「かわいそう」とは、
同情なのか?見下しているのか?
自分の虚栄心を満足にさせるものか?
小学生の時に、自他とも認めるお姫様がいた。
すべすべての肌に可愛い瞳には、
可愛い服や可愛い髪飾りが似合っていた。
真似したくてもできない・・・自分なんてという気持ちが
ブレーキをかける。
だが、自分と同じでどこにいても色彩がなく、
よくいえば溶け込み、悪くいえばすぐに忘れてしまうような子が、
お姫様の真似をはじめた。
「かわいそうな子」
ちょっと小バカにしてほくそ笑む自分がいたのだが、
少女から大人になる手前に久しぶりに再会したその子は、
ファッション雑誌から飛び出てきたような華やかな女性に
なっていた。
だが、相変わらず真似して「かわいそうな子」と思えなかった。
彼女は、自分を手に入れたのだと思うと羨ましかったから。
遠い遠い、乙女時代を心地よく回想する自分は、
「かわいそうな子」でとまってしまっているのかも
自分は真似も出来ないのに、色のついた子になりたいと・・・
自分を「かわいそうな子」だと酔いつつも、
自分より「かわいそうな子」を見つけてしまう。
蜘蛛一匹の始末も付けられないから、
自分の始末も付けられないのか。(本文より)
今回紹介するのは、「かわいそう」を抱える人たちの物語。
「あのひとは蜘蛛を潰せない」
あのひとは蜘蛛を潰せない (新潮文庫)
562円
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ドラッグストア店長の梨枝は、28歳になる今も実家暮し。
ある日、バイトの大学生と恋に落ち、ついに家を出た。
が、母の「みっともない女になるな」という“正しさ”が
呪縛のように付き纏う。
突然消えたパート男性、鎮痛剤依存の女性客、
ネットに縋る義姉、そして梨枝もまた、かわいそうな自分を抱え、
それでも日々を生きていく。
ひとの弱さもずるさも優しさも、余さず掬う長編小説。
olive@olivedayo#あのひとは蜘蛛を潰せない これって自分では?と思わせるヒリヒリと痺れる毒蜘蛛の世界観。恋をして呪いの言葉だった「みっともない」の先はしたたかでずるくて、でも弱くて優しいことを失敗を経て知り、やがて家蜘蛛を見つける。捨てキャラがい… https://t.co/xuTOI9fFRz
2018年03月03日 18:09
最近、彩瀬まる作品がお気に入りだ。
といってもまだ2冊しか読んでいないのだけど
タイトルがなんともインパクトがある。
蜘蛛を潰せない人・・・
人は、表向きには蜘蛛なんて潰せるよ!顔していても、
繊細でナイーブでズルくて弱くて寂しがり屋で、
そんなちょっとした蜘蛛を潰せない部分を持っていたり
するのではないだろうか?
放送中ドラマ「anone」が好きな人は、
この作品が好きだと思う。
「anone」に描かれている、
人間のズルさや弱さや、優しさがこの作品にも描かれているから。
気まぐれに人に親切にするのは楽しい。けど、それをねだられのが
当たり前になると、だんだん面倒くさくなってくる。・・・
かわいそう、優しくしなきゃ、とそれだけの心ではいられない。
(本文より)
「かわいそう」は面倒くさくもあり、「かわいそう」はすぐに忘れる。
「かわいそうで、それでも、どうすればいいの」(本文より)
物語の中で、主人公は自分なりの「かわいそう」の答えは見つける。
自分に悔いを残したくない。
わからない。
星のように散らばる無数の暗渠をこれからも繰り返して
見つめることになるだろう。(本文より)
「anone」の中で語られた名ゼリフ。
人は手に入ったものじゃなくて、
手に入らなかったもので出来ている。
そう、人は無数の「かわいそう」で出来ているのではないのか?
だから、人に優しくありたい。
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