ことばの泉



   連絡船


八甲田丸は 過剰なワイヤーで繋がれていた

まだ 青函トンネルができて間もない頃だ


青森-函館間の快速が何本も

青森から出ていた


役目を終えた連絡船は

函館に 摩周丸

青森に 八甲田丸

東京お台場に 羊蹄丸と

保存されていた


しかし この過剰なワイヤーは何だ


やはり 八甲田丸は

出航時刻になると 函館に向かい

出て行こうとするのだ


自分が自分であることを

永遠に 主張し続けるのだ



ことばの泉



   天


青森の 暗い港を出ると

空は少し 素顔を見せた


雲の裂け目から覘いた

さみしく 蒼い



ことばの泉



   凍みる


塩俵岩に ぶつかった浪は

瞬時にして 浪の花になり 中空を漂う

ドッペルゲンガーに出遭ったぼくは

やはり 泡になり 空中を漂っている


冬よ

冬よ

冬よ


僅か 数mgの

ぼくの実在を 赦し

表示せよ


ああ

ぼくは 実質量

ゼロ以下だ