ペルゴレージの
《スターバト・マーテル》は
ナポリの貴族による信仰団体
〈悲しみの聖母騎士団〉の依頼で
作られたものとされています。
ペルゴレージに依頼する以前に
〈悲しみの聖母騎士団〉によって
毎年春の聖金曜日に演奏されていたのが
アレッサンドロ・スカルラッティの
《スターバト・マーテル》だった
というのが、現在のところ
定説になっています。
ペルゴレージの同曲は
スカルラッティの曲と同じ編成なので
スカルラッティの曲を意識して
作られたものとも
考えられています。
ということを知ると
アレッサンドロ・スカルラッティの
《スターバト・マーテル》も
聴いてみたくなるのが
人情というものでしょう。
リナルド・アレッサンドリーニによる
ペルゴレージとスカルラッティの
両《スターバト・マーテル》を
カップリングにした録音盤があって
その再発廉価盤で
スカルラッティ版を
聴いたことがあります。
ソプラノはジェンマ・ベルタニョッリ
アルトはサラ・ミンガルトですが
今ひとつピンときませんでした。
それを聴いて以来
いい演奏はないものかと
気にはなっていたんですが
さほど熱心に
探しているわけでもなく。
で、先日
新宿での冬季講習の帰りに
ディスクユニオンに寄ったところ
見つけたのが今回の盤です。
(英 EMI Records/Virgin Classics
VC 5 45366 2、1999)
タワーレコード・オンラインには
本盤がアップされておらず
正確なリリース年月日は不詳。
演奏は
ソプラノがサンドリーヌ・ピオー
アルト・パートが
カウンターテナーの
ジェラール・レーヌ。
器楽演奏は
ジェラール・レーヌ率いる
イル・セミナリオ・ムジカーレ。
録音は
1998年10月26〜29日に
ヴェルサイユにある
聖ジュヌヴィエーヴ学校の
礼拝堂で行われました。
収録楽曲は
《サルヴェ・レジナ》
《スターバト・マーテル》
モテット《そは誰なるや》
の3曲。
独唱者の先唱と
2つのヴァイオリン、ヴィオラ
通奏低音による
《サルヴェ・レジナ》は
レーヌの独唱。
ソプラノ、アルト
2つのヴァイオリンと通奏低音による
《スターバト・マーテル》は
レーヌとピオーの歌唱。
ソプラノ、アルト、テノール
2つのヴァイオリンと通奏低音による
聖母の祝日のための3声のモテット
《そは誰なるや》は
レーヌとピオーの他に
ジャン=フランソワ・ノヴェッリが
テノールとして加わります。
《そは誰なるや》
Quae est ista は
旧約聖書の雅歌
第6章10節に由来し
聖母マリアへの
呼びかけと敬意を歌ったものです。
要するに3曲とも
聖母マリアに関する曲
というわけですね。
《スターバト・マーテル》は
レーヌとピオーの共演で
イル・セミナリオ・ムジカーレの
演奏となれば
期待できないわけがなく
実際、聴いてみると
期待にたがわないどころか
思った以上に
素晴らしい演奏でした。
通奏低音パートこそ
チェロ、コントラバス、
オルガンないしチェンバロ
テオルボの4人ですけど
それ以外の器楽演奏が
1パート1人という
小編成なのも好み。
スカルラッティ版
《スターバト・マーテル》の
名演奏として
おすすめです。
こういう盤に
たまたま出会えるから
中古店通いは
やめられません。
ちなみに
アレッサンドロ・スカルラッティは
スペイン王妃のために
500曲以上にも及ぶ
チェンバロ練習曲を作曲した
ドメニコ・スカルラッティの
父親です。
息子のドメニコも
《スターバト・マーテル》を
作曲してますけど
今のところ
これはおすすめ
というような演奏に
出会ってません。
いつか紹介できると
いいんですけどね。