花のことば
石垣りん 1920-2004
昔々
立身出世という言葉がありました
それはどういうことですか
意味はさっぱりわかりません
咲いている花が
尚 その上にお化粧することを考えた
そんな時代の言葉です
しあわせなことに私たち
唯 咲くことに一生懸命
いのちかたむけてひらくばかりの私たち
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青春時代に
夫や友人たちと愛読したことのある
石垣りんさんの詩を
新たに出版された岩波文庫本で
久しぶりに読みました
生活に根ざした事柄を
平易な言葉で綴りながらも
物事の本質を鋭く抉った
心にじんわり突き刺さる作品が
たくさんあります
この『花のことば』もその中の一篇です
久々、目にした
『立身出世』という四字熟語
広辞苑では
社会的に高い地位について
有名になること
と、説明されています
石垣りんさんは
さっぱりわからないと言い
咲いている花が
尚その上にお化粧することを考えた
そんな時代の言葉
だと、続けています
言い得て妙、すとんと腑に落ちます
咲いている花に
さらにお化粧する必要など
ないではないか
咲くことだけにいのち傾けようと
それが幸せなのだと
私も思うのです
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