一九九九年三月 

ナリタ 北ウイング 

夜間飛行 南方行き

いつになく余裕のチェックイン 

常温酒二合 江戸前寿司四品で就寝準備




ショップルートに小気味よいバスドラと歌声

どこか懐かしみのある声色はデジャブーなの?

フレッシュなリズムの音源に接近

堆く何段にも積まれた当該曲のアルバムCDをGET

少しの酩酊か CD購入そのことを忘れた




この頃 頻繁な海外行きで ハンコを押す余白少なく

増補増頁してもらったリニューアルパスポート




埃っぽいシェンヂェン(深圳)から上海に舞い戻る

深圳の seafood restaurant でのお刺し身饗応は良かった

チューブ練りワサビの蛍光グリーンには参ったが

上海のタクシー乗り場 前方の見返り美人

列は長く 彼女は長身

乗り込む時にまた振り向いた また眼が合った

ロータリーを一周して手招きされた

急ぎガラガラとトランクを引く

映画のような展開だったな




当時有ったのに

今のデスク周りに存在しなくなったもの



 これまでの人生で関係した数多くの鍵の束

 親父の遺品 モスグリーンボディのシェーファー’54

 レモン風味の消しゴム

 Mac Plus の黄ばんだマウス

 肺病に直結しそうな濃い群青色のピー缶

 ジェネリックに置換されてしまったピンクの薬物

 UNIの2Bのシャーペン替え芯

 

数週間後、生活用品のトランクを解く

ああ あの時のCDか

深夜に倍音で聞いたが 流行っているみたい

big sale のテンミリオンCD




その時には気付かなかったが少し後

そうだと知った時には激しく揺さぶられた

100万枚くらいは彼女の出自によるものだと

思いたかった




合掌 安らかに