先日

塾の会議に行くついでに

『望星』という雑誌を購入しました。

 

『望星』2024年7月号

(東海教育研究所、55巻7号、

 2024年7月1日発行)

 

特集が

〈「積読」を考える〉という

実にそそられるものだったからです。

 

夏葉社[なつはしゃ]という

一人出版社の社主

島田潤一郎特別編集によるもので

寄稿されている原稿の中では

頭木弘樹「『積ん読』は人生の非常食」

(表紙では「それは人生の非常食」)

というエッセイが、いちばん

琴線に触れました。

 

 

本は読みたい時に買えばいい

という人もあるけれど

買おうと思った時には絶版で

古本で買おうと思えば高騰して

元の値段より高くなっている

という経験を重ねた頭木氏は

次のように思うようになります。

 

 本というのは、なんでこんなにすぐに絶版になるんだ! 古本はどうしてこんなに高くなるんだ! というのが本を読み出したときの、私の大いなる不満だった。私は本と、そういう出合い方をしたのだ。(p.59)

 

そんな経験から

すぐ絶版になりそうな本は

2冊買うようにしたというのも

極端な話ですけど

「絶版と古書の高騰に対する恐怖」で

どんどん積ん読が増えていった

というのは、とても共感できますね。

 

そのようにして

増えていったことで

気づくに至った結論は

以下のとおり。

 

私は積ん読は大切だと思っている。体力で言えば余力にあたる。ぎりぎりの体力だけでは生きていくのに危険だ。余力が必要だ。あるいは、積ん読は非常食のようなものだと思う。不意に必要になり、そこから買おうとしても無理だったりする。積ん読があれば、しばらく保つのだ。(p.60)

 

非常食という喩えが

これまた共感できるわけでして。

 

ただしマイナス面もあり

持っているのを忘れて

また買ってしまうことと

持っているはずの本が

どこにあるか分からなくなる

ということが書かれていますけど

これにもひどく頷けたのでした。

 

 

ですがそれより何より

つい最近

買っておいて良かった〜

という経験をしたので

よりいっそう

共感できるのかも。

 

というのも必要があって

エドガー・アラン・ポオ

唯一の長編小説

『ナンタケット島出身の

アーサー・ゴードン・ピムの物語』

(以下『ピムの物語』と略記)を

読んだんですね。

 

自分が読んだテキストはこちら。

 

創元推理文庫『ポオ小説全集2』

(創元推理文庫、1974.6.28.

 1982.1.20. 第12刷)

 

読んだことのある方は

ご存知かと思いますが

この長編小説

とんでもない終わり方をします。

 

文庫の解説は

フランスの詩人ボードレールによる

ポオ論があてられていて

特に『ピムの冒険』の結末に

言及されているわけでもなく

解説されているわけでもありません。

 

読み終えて呆然としてしまい

世間ではどういう評価なんだと思って

検索してみたところ

『NHK 100分 de 名著』で

巽孝之が解説しているらしく。

 

ところがなんと

そのテキストを買ってあって

すぐ出てくるところにあったので

無事、結末についての解釈を

知ることができたのでした。

 

100分 de 名著/エドガー・アラン・ポー スペシャル

(NHK出版、2022年3月1日発行)

 

のみならず

NHKカルチャーラジオで

ポオを取り上げた際のテキストも

買っており

一緒に並べてあったという。

 

NHKカルチャーラジオ/エドガー・アラン・ポー

(NHK出版、2012年4月1日発行)

 

カルチャーラジオのテキストは

100 de 名著のテキストの

ほぼ10年前に出たものですが

『ピムの冒険』についていえば

ほとんど内容が変わっていない

という発見もあったり。( ̄▽ ̄)

 

いやあ、何はともあれ

買っておいて良かった。

 

 

ところで

創元推理文庫の

大西尹明訳を読んでいて

ピムは大学生ぐらいかと

思ってたんですけど

巽孝之はいずれのテキストでも

ピムを「少年」と書いています。

 

ええ、少年とは

とても思えないけどなあ

とか思いましたが

訳文が古いせいかも知れず

集英社文庫ヘリテージシリーズ

ポケットマスターピース収録の

新訳で読めば

少年だと思えるのかしらん。

 

これはちょっと

集英社文庫の方を

確認してみたくなりましたが

さすがにオビ付では

もう売ってないだろうなあ。

 

 

これも買っておけば良かった

というわけで

こうやって本は増える

という、まさに典型ですね。

 

お後がよろしいようで。( ̄▽ ̄)