい席に着いたので、感心するクリス。

「アハハ、若いころ、ここでバイトしてたんだ」

「え、あ、いいバイトですね。書店と併設だから、本も割引で買えたりするんですよね」

「うん、でも漫画雑誌は割引無かったからね」

「ええ、もったいない!」

「でも、イベントのチケットとかも扱ってたから、そっちの方は助かったな。大きな声じゃや言えないけど、友達には正規の値段で売ってやって、自分の分タダにしたりはした」

「まあ」

『いらっしゃいませ』

「あ、ケーキセット。二つでいいかな?」

「はい、イチゴケーキをミルクティーで」

「俺は、タルトをグリンティーで」

「はい、ケーキセット、イチゴケーキのミルクティーとタルトのグリンティーでございますね」

「「はい」」

 声が揃って、フランツは少しバツが悪く、クリスはクスクス笑ってしまった。

「うけたまわりました(^^)」

 笑顔でカウンターに向かったウェイトレスを思わず見送る二人。

「きれいなエルフさんですねえ……知ってる人ですか?」

「いや、俺がバイトしてたのは二十年も前だ」

「あ、そうなんだ」

 年齢的にはフランツと釣り合いがとれるし、店のオーナーのように落ち着いて気品があるのでフト思ったクリスだった。

「フフ」

「え、なんですか?」

「いや、思ったほどにはくたびれてない感じでよかった」

「あ、そう見えます?」

「え、そうじゃないの?」

「いえいえ、そんなことは(;^ω^)」

「え?」

「あぁ、いえいえ(^^;)」

「初めての担任だし、あいつも受け持ってもらったし、どう、クラスの様子は?」

「あ、ええと……」

 少し単刀直入だったが、それでもポツポツと語りだすクリスではあった。



※ 主な登場人物

・服部ハンゾウ             瑞穂の国から来た魔法学校の過年度生
・ミーム                白エルフの王女
・クリスティン・クライル(クリス)   1年5組担任
・フランツ・ミューラー         1年学年主任
・ユルゲン・フォン・コンスタンティン  校長
・アグネス・アイヒホルン        教頭
・他の教師・職員            ヨーゼフ(教務部長) ワイコフ(主事)
・同級生                マチルダ ヤコブ ステファン アリシア ブルーノ
・上級生                ベロニカ(生徒会長) 
・フエアトライト            ベロニカの使い魔
・エフタル               魔導士             

※ 参考語句

 ヴェルト世界 メイゼン王国 メイゼンシュタット王立魔法学校 ハーケンドルフ王国 瑞穂国 瑞穂忍者学校 ノルデン公国 エルフェン辺境伯領 ミッテル王国 ズューデン共和国 ホーランド国 カフェミネルバ
    
 

まりあ・099

『総攻撃前・9・ブリキマンとそのオマケの到着』




 まりあたちがアンプレアブルしないで3番ホールまで周れるようになり、稲荷ずしに替わって巻きずしに挑戦した日の夕方、ブリキマンが自力飛行でやってきた。

「思ったより早かった!」

 喜んだどろしーだが、徳川曹長が水を差した。

「どろしーが乗り込んでエンゲージできるところまでは回復してないみたいだ」

「「「「ええ!?」」」」

 これには、どろしーだけでなく、日本チームの四人も驚いた。

「ヨミの攻撃が近そうなんで、とりあえず避難させてきたというところなんだろう。ここの設備でやれるだけのことはやるさ」

 請け負ってくれる曹長だけど、表情は硬い。

「背中に、なにかしょってるぞぉ」

 後ろに周ったナユタがブリキマンの背中を指さした。曹長も初めて気づいてタラップを掛けて確かめる。

 ガチャ

 曹長がハンドルを回すと、ロックが解除されてハッチが開き、見覚えのあるオッサン二人が顔を出した。

「「「「あ!?」」」」

 それは、中華飯店9090のウィッテと小林だった!

