W杯派遣選手選考合宿に6日、ラトビア・シグルダに入った。
プッシュ選手権後から出発までの約2週間は、あまりに忙しく、心はなくさなかったけど、考える余力がもはやなく、やらなくてはならないことをただただ淡々とこなして過ごした。
まあ、遠征前ってのは、いつでも忙しいけれども、五輪シーズンのせいか、余計に準備が多いようにも感じた。

こちらに到着してからは、もはや、練習と睡眠を交互に行うこと以外にできない状況だったのだけど、先ほど、ようやく少しだけパソコンに向かおうかなという気分になれた。

8年ぶりに訪れたラトビアの話もいっぱいあるのだけど、今回、この合宿の直前にちょうど手元に送られて来た「堀内康司の遺(のこ)したもの」という画集について。

堀内康司という信州(松本)に育った画家。私の実家の祖母(故人)と父親が懇意にしていたため、子どもの頃、よく訪れていたおじさんで、私もかなりお世話になった。生きていれば80歳ちょっとになるのだけれども、ちょうど3年前、私が会社を退職した直後に亡くなり、父親と共にお通夜へ上野に行った。

天才画家で社交家。池田満寿夫を世に知らしめる手助けをするなど、他人の世話もよくしていた。
ある時筆を折って、その後は目立った作家活動をせず、雑誌の挿絵を描いたり、競馬雑誌の記者として活動、さらには美術愛好家として後輩らを後押しした。

このたび、縁あって、画集に私も「堀内のおじさん」との思い出を記事に寄せた。
この執筆をしたのは、ちょうど6月頃、北海道で書き上げたが、自分自身のルーツを探るきっかけにもなり、今なぜ自分がこのような生き方をしているのか、何に影響を受け、どう歩んでいるのか、などをあらためて振り返ることができ、競技活動をするにあたっても心理的に大切なことを知ることができた。
私の幼少~少年期に大きな影響を与えてくれたこの人物の画集が、ちょうど、戦いに出発する前日に手元に届いた。
旅の荷物が重いため、厚い本を持って行くのはためらっていたのだが、絵の力強さに何か励ましを得られるように思い、スーツケースに無理矢理詰め込んだ。
長野出発の1時間前というギリギリの時間にも関わらず手元に届いたのも、決して偶然ではないと感じて、ラトビアに一緒に旅立った。

私は「松本が育てるDNA」という題名で記事を寄せた。
文章のことはともあれ、絵が素晴らしいです。本物です。
両親を戦争がきっかけで亡くした画学生であり、その後の生き方にも少なからず戦争の傷跡が残っていたのだなあと画集を手に取り、知った。
こんなふうに生きた人がいた、純粋な芸術へ心を寄せた魂があり、素晴らしい作品が残っているということを多くの人に知ってほしいと思う。
良かったらお手に取ってご覧ください。

求龍堂という美術本の名門出版社から3000円で出ております。
「堀内康司の遺したもの」