日曜日(1/11)には 工芸作家の友人と ”川瀬巴水展(版画)” を見に行きました。
けっこう早目に行ったのに朝から "行列" は想定外でした。 (ノ゚ο゚)ノ
会場の混雑ぶりにも驚いたのと同時に ”巴水” への関心の高さを思い知らされました。


川瀬巴水(明治16年~昭和32年)
家業を継いだが画家の夢が諦められず、27歳にして鏑木清方(日本画)の門を叩くが
断られ、進められた洋画の道へ進むも挫折。
再度 清方に入門を申し出て修業の後 ”巴水” の雅号を与えられる。
同門の伊東深水の”近江八景”(版画)に感化され版画家に転向。
ようやく軌道に乗ってきた頃、関東大震災で全てを失う。
その後精力的に全国を旅し、作品の制作に勤しむ。
失われつつある日本の何処にでもあった風景(光景)を作品の中に残す。
「昭和の広重」 「旅情詩人」 とも言われる。
海外での評価が高く 葛飾北斎 歌川広重 と並び称される。
昭和の広重とも言われるようですが
私にはもっとリアル(写実的)なように思いました。
作品を間近で見て、どこまでも細かく(細密)に描かれているのには驚きました。
「今、この光景を作品の中に描き残すんだ」 ・ ・
という ”情熱” のようなものさえ感じさせられました。
どんなに細密であっても 神経質さを感じさせないのは
作品から滲み出る ”詩情” の為でしょう。
現代人が見ても 何故か懐かしく感じられるのは
受け継いで来た日本人の感性(DNA?)なのでしょうか?
写真を撮る事が趣味なのですが、写真でいえばなんとも
「気の利いた良いアングルで捉えているなぁ」
というのが正直な感想です。
画家さんのアングルとは違うと思います。
(たとえば人物画だったら対象物に真正面から向かって
その人物像が浮かび上がるようなタッチで描くとか
別の対象物でしたら質感をいかにして描き出すとか?)
自分の足で歩き回り 自らの感性に従い 発見した
”ベストショット” なのではないか? ・ ・ と感じました。
まるでカメラマンのようです!!
作品を鑑賞する中で気付いた事 ・ ・
一つの作品を ”色々な摺り” で試してみたり
一点の作品を作り上げるのに 目に見えない
様々な試行錯誤の末の ”一点” なんですね。
現場で写生した水彩画も並べて展示されていましたが
版画の味わい深さにも気付かされました。
旅人 ”巴水” には夜景も多くありますが
暗闇の中にも微妙な色分けがされていて
それは見事なものだと感じ入りました。
特別な大作とかはありませんでしたが
かなりの点数で ”巴水の世界” をじっくり堪能させてもらいました。
是非図録を!! と、思っていたら ”完売” 売り切れでした。
出た後の goods コーナー も大混雑で 押しくら饅頭状態の中
何とかゲットしたお気に入りの 巴水の夜景のポストカードです。
図録の増刷は2月になってから送られて来るそうなので 楽しみにしています。

東京 赤羽 昭和4年

手前岸の子供を負んぶしてあやす姿が
暗闇に浮かび上がる ”人家の灯り” と共に印象深い。
その向こう側には川面に映る ”月明かり”
行く船の影があって 向こう岸には一つ一つの人家の灯り
川面もその一つ一つを映し出している。
天からの明るい月明かりがみんなを照らしている。

埼玉県大宮 見沼川 昭和5年
川面に飛び交う蛍の群れ ・ ・ 命の輝き
家の中は笑い声で溢れているのかなぁ ・ ・
生活の温もりが川面に ~ ゆら ゆら ゆら ~
”灯り” の二重奏 ・ ・

東京大田区 馬込 昭和5年
雲間に見え隠れする ”月” と ”松” の美しさ ・ ・
ここまでだったら伝統的な ”日本の美” なのですが
巴水は右下に 一点くすんだ黄色の ”人家の灯り” を対比させた事によって
旅人 ”巴水” の人恋しさ (生活の温もり) を感じさせるものとなった。
ずっと庶民的で親しみを感じさせます。