「おっちゃんたち、どうして!?」

 ナユタが先頭になってオッサン二人を取り巻いた。

「いや、ポーツマスに避難命令が出てねえ……」

「とるものもとりあえず、みんな身一つで町を出たんだけど、ヘンリー准将が『オーガスタの厨房をやってくれるんなら、二人の体と中華鍋は送ってやる』と言ってくれて。なあ、ウィッテ」

「ああ、これが委嘱状です、大佐」

 異変に気付いてやってきたボギー大佐にウィッテが封書を渡す。封書には委嘱状の他に添え書きが付いていて——ポンジーの防御は万全だが市街地までは手が回らない、上手い飯を作ってもらって頑張ってくれ——と書いてある。

「分かった。今のところは稲荷ずしと巻きずしで盛り上がっていたが、他には備蓄のレーションしかないんだ。期待している」

「任せてください」

 オッサン二人が厨房に案内されると、徳川曹長はモニターを衛星カメラに切り替えて、ポーツマスの街を映した。

「たしかに、軍の関係者以外、車も人影も見えませんねえ……」

「予想以上にヨミの侵攻が早くなっているようだなあ……」

「ん? これは……」

 ポーツマス全域を画面に収めようとカメラを引いて行くと、街の西、グレート湾に黒い影が差してきた。

「雲が張り出してきたのか?」

 まりあたち三人は心配顔で画面を見つめるだけだったけど、中原中尉が別のモニターで気象映像を呼び出した。

「ニューハンプシャー南部は快晴です、雲じゃありません!」

 中尉の答えに、曹長は影の先端部分を拡大した。

「こ、これは!?」

 !!?

 曹長の声に全員が息を呑んだ。

 黒雲は、何億、何十億……あるいは、それ以上の大小さまざまなテディーベアが集まった黒雲だった!


 ☆彡 主な登場人物

・舵 晋三      永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ     晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎     特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ     特務旅団少佐
・中原光子中尉    みなみ大尉の副官
・金剛武特務中佐   ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ       ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長      みなみの世話係
・まりあの友達    釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生     瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子     舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵     時子の祖父(080で死亡)
・ケティちゃん    晋三といっしょにしまい込まれているマスコット
・メグリ先生(?)  晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団    どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐
 
 

くノ一その一今のうち 閑話休題編

136『バテてきた義経くん・長良大橋』 そのいち




 木曽川を渡って大垣市に入る。

 ここまでは概ね旧東海道に沿っていた。それなら南に向かって伊勢に行くのが順当だし、稲杵姫(いなきひめ)を預かっての旅だから、神さまの元締め伊勢神宮に寄っていくのが礼儀。
 だけど稲杵姫は、勾玉のままで義経くんのように実体化する元気もない。一刻も早く出雲に着かなくてはならないので、いまの東海道線に沿って道を進む。

 長良川手前のお寺に泊って……寝過ごした(^^;)。

 愛知県に入ってから戦うことが多かった。桶狭間とか名古屋城とか……それに、この旅は稲杵姫を出雲に届けることが役目なので、飛行機はもちろんのこと電車やバスに乗ることもできない。稲杵姫は絶えず地面からエネルギーを補充しながらでなければ移動ができないんだ。そのために、各地でいざこざや問題にぶつかって……でも、そのおかげで、義経くんやウメなんかがメンバーに加わって賑やかになった。

 まあ、世の中のことは裏と表、プラスとマイナスがある。楽しみながら行こう!

 例によって、地元の高校生に化ける。化けると言っても制服が変わるだけで中身は変わらない。わたしはわたしだし、百花は百花、ウメはウメ。

 えい!

 掛け声かけることもないんだけど、勢いよく、地元の大垣高校。

 襟をセーラーにしたブレザーでカッコいい。

「「「あれ?」」」

 なんと、義経くんも同じ女子の制服!?

