非常に親近感のある動物が『馬』でして、小さいころやたらと描きまくったのを覚えています。
テレビに映るサラブレッドの美しい姿に、その馬自身や周囲の人々のかかわりなども絡んでくるといよいよ思い入れが激しくなります。

そこで、個人的に思い入れの強い、三頭の競走馬をご紹介したいと思います🏇





最後は


タマモクロス


 その馬は、毛並みが茶色くも黒くもなく、グレーっぽいというか白っぽいというか、またそうした色合いの馬には目立ちやすい斑模様もあるような見た目。脚の長さの割には体つきも小さく、牝馬と言われても、という華奢な馬体。
 食が細い。ただ、

医者によれば『心肺機能は優秀』との評価があったという。



 父・シービークロス。『白い稲妻』と呼ばれた芦毛の馬体。当時はオープンだった金杯、毎日王冠、目黒記念に優勝。
 母・グリーンシャトー。立派な体躯でやや繊細な面も。大好物はメロン。かわいらしい



 デビュー戦は2番人気、逃げるも7着。続く二戦はダート。その2戦目、通算3戦目で初勝利。芝の条件レースに進むも、前の馬の落馬に巻き込まれるかたちでの落馬。さらに暴走して体じゅう打撲し、周りに極端に怯えるようになってしまう。

 同じころ、生まれ育った牧場が経営不振から閉鎖した。牧場で過ごしていた各馬はそれぞれ引き取られることになる。すでにデビュー前に引き取られていた母馬が亡くなったのもこの時期に重なる。




 故郷はなく、母はなく、自身は打ちのめされ。。。




 ダートを4戦するも他馬を避けるように走るなどしてしまいどうにも勝ちきれない。




暗中模索の一手、芝レース再転向




 初戦、7馬身差、優勝。
 次戦、8馬身差、優勝。
 菊花賞の秘密兵器と騒がれるも、身体のことを第一に考えて、自重。

 続いて格上相手の重賞レース。6馬身差、優勝。
 有馬記念への出走を期待されるも、身体のことを第一に考えて、自重。


 目指すは、『春の盾』


 年が明けて初戦。最後の直線100mで他馬15頭全てゴボウ抜きで優勝。
 続く阪神大賞典。めずらしい同着優勝を記録。



 そして迎えた天皇賞・春。3馬身差の完勝。



 続いて、人気投票第1位で出走する、宝塚記念。それでも2番人気に、1番人気は短距離王・ニッポーテイオー。盤石の位置取りで進む相手に最後の直線並ばせることなくかわし、2馬身半差で完勝。相手陣営からも脱帽の声。7連勝。



 秋。一頭の馬現る。オグリキャップ。地方・笠松競馬の雄にして、中央デビュー後も負けなし6連勝。何より、同じく『芦毛の馬体』。

 結果、この秋のG13連戦、秋天・JC・有馬は、この『芦毛の怪物』2頭の揃い踏みにより、空前の盛り上がりとなる。

 初戦、天皇賞・秋。大方の予想を裏切って、タマモクロスがスタートよく好位置につける。オグリキャップが追う展開。距離とこれまでの経験値もあってか、最後の直線でオグリキャップが真価を見せるも、タマモクロスは先頭を譲ることはなかった。

 それは、天皇賞というレースが、春3200m、秋2000mとなり、その結果として勝ち抜け制度もなくなって以降初めて、一頭の馬が同一年の天皇賞春秋連覇を果たしたという、たいへんな偉業。
 また、天皇賞・春、宝塚記念に続くG1レース3連戦3連勝という、これまた史上初の偉業を成し遂げる。



 しかし、誰も来ない生産者の表彰台。。。

 




 タマモクロスの紹介としては、ここまででよいかも、と思う。

 続くジャパンカップ。外国産馬ペイザバトラーの戒告処分を受けるほどの斜行に屈し、2着。オグリキャップ、3着。勝者はこの日本馬2頭を徹底マークしていたようである。
 そして有馬記念。忘れてはならないこと。たった一年前、菊花賞も有馬記念も大事をとって走らなかったこと。そもそも牝馬に間違われるほどの華奢な馬体。レースごとに飼い葉食いが細くなる。。。もう力は残っていない。それでも、、、
ファン投票1位で出走。後方から直線鋭い脚で先行するオグリキャップに外から並びかけるも半馬身届かず2着。
 年が明けて、引退式を行なった




 ちなみに、残されている映像でレースを見ると、スタート・普通。でも身体が小さいこともあってかなんかいつも自然と後方ついて回る感じ。省エネ。空いていたら上がっておく。省エネ。直線・みんなが横一線ヨーイ、ドンになった瞬間、開いた内側をスピードに乗ってスルスルと交わしながら、ゴール前でちゃんと勝つ。
 強さの秘訣は『強靭な心肺機能に裏打ちされる、息の長い驚異的な末脚』と評価される。連勝の間は、最後の直線では最内をこじ開けて優勝したこともたびたびあり、他馬を恐れることも克服した。低く沈み込むようなフォームは『大きな犬を思わせる走法』というめずらしい表現で喩えられる。

 すごく明晰な、なんだろう、自分の強みを理解して最大限活かすように、自分で考えて走っているように思える印象があります。
 ひとつオススメするとすれば、1988年1月5日・金杯。勝つということを理解して、意志を持って走っていると、ぼくは思いました。。。

 そういえば、レースが近づくにつれて食が細くなり、重賞レースが続くたびに馬体重が落ちて、それでも8連勝にジャパンカップ2着・有馬記念2着ですから、そして繰り返しになるが馬主と離れ、母とも離れ、それでも走る。






タマモクロス
1984.5.23-2003.4.10
父:シービークロス
母:グリーンシャトー
18戦9勝(G1 3️⃣勝)、2着3回
1988年 天皇賞・春
1988年 宝塚記念
1988年 天皇賞・秋
1988年 年度代表馬