今年の1月27日から31日までの

NHK FM《古楽の楽しみ》では

ヘンリー・パーセルが

メアリー女王のために書いた曲を中心に

パーセルの劇音楽、アンサンブル

鍵盤作品などが紹介されました。

 

そのうち鍵盤独奏曲は

全部で6曲で、その内の5曲が

グスタフ・レオンハルトの

演奏だったわけですけど

その演奏が入ったCDを

持っているので紹介しましょう

という自慢話? の続きです。

 

前回の記事はこちら。

 

 

1月28日放送分で流れた

グラウンド ニ短調 Z.D 222 以外の

残り4曲は、すべて

同じCDに入っている曲なのでした。

 

そのCDが以下に掲げる

《パーセル&ブロウ:

 オルガン&チェンバロ作品集》です。

 

レオンハルト《パーセル&ブロウ: オルガン&チェンバロ作品集》

(マーキュリーミュージックエンタテインメント

 PHCP-5326、1995.6.25)

 

原盤レーベルはフィリップスで

邦盤の規格番号と併記されている

規格番号 446 000-2 が

《古楽の楽しみ》公式サイトの

楽曲情報に書かれていたものです。

 

録音は

オルガン曲が1994年5月4日

チェンバロ曲が同年同月の6日で

使用楽器はどこにも記載されていません。

 

ロケーション(録音場所)も

オランダの基礎自治体名が

記されているだけで

オルガンはその基礎自治体にある

教会のものかもしれませんけど

教会名までは書かれていないのです。

(邦盤あるあるで、原文表記もなし)

 

まあ、それはともかくとして。

 

 

併録のジョン・ブロウは

パーセルより10歳年上の

イギリスの音楽家です。

 

ともにウェストミンスター寺院の

オルガニストを務め

王室礼拝堂のオルガニストとして

同僚にもなっています。

 

ブロウは

パーセルが亡くなった時

《パーセル氏の死に寄せる頌歌》を

作曲しており

パーセルの師匠と

目されれることが多く

そのためパーセルとのコンピ盤が

組まれることがしばしばあります。

 

レオンハルトの本盤も

その流れに棹さす1枚なのでした。

 

 

高橋昭執筆の

ライナーの解説によれば

イギリスのオルガンには足鍵盤がなく

英国国教会におけるアンセムの伴奏が

オルガンの主たる役割だったそうで

ソロ作品は短い即興演奏による間奏曲か

ヴォランタリーと呼ばれるものばかり

らしいですね。

 

そのヴォランタリーとは何か

という説明はいっさい

ライナーに書いてありませんけど(苦笑)

最近はSNSの発達のおかげで

すぐに調べがつくのがありがたい。

 

本盤を買った当時といえば

そういうわけにもいかない時代でした。

 

今回検索してみたところ

例えば以下の記事での説明が

分かりやすかったです。

 

 

バッハのオルガン曲でいえば

トッカータとかファンタジーにあたるもの

という感じでしょうかね。

 

 

今回の盤には

パーセルのオルガン曲が2曲

ブロウのオルガン曲が4曲

収録されていて

すべてヴォランタリー

という名前がついています。

 

パーセルの曲に

《ダブル・オルガンのための

ヴォランタリー ニ短調》Z.719

というのがありますけど

ダブル・オルガンとは何だと思ったら

2段鍵盤を指すようです。

 

どれも1分半から

長くても5分程度の

短いものばかり。

 

 

ちなみに

パーセルのオルガン曲に関しては

高橋昭の解説によれば

「信憑性についての問題が残っている」

とのことですけど

それにしてはツィンマーマン番号の方に

疑作を示すDなり偽作を示すSなりが

ついてないのが解せません。

 

専門的な話になるのかもしれませんが

解説で説明して欲しかったですね。

 

 

チェンバロ曲の方は

パーセルのものが

12曲収録されているだけで

ブロウの曲はありません。

 

組曲と名付けられた曲もあって

それが6分から8分程度ある他は

すべて1分から3分程度の

やはり短いものばかり。

 

ライナーの高橋の解説には

「それらは感じのよい小曲であり(略)

 アマチュアのために計画されている」

と書かれています。

 

確かに「感じのよい小曲」なんですけど

ドイツやフランスの曲に慣れていると

物足りなくもあっけない

という印象を与えてしまうあたりが

残念なところかもしれません。

 

組曲にしても

舞曲に由来する曲が

3〜4曲まとまっているから

他の曲より長くなるわけでして

1曲自体は短いものです。

 

それは

《古楽の楽しみ》で流れた

〈レッスン組曲〉ハ長調 Z.665

から採られたジーグが

1分程度の曲であることからも

想像がつくことでしょう。

 

 

なお、《古楽の楽しみ》で流れた

〈シファーチェとの別れ〉

と題された曲は、本盤の場合

〈セファウチの別れ〉

と訳されています。

 

解説の本文中では

「シファーチェ」と

記されているんですけどね。

 

放送で説明されたかどうか

分かりませんけど

シファーチェというのは

イギリスを訪れていたカストラート

ジョヴァンニ・フランチェスコ・グロッシの通称で

シファーチというのは役名に由来します。

 

やはりライナーの解説には

由来が説明されていませんが

彼がイギリスから去ることになった際

作曲されたという経歴を持っています。

 

シファーチェや

曲の由来については

以下の記事に詳しいです。

 

 

《古楽の楽しみ》で流れた曲の中では

〈新しいグラウンド〉ホ短調 Z.T682 が

哀愁を帯びた名曲だと

個人的には思いますけど

〈シファーチェの別れ〉も

それに劣らず哀愁に溢れておりまして

ここらへんがパーセル鍵盤曲の

真骨頂といえるかもしれません。

 

 

ちなみに

1月29日放送分で

ヤコブ・リンドベルイによる

リュート演奏で流れた

〈新しいアイルランドの調べ(リリバレーロ)〉は

今回のレオンハルト盤でも

チェンバロで演奏されています。

 

本盤では「リリブレロ」と訳されている

「リリバレーロ」とはどういう意味か

ライナーの高橋解説には一言も

ふれられていません。

 

ラジオでは説明されたのかどうか

分かりませんけど

こちらもSNS時代の恩恵によって

簡単に調べることができました。

 

上にも引いた影踏丸さんの

以下の記事が分かりやすいです。

 

 

上の記事の中に

YouTube にアップされている

ペーテル=ヤン・ベルダーの演奏が

貼り付けてありますので

御用とお急ぎでない方は

聴いてみていただければ幸い。

 

短くてあっけない

ということが

実感できるかと思います。( ̄▽ ̄)

 

 

オランダのチェンバロ奏者

ペーテル=ヤン・ベルダーは

ブリリアント・レーベルに

大量の録音を残していて

古楽ファンにはお馴染みの存在です。

 

パーセルに関しても

自らが率いる

ムジカ・アンフィオンと共に

Complete Chamber Music

(室内楽全集)という

7枚組ボックスを出しております。

 

そちらのボックスも

昔、出た時に買いましたので

またいつか、機会があれば

ご紹介することにします。

 

今回も長くなりました。

ご海容いただければ幸いです。m(_ _)m