「なんやぁ、そういう趣味やったんか (⩌⩌;)」「やけど違和感なくて、よけい怪しいてかんわ」

「もう一回やってみて(^^;)」

「あ、うん。忍法、衣替え!」

 魔法で言うところの詠唱をかける。

 ちなみに、忍法は全て無言でやるのが掟なんだ。いちいち声に出してやっていたら、敵に悟られてしまうからね。

 で……声に出しても女子のまま。

「まあ、違和感ないし、このまんまでええがや」

「ええぇ……(;'∀')」

 やっぱり源氏の御曹司、源平時代の若武者、女子の姿はイヤみたい。

「髪の毛、デフォルトにしてみて」

「えぇ、ちょん髷だよ」

「ええからええから」

「え、ちょっとぉ」

 ちょん髷になったとたんに、元結の紐を外され、ワサワサされるとセミロングの美少女JK。

「違和感なし!」「うんうん!」「さ、いくよ!」


 変則的なJK四人組で西へ。


 女装になって元気のない義経くんを最後尾にしてぶち当たった長良川に沿って北へ。すぐに長良川大橋にぶち当たって西に渡る。

「ちょっと、義経くん遅れてるよ」

 サッサと前を行く二人を呼び止める。

「はよおいでぇ、渡り切ったら休憩にしたるさかい!」

「ああ、ごめーん(;'∀')」

 百花に急かされ、額の汗を拭う義経くん。

「もう、ちょっとだから」「ほれほれぇ」

 励まして300メートルあまりの鉄橋を渡ると……また鉄橋。

 橋を渡るのは微妙にストレスみたいな義経くんだ。

「犀川だねえ」「短い橋やわ」「もうひと頑張りだぎゃあ」

「う、うん(^^;)」

 女子三人にいっそう励まされ、なんとか笑顔を返す義経くん。

 橋を渡り切ったら公園がある、そこで一休みだ。


 数分で犀川の橋を渡って、振り返ると義経くんの姿が無い!


「え?」「あれ?」「なんで?」

 川の上下に分かれて、土手や川面、鉄橋の裏側を探す。

『お~~いぃ…………ここだよぉ、ここぉ』

 後ろで声がして振り返るけど姿は無い。

『こっちぃ、鞄の中だよぉ~~』

「え、もどっちゃったの!?」

『実体化する元気が無くてぇ~~』

 最近、元気が出てきた義経くんだけど、やっぱり、ずっと実体化してるのは堪えるようだ。

 義経くんの元気の元は、大阪の大宮神社。大垣からだと、まだ七日はかかるか…………。

 

 ☆彡 主な登場人物

風間 その(そのっち)  世襲名・そのいち ノッチと約めて呼ばれることが多い
風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
中村 百花        薩摩の山潜衆の忍者
義経           藤沢の首洗い井戸で出くわした。
ウメ           熱田神宮のならずの梅(133回から)
小泉八雲         116回から登場
忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
神さまたち        猿田毘古神 ヤマトタケル
    

王立魔法学校の年度生

018・『生徒会長 ベロニカ・フロイデンタール・2』




「わたしの真名はベロニカ・フロイデンタールではないんだ」

「ほう……」

「ベロニカ・コルネリウス・アグリッパという。フロイデンタールというのは代々世話になっている家でな。むろん戸籍上の姓はフロイデンタールなのだが」

 ハンゾウはわずかにたじろいだ。彼女が口にした姓は、瑞穂にも聞こえた人物のものだからだ。

「コルネリウス・アグリッパというのは、ハインリヒの?」

「おお、君は、ハインリヒ・コルネリウス・アグリッパを知っているんだな」

「はい、ヴェルト世界屈指の英雄ですから」

 施設面から見た生徒会のポテンシャル、そこの生徒会長という立場。ベロニカ本人から感じられる力。そして、なによりも、この世界に来てからのハンゾウの行動を知っている事実を勘案して、オープンな親近感を見せて対応すべきと判断した。

