NHK FM《古楽の楽しみ》

今週1月13日から16日までは

「イングランドに響く音楽」と題する

昨年12月9日から12日までに

オンエアされたものの

再放送でした。

 

再放送だからなのか

第2週目の放送だからなのかは

分かりませんけど

すべて聴き逃し放送が

アップされたので

朝食時に聴いたりしてまして。

 

昨日、木曜日の第4回放送で

ようやくバロック時代となり

ヘンデルやパーセルの曲が

流れたんですけど、その際

ジョン・エリオット・ガーディナー指揮

モンテヴェルディ合唱団&管弦楽団

およびエクアーレ・ブラス・アンサンブルによる

ヘンリー・パーセル作曲

《メアリー女王の葬送のための音楽》を聴いて

あまりにも素晴らしい曲であったため

びっくりしてしまいました。

 

 

手元にはパーセルのディスクも

何枚かありますが

頌歌[オード]や劇伴音楽ばかり。

 

検索して調べてみると

ラジオでかかったガーディナー盤は

現在、廃盤ないし品切れ中。

 

ところが幸いにも

先日たまたま購入している

2in1のディスクに

葬送曲も入っておりました。

 

それがこちら。

 

《パーセル:祝典オード&アンセム集》

(東芝EMI TOCE-11280•81、1999.5.26)

 

原盤レーベルは英 Vergin で

2 for 1 シリーズ〈永遠のバロック〉の

第9巻になります。

 

演奏は

アンドルー・パロット指揮

タヴァナー・クワイア

タヴァナー・プレイヤーズ。

 

《聖セシーリアの祝日のためのオード:

 ようこそ、あらゆる楽しみよ》

《葬送式文によるアンセム》

《メアリ女王の誕生日のためのオード:

 来たれ、学芸の子ら》

《メアリ女王のための葬送音楽》を収めた

Disc1の録音は1988年8月。

 

《聖セシーリアの祝日のためのオード:

 栄えあれ! 輝くセシーリア》を収めた

Disc2の録音が1985年6月です。

 

 

こちら、なぜ買ったのか

ちょっと覚えていませんが

皆川達夫『ルネサンス・バロック名曲名盤100』

(音楽之友社、1992)の

パーセル《来れ、なんじら芸術の子よ》を

紹介しているページに言及されているので

それが頭の片隅にあったのかも。

 

皆川の同書では

パーセルは上記のオードと

オペラ《ダイドーとイーニアス》が

紹介されているだけなので

葬送音楽はまったく

視野に入っておりませんでした。

 

 

ところで

葬送音楽のガーディナー版の尺は

19分18秒なのに

パロット版の尺が

6分6秒しかありません。

 

検索して調べてみたところ

いろいろと複雑な背景が分かりまして。

 

例えば以下の

日下不二雄の文章によれば

 

 

葬送音楽には基本的に

ルネサンス時代の作曲家

トマス・モーリーの曲が

使われたそうですけど

逸失した箇所があり

そこをパーセルが加筆したらしい。

 

その加筆した部分が

《メアリ女王のための葬送音楽》

作品番号Z.860として知られている

マーチとカンツォーナ

そして合唱曲〈あなたはご存じです、主よ〉

の3曲ということらしいんですけど

最後の合唱曲には

3種類の版があるらしく。

 

第2版はパロット盤に

《葬送式文によるアンセム》の1曲

作品番号Z.58Bとして

収録されていました。

 

《葬送式文によるアンセム》

としてまとめられている3曲

〈女から生まれたものは〉Z.27

〈人生のただなかで〉Z.17A

〈あなたはご存じです、主よ〉Z.58Bは

10代の頃に作曲されたようですが

その3曲全部の尺が10分7秒。

 

というわけで

ガーディナー盤は

《葬送式文によるアンセム》と

《メアリ女王のための葬送音楽》を

足したものかと思われます。

 

Z.58BとZ.58Cがタブりますけど

Z.58Cを演奏するのが

一般的であるようです。

 

 

これ以上は

ガーディナー盤を

中古で見つけるまで

お預けかと思ってたんですが

YouTube にアップされている

実際の演奏を見つけたので

構成自体は分かりました。

 

 

記事作成の時点で

「動画を再生できません」と出ますので

アドレスでもアップしておきます。

 

 

1989年3月9日に

来日したガーディナーが

サントリーホールで

振っているものの

テレビ放送かと思われます。

 

〈わたしたちの秘密を知る主よ〉

と訳されているのが

〈あなたはご存じです、主よ〉ですね。

 

こういうのを観ると今度は

トマス・モーリーの曲と合わせて

当時の葬送の音楽を再現した録音

というものがあれば視聴したい

と思ったことでした。

 

 

パロット盤のライナーによれば

(執筆は「よしむらこう。」)

メアリ女王は音楽好きで

パーセルは誕生日のたびに

頌歌を作曲したそうです。

 

そういうふうに

良好な関係だったことが

想像されることもあって

葬送用の音楽には

女王への哀悼の意が

切々と感じられます。

 

今までパーセルの音楽は

あまり琴線に響かなかったんですが

この曲には素直に脱帽しました。

 

 

ちなみに本曲は

ダイアナ妃の葬儀の際にも

使用されたそうですが

そんなこととはつゆ知らず。

 

バロック時代の曲が

現代においても使用されて

国民に親しまれているあたり

すごいなあと素直に思いますね。

 

 

 

●修正(2025年1月21日、23:35ごろの)

 

「葬送式分」と書いていたのを

すべて「葬送式文」と

修正しておきました。

 

ライナー本文では

「葬送式文」となってるんですが

ジャケ裏のトラック・リストのみ

「葬送式分」と誤植しており

ブログ記事を書いている時

それに従って書いていたため

起きてしまった間違いです。

 

まあ、こうして

誤植指摘のネタになったので

よしとしましょうか。