(1941/鳴海四郎訳
ハヤカワ・ミステリ文庫、1986.4.30)
ちょっと
確認したいことがあって
読んでみました。
今回が再読ですが
鳴海四郎訳で読むのは
初めてだったりします。
確か本作品の映画版
《地中海殺人事件》(1982)
が公開された前後に
鳴海四郎の新訳版が
ハードカバー46判が出たと
記憶しています。
当時、ハードカバー本を
買う余裕がなく
文庫化された後も
実をいえば古本で見つけるまで
購入しなかったのでした。(^^;ゞ
購入したらしたで
そのまま積読だったものを
ようやく読み終えたわけですが
ちょっと訳文が肌に合わず
ハードカバーで出た時に読んでたら
これはどうよ、とか
思ってたかもしれません。
それとも若い頃だから
スルーしたかしらん。
一度、別の版で読んでますので
トリックは知っていましたが
犯人の設定を忘れていましたから
こう来たか!
と驚かされました。
詳しいことはいえず
もどかしいのですが
実際の犯罪をモデルにしているのでは
とか思えて仕方ないんですけど……。
エンディングは
あまりにも臆面がないもんですから
読んでるこちらが
照れ臭くなりましたね。
ちょっと驚かされたのは
ひとつの章の中に
ワンカットのような
短い節があったりして
意外とサクサク話が進むことでした。
訳文にひっかかりつつも
すいすい読み進められたので
びっくりでした。
第十一章・第二節で
ポアロが事件を検討する際
いろいろな要素を
羅列しているところがあって
そういう思わせぶり? な書き方などは
なんだか無理に
本格ミステリしているみたいな
印象を受けたりします。
好きな人は好きなんでしょうけど……。
今確認したら
第十一章・第二節は全て
現在形で文を終えていますね。
(少なくとも訳文はそう)
他のページは
確認してませんけど
そういうスタイルが
ある種のテンポなり
リズムなりを生んでいて
サクサク感にも与っている
という気がします。
とはいえ
あるいはそういう書き方が
初読時に悪い印象を
与えたのかもしれない
とか思ったりするのでした。
ちょっとひねくれてた
(ひねくれてる)かも。( ̄▽ ̄)
ちなみに
本作品のタイトルを
マザー・グースから採った
としている解説や感想が多く
自分はてっきり
旧約聖書由来か
と思っていたので
びっくり。
確かに訳者あとがきにも
マザー・グースから採った
と書いてありますけど
その後に続けて
マザー・グースのいいわましは
そもそも聖書に由来する
と書いてあるじゃないですか。
作品中でも
ポアロが会話で
「白昼にも悪魔はいるのです」
と言うのを聞いて
ホテル滞在客の一人である牧師が
《伝道の書》そっくりだ
という場面が出てきます。
マザー・グースから採られたにしても
クリスティー自身は旧約聖書の
《伝道の書》を意識していたのは
明らかだろうと思います。
《伝道の書》は
『死との約束』(1938)でも
引用されており
似たようなフレーズが出てくることを
以前確かめていたこともあって
本書も旧約聖書由来だと
思っていたんですが
実際に読んでみて確認できたので
それは嬉しかったですね。
まあ、それはそれとして
初めて読んだ時の本はこちら。
(堀田善衛訳、ハヤカワ・ミステリ
1955.7.15/1957.6.15. 再版)
こちらで初めて読んだ時の
正確な時期や感想は忘れましたが
あまり面白いとも思わなかったように
記憶しています。
再版本である上に
解説も何もついてなくて
残念に思ってたからなのかも。
今となっては
堀田善衛訳というのが
貴重かもしれませんね。
映画はテレビで
観たのではなかったかなあ。
満潮時に
ホテル客を運ぶための
シー・トラクターや
最後にポアロが
殴られるシーンだけ
いまだに印象に残っています。( ̄▽ ̄)
そうそう
映画の配役を見ていたら
ジェーン・バーキンが出ているので
びっくりでした。
昔は
セルジュ・ゲンスブールの
ミューズだなんて
知らなかったですけど
知ってしまった今、観直すと
また違った印象を受けるかも。
DVDで持ってるので
観直してみようかしらん。