「我が高祖父を知っているなら話は早い……これを見てくれ」

 ベロニカが手を差し伸べると、控えていた秘書が空中から古い本を出して渡す。自分と同じ収納魔法なので、親近感を覚えるハンゾウだ。

「これは、高祖父の残した黙示録なんだが……ここに君のことが書かれている」

「僕のことがですか?」

「ああ、紀元1180年の秋、瑞穂より忍びの若者が現れ、わが子孫の手助けをするであろう……とな」

「は、あ……それだけですか?」

「これはキャプションだ。さすがに本文は見せられん。これに従って、君の様子を観察していた。対面式のときには確信したんだが、さっき言った通り、年度初めのあれこれや引っ越しの準備に追われて、今日になってしまった。で、これからのことなのだが……」

「待ってください、状況はわかりましたが、僕になにをしろとおっしゃるんですか?」

「手伝ってほしい……いや、いっしょに戦ってくれ」

「戦うんですか!?」

「すまん、性急な言い方をしてしまったな……黙示録の次のページには、魔王の再侵略が開始されると出ているんだ」

「魔王の再侵略?」

「ああ、君も知っていると思うが、このヴェルト世界は千年の昔に魔王の侵略を受け、百年余にわたる戦いの末にやっと勝利した。その魔王が、千年の時を経て再び攻め寄せてくる……と、我が高祖父は予言している」

「はあ…………」

「会長……」

 秘書が小声で腕時計を示した。

「すまん、性急に過ぎるな」

「続きは、わたしがお伝えする……ということで、どうでしょう。そろそろ午後の授業が始まります」

「そうだな、そうしよう」

「では、わたしのこともお教えしてください」

「うん、あ、君も二年生なのかなあ」

 胸の学年章でハンゾウは判断した。

「学年は、いかようにも」

 学年章がクルクル変わっていく。

「他にも……」

 顔とスタイルもクルクル変わる。

「すごい魔法だねえ!」

「彼女は使い魔なんだ」

 会長が指を振ると、秘書は紙飛行機になってテーブルに着地した。

「とりあえずは、紙飛行機の姿でそちらに行かせる。君も毎日忙しいだろうが、よろしくお願いするよ」

「はい、いろいろ続きの話を聞いてからですが」

「うん、それでいい」

 キンコーンカンコーーン…………

「あ、鐘が……」

「すまん、ショートカットさせてやろう。こっちを向いて……」

「え?」

 いっしゅん真っ白になったかと思うと、ヤコブの後ろ姿が浮かんできて、教室の自分の席に座っているハンゾウだった。

 

※ 主な登場人物

・服部ハンゾウ             瑞穂の国から来た魔法学校の過年度生
・ミーム                白エルフの王女
・クリスティン・クライル(クリス)   1年5組担任
・フランツ・ミューラー         1年学年主任
・ユルゲン・フォン・コンスタンティン  校長
・アグネス・アイヒホルン        教頭
・他の教師・職員            ヨーゼフ(教務部長) ワイコフ(主事)
・同級生                マチルダ ヤコブ ステファン アリシア ブルーノ
・上級生                ベロニカ(生徒会長) 
・?                  ベロニカの使い魔
・エフタル               魔導士             

※ 参考語句

 ヴェルト世界 メイゼン王国 メイゼンシュタット王立魔法学校 ハーケンドルフ王国 瑞穂国 瑞穂忍者学校 ノルデン公国 エルフェン辺境伯領 ミッテル王国 ズューデン共和国 ホーランド国
    
 

