sa




【マーケティングができない世界】


マーケティングは、一言で言うと、売れる仕組み作りだ。

「ライバルとの競争に勝ち抜かなければならない」

「ここで売上げが伸びなければ未来はない」


 このように、緊迫感を持つことのない世界では、マーケティングについて、頭で分かっていても、実際は、マーケティングとは、ほど遠い施策を持ち続けていることが多い。

書籍、新聞、レコード業界がそうだ。全国どの地域でも平等かつ身近に文化を享有できるためにという名目で「再販制度」が敷かれている。売れようが売れまいが、書店には一方的に配本され、売れなければ返品して買い取ってもらう。書店では客に背を向けて返品の梱包にいそしむ店主の姿が見える。

 土地開発公社、住宅共給公社などの公的機関もマーケティングからほど遠い。これらの公社は、取得に要した土地代に、人件費、諸経費等を加えた額を販売価格としている。

 取得した土地が、担当者の非力によって、どんなに高くつこうが、経営がどんなに効率が悪かろうが、かかった費用の上に所定の諸経費を加算する仕組みになっている。土地の価格が上がり続ける時代であれば、少々乱暴な価格設定でも、何年かがまんすれば、元を取り戻すことができた。ところが、今は、価格が上がるどころか、逆に物価が下がる時代だ。取得する土地は、中心部からだんだんはずれ、条件が悪くなっていく。誰が考えても経営は厳しくなる一方だ。公的なサービス実施機関のほとんどが、ろくな市場調査も行わず、最初から価格が設定されていたり、サービスの対象や方法が決定されたりする。マーケティングという観念は、そこにはない。だから売れ行きが悪いと、出てくる施策は2つしかない。1つは「根性論」、もう1つは「身内でカバー論」である。ある自治体では公費で野球場を設置したが、客の入りが悪く、職員がチケットを買わされているという。