まりあ・098

『総攻撃前・7・テレジアと稲荷ずし』




 具は錦糸卵と人参とゴマ、いたってシンプルな稲荷ずしだったが、おいしくいただいたクルーたち。

 俺にもお供えしてくれると思ったけど、俺は相変わらずケティちゃんと通学鞄の中だ。

『少しずつ自立してるのよ』

『ああ、べつにぃ……』

『晋三だってさ、アメリカに来てから、ケティには話ししないじゃないの』

『え、あ……』

『いいのよ、まだまだ戦いはつづくけども、ケティや晋三のこと思い出さずに居られるってことはいいことなのよ』

『……そうだよな……俺も、ぼちぼちご先祖様の仲間入りなのかもな』

『フフ、まだ、やっと三回忌が終わったとこじゃないの』

『そりゃあな。ヨミとの戦いでは法事どころか葬式もあげてもらってないホトケさんがいっぱいいるからな』

『ほんとはね、まりあの能力って、晋三にもあったのよ』

『……そう』

『反応うす~い』

『死んでも意識あるし、ケティとも話ができてるし、俺って並みのホトケさんじゃないんだろ?』

『そうねぇ……』

『ほかのホトケさんってさ、メグリ先生が見せてくれただけで、リアルでは会ったことないし』

『そだね……』

『でもね……こうやって意識があるってのは……』

『いずれ、晋三の出番がやってくるわよ』

『今だって出てるだろ。みこころ(インテグレーションモード発動)は、俺が仲介しないと発動できないし』

『う~~ん、そういうサポート的なことじゃなくてぇ』

『え?』

『あ、やっと来た』

 人の気配に俺もケティも口を閉じた。喋っていても人には分からないから意味ないんだけど、俺は……いやケティも人恋しくなっていたのかもしれない。

『あれぇ?』

 ケティは声を上げたけど、俺も——あれ?——と思った。

 やってきた気配はまりあだったけど、部屋に入ってきたのはテレジアだ。

「えーとぉ……もう、みんな荷物置きっぱなんだからぁ……とりま、ぜんぶ持っていくかあ」

 そう言うと、テレジアは部屋に置かれた私物をカートに載せて移動させる。

 部屋は格納庫の予備室で、まりあたちの部屋が準備されるまでのとりあえずだった。稲荷ずしとゴルフに熱中して、つい後回しになっていたのをテレジアが気を利かせたみたいだ。

 ゴトゴトゴト

 カートに揺られてたどり着いたのは、普段は使われていない居住区。

 もう、何年も使われていないので、掃除やらチェックやらしなければならないんだけど、みんな稲荷ずしとゴルフにかまけて後回しになっていた。そこで、作業が済んだテレジアが気を利かせたというところだ。

『マリアころみたいに食事ができないものねぇ』

 ケティの言う通りだ。

 テレジアは元々はアクト地雷で、まりあが特務師団に呼ばれた時に大改造されて、まりあの影武者になった。その後不幸な事件で廃棄寸前まで痛みつけられ(029:火柱まりあ!)、なんとか持ちこたえた後はガードに徹し、スペックの高さから、出動時の早期警戒から、ウズメ02の制御まで任されている。もっとも、ウズメ02にスペースが無いので、制御体(パイロットボディー)が別に作られた。その改造、改良の過程で、食事をするとか涙を流すとか汗をかくといった人間的なギミックが外されてしまったんだ。

「個室は用意できなかったから、大部屋で辛抱ですよ~」

 そう言いながら、カートの荷物を個人別に、クルー四人のベッドの上に置いていく。

 最後にまりあの荷物を置くと、俺とケティを棚の上に乗せてくれた。

『『おお~~~』』

 ケティと声が揃った。

 家の仏壇以来、明るい場所に出るのは初めてだ。長らく、引き出しやカバンの中だったので、思わず声が出てしまったわけだ。

「あ、そうだ!」

 なにか閃いて、いったん部屋を出るテレジア。

「ヘヘ、ちょっと雰囲気でしょ」

 戻ってくると、ラップにくるんだ稲荷ずしを二つお皿に載せて持ってきて、俺たちの前に供えてくれた。


 ☆彡 主な登場人物

・舵 晋三      永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ     晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎     特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ     特務旅団少佐
・中原光子少尉    みなみ大尉の副官
・金剛武特務中佐   ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ       ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長      みなみの世話係
・まりあの友達    釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生     瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子     舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵     時子の祖父(080で死亡)
・ケティちゃん    晋三といっしょにしまい込まれているマスコット
・メグリ先生(?)  晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団    どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